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「隠蔽したと言われるのなら、そういうことなんだなと思うしかない」山形13歳女子中学生イジメ飛び降り事件 前中学校長を直撃

文春オンライン / 2021年10月1日 17時0分

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亡くなった石澤準奈さん

《山形中学女児イジメ飛び降り自殺》「死ね、キモい」学校が隠蔽した“陰湿イジメ手紙”と“アンケート調査” 遺書に書かれていた最後の言葉は… から続く

「3月までの調査では、何で(準奈さんが)亡くなってしまったのかわからなかった。そうなると学校はイジメ調査ではなく、幅広い基本調査、背景に関わる調査というのをしなければなりません。持ち物や本人の残した言葉を調べて、トータル的にどう見るかということに全力を注ぎましたが、結論としては『分からない』ということになってしまった。親御さんには『(準奈さんに)いろいろ蓄積していたことは分かりましたが、イジメが直接の原因だったのかはわからなかったです』と伝えました。私の行った調査(の結果は)はすべて教育委員会に上げています。加害者に関する噂で出たことについても、根拠があるかどうかについて調べ、(加害者とされる)本人にも面談をしましたが、その時は疑いでしたので『あなたがやったのか?』とまで問い詰めることはできませんでした」

 陰湿なイジメ被害を受け自殺した酒田市の中学1年生・石澤準奈(せつな)さん(13)が通っていた中学校の当時の校長は、約30分にわたって文春オンラインの取材に応じた――。(全3回の3回目/ #1 、 #2 を読む)

※本記事ではご両親の許可を得た上で、準奈さんの実名と写真を掲載しています。編集部も、準奈さんの死の真相解明の一助になることを願い、可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

◆◆◆

中1の石澤準奈さんが校舎4階から飛び降り自死

 今年2月12日、多くの生徒たちが登校中だった午前7時50分に中学校の校舎4階から飛び降りて亡くなった、山形県酒田市内に住む当時中学1年生の準奈さん。準奈さんは生前、「死ね、キモい」などと書かれた手紙を繰り返し下駄箱に入れられるといったイジメを受けていた。

 昨年11月に校内で行われた「いじめに関する保護者アンケート」で、遺族がイジメの有無に関して「あてはまる」に〇印をして提出していたにもかかわらず、学校側が6月に回収した「あてはまらない」に〇印をしていたアンケートを11月分として教育委員会に提出していた隠蔽疑惑が浮上している。これらの事実は、準奈さんが亡くなった後に遺族の指摘で発覚したものだ。学校側は遺族に謝罪したというが、なぜこのような対応の不備が起きたのか。

 今も深い悲しみの中にいる準奈さんの両親。無念さを滲ませる父親が語った。

加害者生徒の調査はわずか1カ月で打ち切られていた

「2、3月は学校がイジメをした加害者生徒の調査に動いてくれていると信じていました。毎晩のように前校長が自宅を訪ねてくれて、進捗状況を報告してくれていました。3月9日以降も、前校長や教頭が家に来て、私たちの話を聞いてメモを取り、『もう少しまとめて報告書をあげる』と話していました。一方で、『下駄箱に「死ね、キモい」と書かれた手紙を入れた犯人は分かりましたか?』と聞いても、先生たちは無言で考え込むだけでした。

 驚いたのは、教育委員会に学校側が上げた報告書を9月6日に確認したところ、報告書は3月9日付で上がっていたことです。つまり調査は準奈が亡くなってからわずか1カ月で打ち切られていたのです。寄り添っていただいていると感じていたのに、前校長や教頭には裏切られた気持ちです。下駄箱に置かれた手紙についても、その時点で保護者に伝えなければいけなかったと思います。もし聞いていたら、心配になって学校に犯人を捜してほしいと抗議したり、加害者がわかったら保護者同士で話し合いもできたじゃないですか。あの子を助けられたと思います」

 では、なぜ学校側はイジメ行為が発覚した時点で保護者に伝えなかったのか。9月24日、準奈さんが在籍していた当時の中学校の校長に話を聞いた。

「周りを育てないと」という話に落ち着き、両親に報告はせず

――準奈さんの下駄箱に「死ね、キモい」と書かれた手紙が何度も置かれていたイジメ行為について、なぜすぐに両親に報告しなかったのでしょうか。

「準奈さんからは1カ月遅れて教育相談で報告がありました。『もう1回あったら先生に報告しようと思っていた』と。担任は(準奈さんに)『何かあった時はすぐ報告してほしい』というやり取りをしたようです。その後、私に報告があったのは時間が経ってからでした。その時は、犯人探しもそうですが、『他人を思いやる心を育てる』こと、『周りを育てないとだめだ』という話になった。その時点でご両親に報告していなかったのは事実です」

――イジメのことを保護者に伝えていたら、その後の対応が変わったのではないでしょうか。

「そう言われても仕方ないと思っています。『3、4回そういう事があったけれど、その後はなかった』と教育相談で聞いて、(学級委員をやっていた準奈さんが)リーダーをやっていることが妬みになった、突発性的なものだと思ってしまった。(学級委員が)指示したりすると『いい子ぶってる』と言われることはよくあるので、(イジメが)継続的ではなくて、(その後は)なくなったと聞いて安心してしまったと思います」

「隠蔽した」と言う人たちには何を言っても無駄だと思う

――学級委員だった準奈さんは、席替えの方法を巡ってクラスメイトに詰め寄られ、悩んでいたと聞いています。

「(準奈さんが)11月に学級委員に立候補して、いろいろな司会進行をしていますが、そこでやっつけられたという印象は、担任からの報告では感じなかった。上手くいろいろな意見をまとめて、進めていたと認識していて、重要視していませんでした。『ああ、がんばっていたんだ』と。今後の調査でそのことが原因だとわかったら、前の調査が甘かったと言われても仕方ないと思っています」

――助監督を務めた合唱祭でも準奈さんは一部の生徒から「調子に乗っている」と言われていたという証言がありますが。

「教育相談の内容は共有されているので最低限のことは知っています」

――準奈さんはバレーボール部でも顧問の先生とのことで悩んでいたそうですが、今回の事件と関係はあると思いますか。

「彼女はなんでも言う子だったので、練習についてもズバッと(交換ノートに)書いているんです。彼女はバレーボールで優秀だったので、もっと強くなりたいと。人間関係も先輩たちが良くやってくれていたので、そういう願いはあったと思います。それも記録に残っているし、記録に残っていないことは(教育委員会に)話していないつもりです。親御さんには『これがあった。あれがあった』と説明していますが、準奈さんが顧問に対してどれだけの恨みをもっていたかといえばわからない。憎しみを込めた記述は残っていなかったです」

――下駄箱の手紙の件をすぐにイジメとして保護者に報告しなかった。学校側は隠蔽していたのでしょうか?

「隠蔽というのは意図して出さなかったという意味があると思いますが、そういった人たちには何を言っても無駄だと思う。私が『それは出すな』とか『隠しておけ』とか言う訳がないです。それは先生方も分かっている。担任も何であの時に『(両親に手紙のことを)言わなかったのかな』と考えていると思いますが、それを学校が隠蔽したと言われるのなら、そういうことなんだなと思うしかないです。説明しろと言われれば、丁寧に説明します」

「いじめに関する保護者アンケート」の取り違えはなぜ起きたのか

――なぜ「いじめに関する保護者アンケート」の取り違えがおきたのでしょうか。

「最終的には私が判子を押したので私の責任です。調査は膨大な量の資料を基にしていて、実は私も当該アンケートを見ている。記名はなかったですが、子どもの名前があるものが出てきたので(準奈さんのものだと)分かりました。間違いのもとは、アンケートの実施日が書いていなかったことだと思います」

――担任がアンケートを整理している中での取り違えでしょうか。

「担任はアンケートを揃えて提出しているので、その後に私たちが整理する中で取り違えが起きている。コピーする中で同じものが紛れてしまったりしたのではないか」

――取り違えにはいつ気づいたのですか。

「最近です」

――準奈さんが亡くなった後、どのような調査を行ったのでしょうか。

「(生徒たちには)心のためのアンケート、ケアのアンケートをしている。準奈さん(の事件)に対して自分を責めてしまっていないか、準奈さんに伝えなければならないことはないかを聞きました。(生徒に)書かせるのは酷な状況だったので、教育相談なり、臨時の相談なりで聞き取りながら調査をした。報告を受けただけで、全員分は目を通していないです。(生徒からは)『もっと苦しさに気づいてあげればよかった』などで、加害者に関するものはなかったと記憶しています」

もう少し深く見ていればよかった

――準奈さんがLINEなどでイジメを受けていた可能性はありますか。

「LINEにしても、準奈さんのLINEグループについては周りの子どもたちの聞き取りをベースにしながら、グループに誰がいて、どういった内容が交わされていたかというところまでを調査しました。それ以外のところで個人でやられていたら分からない」

――先生たちの調査ではLINEでのイジメはなかったということでしょうか。

「幾つかのグループの内容は見せてもらったけども、その中に悪口が交わされているものは見つけられなかった」

――調査は何人かで行ったのでしょうか。

「基本的には文部省のガイドラインに沿って、まずは『基本調査(背景に関する調査)』があって、そのあとに第三者委員会による『詳細調査』があります。基本調査は学校がやることになっています。教育委員会から応援がきたり、中立の立場の人間が応援に来て、作業をした。担任たちはクラスがあるので加わっていません。(報告書は)公印をしている文書なので、私の責任です」

――保護者説明会に出席する予定はありましたか。

「(私は)行きますと言ったが、教育委員会や学校が必要ないと判断したんだと思います」

――改めて今、思うことはありますか。

「当時は背景が全く分からなかったので、広く調査するしかなかった。もう少し深く見ていればよかったなと思います。担任にも聞き取りはしましたが、『本当にそうだったのか』と、繰り返し聞くことは必要だったと思います」

加害者生徒も育てていくのが私たち

――「死ね、キモい」と書かれた手紙の報告の遅れや「いじめに関する保護者アンケート」の取り違えがなければ、準奈さんの命は救えたと思いますか。

「アンケートの取り違えについては、その後の調査の内容が大きく変わったかどうか、それはなんとも言えません。ただ、11月の段階で(イジメの)メモのことが保護者に伝わっていたら、保護者の意向が入ってくるのでそれは違っていたと思います。(準奈さん)本人とのやり取りの中で我々が安心してしまっていた。(イジメが)断片的であってもその後に続いていた可能性もあるので、それが再調査で問題になっているのだと考えています」

――「死ね、キモい」と書いた手紙を準奈さんの下駄箱に入れた加害者生徒は今も学校にいますが、その生徒に対してどう思いますか。

「その子たちも育てていくのは私たちなので。入学してからはすべて私たちの生徒です。『育てきれずにああいう事になってしまった』という部分への思いが大きい。私たちが良いことと悪いことを学校生活の中で教え切れていなかったという悔いが大きい。命の重さの話が出てしまうかもしれないが、私たちは(加害者も被害者も)どちらも教えなければいけない、支えなければいけない、という使命を持っている。

 イジメた子を庇うつもりはないが、学校側が教え切れていないということです。心の育成とかを急務に、朝の会とか帰りの会とか、道徳の時間を使って『人を思いやるとはどういうことか』ということを担任が語ってくれていたと思いますが、その時点ではそういう話しかできなかったというのも事実です」

加害生徒からの謝罪や反省もないまま7カ月

――イジメをしたのではないかと名前があがった生徒は聞き取り調査でそのことを認めていますか。

「認めていません」

――加害生徒からの謝罪や反省もないまま7カ月が過ぎました。改めて思うことはありますか。

「(生徒たちを)育てきれていない自分たちは、学校に残っている人たちもそうですけども、責任を感じていかなければならない。本当に取り返しのつかないことをしてしまったし、(準奈さんを)学校で死なせてしまったことは自分の責任です。申し訳ないという気持ちです。すべてを受け入れたいと思う」

 前校長からは謝罪や反省の言葉が繰り返された。どんな言葉を口にしても、もう準奈さんが戻ってくることはない。

父が語った「娘を愛した13年間」

「この家は部屋でたくさん遊ばせてあげたいと、せっちゃんが生まれたのをきっかけに買った家です。でも、もう本人はいません。仕事から帰ってくると、辛くて仕方がありません。娘を愛した13年間は本当に幸せしかありませんでした。今は悔しさしかありません……」

 そう父親は泣きながら肩を落とした。部屋にあった準奈さんのバレーボールが寂しく見えた。

 10月1日(金)22時からの 「文春オンラインTV」 では本件について担当記者が詳しく解説する。

◆◆◆

「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「 文春くん公式 」ツイッターのDMまで情報をお寄せ下さい。

 sbdigital@bunshun.co.jp
  https://twitter.com/bunshunho2386

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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