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加害父が8年前に頼った“元ヤクザ牧師”「彼女へのDV、金銭トラブル…アイツは子供の愛し方を知らなかった」《九州3児遺体》

文春オンライン / 2021年10月2日 11時0分

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田中被告(「FNNプライムオンライン」5月6日配信より)

《九州3児遺体》子供たちを死に至らしめた加害父の“無責任で幼稚な愛”「子供の笑顔は何にも代えられない」「子供たちを最後まで見たかった」 から続く

 2021年2月に、養子の大翔くん(ひろと・当時9)を暴行の末に死に至らしめ、その10日後に心中するために実子である蓮翔ちゃん(れんと・当時3)と姫奈ちゃん(ひな・当時2)を絞殺した田中涼二被告(42)。文春オンライン取材班は、福岡拘置所で面会を重ね、6回にわたり田中被告の肉声を伝えてきた。

 田中被告が語った人生は壮絶だった。

かつて指定暴力団に所属していた“元ヤクザ”

 約20年前に結婚していたのは、「主婦ホスト漬け暴行致死事件」の“太宰府の女帝”山本美幸被告=懲役22年の有罪判決、控訴中=。当時、山本被告とともに、彼女の元交際相手とその友人に残虐な暴行をし、200万円を脅し取っている。両親は19歳頃に自殺。同じ頃に「ヤクザだった」という山本被告の父親に誘われて同じ組に入り、覚醒剤を自ら使用するなどして複数回逮捕されたこともある。また山本被告を含め、これまでに計4回結婚し、7人の子供をもうけた。

 しかし約8年前、田中被告は激しい日々に嫌気がさし、ヤクザの道から逃げ出した。

「対立組織との抗争が激しくて、自分が帰宅すると手榴弾が投げ込まれたんです。シノギもきつくて稼げないし、このままじゃいつか死んでしまうと思いました。それで東京に飛んだんです」

 知人のつてを辿り、行きついたのが埼玉県川口市の教会だった。そこで田中被告を迎えたのが牧師の進藤龍也さん(50)。進藤牧師はかつて指定暴力団に所属していた“元ヤクザ”だ。

「罪人の友 主イエス・キリスト教会」を開拓

 進藤さんはこれまで複数回にわたって覚醒剤を使用するなどし、前科7犯で3回の服役を経験してきた。しかし刑務所で聖書に出会い、洗礼を受けて川口市の母親が経営するスナックで「『罪人の友』主イエス・キリスト教会」を開拓。現在は元ヤクザや薬物中毒の人間を受け入れ、更生を支援しているのだという。

 自身の体験をベースにした講演が人気で複数の著作もあり、全国各地の刑務所では“更生した人間”としてインタビューがラジオ放送されている。進藤牧師は「日本中の受刑者に知られているんですよ」と笑う。

 これまで多くの元受刑者を受け入れてきた進藤牧師だが、なかでも田中被告は印象的だったようだ。記者が電話で田中被告について聞くと、すぐに思い出したようだった。しかし「九州3児遺体事件」は知らず、その後に事件の詳細を知って絶句した。その後、こんなメールが送られてきた。

《彼は自分を受け入れられず、死にたいと思い続けているけど死ねない、そんなやつなんです。人を巻き込むことはあってはならないと思いますが、彼に必要なのは人間らしい心を取り戻すこと、そして悔い改めること。妻と泣きながら祈りました》

田中被告は「8年前とまったく変わった。あの頃は…」

 進藤牧師の紹介で、田中被告と同時期に教会で過ごした知人男性にも電話で話を聞くことができた。男性は事件を受けて福岡拘置所へ田中被告に会いに行ったという。その時の様子についてこう述懐している。

「(田中被告と会うのは)8年ぶりでしたが、印象がまったく変わっていた。当時は、気弱な印象は全くなかったのですが、まさに気弱というか……。『子供が毎日夢に出てきて、寝られない』と話していました」

 進藤牧師らが見た8年前の田中被告は、いったいどういう人物だったのだろうか。進藤牧師に詳しく話を聞くため、川口にある教会を訪ねた。スナックから移転した現在の教会は一般的な教会のイメージとは大きくかけ離れている。広々とした空間には、天井から吊るされた大型のスピーカーに、中型バイク、卓球台……。おしゃれな喫茶店のような雰囲気だ。

 進藤牧師は強面だが、非常に柔らかい語り口調でフランクな様子で、「地域のおじいちゃんおばあちゃんが気軽に入れるような雰囲気にしたかったんですよ」と迎え入れてくれた。

 しかし半袖シャツから出た両腕には入れ墨が入り、左手の小指の第一関節より先がない。彼の波乱万丈な人生を物語るには十分だろう。

 進藤牧師は、田中被告について「ヤクザが抜けきっていなくて、かなり尖っていましたよ」と当時を振り返った。

「涼二は舐められちゃいけん、という感じだった」

「8年前、涼二は先に組を抜けていた、いわゆる“まわり兄弟(※兄弟分の兄弟分)”のつてで私の下に来ました。周囲には同じように更生しようという元ヤクザが多くいましたからね。舐められちゃいけん、という感じでした。ここにいたのは1年もないくらいですが、よく覚えています。1年の間にいろいろなことがありましたから」

 進藤牧師によると、8年前、西川口に来た田中被告は、周囲の協力を得て解体工で仕事を始めた。

「最初の3カ月はよくやっていました。教会で寝泊まりしながら、徐々に社会復帰していく人間も多いですが、彼は彼女がいたこともあり、すぐに自分でアパートを借りていました。元ヤクザの人間を特集した福岡のテレビ局の取材にも涼二は顔を隠して出ていましたよ」

 当時のインタビュー映像を見ると、田中被告は「正直、今の法律はむちゃくちゃだ。まじめに立ち直ろうとしている人間を後押ししているようなことを言っているが、実際そういうサポートは一切ない」と話している。

「なんとかして立ち直ろうと頑張っているように見えました。仕事にもしっかり出ていました。ただ、更生はそう簡単にはできない。『暴力』と『金』の問題は、私の下にいる間、ずっとついてまわりました」

交際相手への激しいDV「羽交い絞めにして…」

 教会にいた別の関係者に話を聞いたところ、「涼二はよく喧嘩をしていました。同じように教会に来ているヤクザを辞めたての人間と揉めてしまうんです」と語った。しかし暴力の矛先になっていたのは、ともに更生を目指す人たちだけではない。交際相手へのDVも激しかったようだ。進藤牧師が語る。

「当時付き合っていた彼女にも、すぐ暴力をふるおうとするんですよね。少しでも気に入らないことがあると、私の目の前でも『なんだこの野郎!』みたいに殴りかかる素振りをすることがありました。素振りだけではすまなくて、私達が彼を羽交い締めにして押さえたこともありました」

 

 しかし、進藤さんはそんな田中被告に対し、粘り強く交流を深め、更生への道を示し続けた。

「私は野球をやっていて、涼二も幼い頃からやっていた。それで一緒にバッティングセンターに行こうとなったのですが、あいつはよく打っていた。私は全然だめだったから、よく打てるなと感心しましたよ。銭湯に連れて行って今後について、話し合ったこともありました」

ギャンブルに無駄遣い…「先生、金を貸してくれ」

 しかし田中被告が川口での生活を始めて3カ月が経った頃から、徐々に教会から足が遠のいていったのだという。

「彼女が同棲していたアパートから出ていってしまったんです。DVで命の危険を感じたのでしょう。その頃くらいから仕事にも出なくなり、涼二とも音信不通になってしまいました。教会へ来ても、更生できるやつとできないやつがいる。再び犯罪に手を染めてしまう人間も少なくない。涼二がまた悪いことをしていないか、心配していました」

 その約2カ月後、進藤牧師の心配をよそに田中被告は何事もなかったかのように急に教会へ戻ってきた。

「涼二は私のことを『先生』と呼ぶんですが、あるときに急に現れて『先生、彼女の実家のある大阪に行きたいんで金を貸してくれ』と。7万円を貸しましたが、返ってくるとは思いませんでした。涼二は競輪や競馬が好きで、面倒を見てくれていた社長からまとまった額の金を借りたままでしたしね」

8年間で変わった「金」と変わらなかった「暴力」

 それからまたもや連絡が途絶えた。そして約半年後、田中被告はまた「先生、金貸してくれ」と急に現れたという。

「さすがに前の金を少しも返さないでそれはないだろう、と今回は貸しませんでした。でも飯も食えていないようだったので中華料理屋に連れていきました。そこで500円玉を渡して、役場に行って生活保護の手続きしてこい、と。涼二と会ったのはそれが最後。それから二度と私の前には現れていません」

 その後、田中被告は福岡に戻り、大翔くんの母親であるA子さんと出会って家庭を持ち、蓮翔ちゃん、姫奈ちゃんが生まれることになる。田中被告が住んでいた県営住宅の複数の近隣住民は事件の前に「数万円貸したが、生活保護が入るとすぐに返してくれた」「5千円貸したがすぐに返された」などと話している。8年前から変わった部分も確かにあったようだ。

 しかし拘置所でのインタビューで「昔からキレてしまう性格ではあった」と語っていたように、「暴力」から更生することはできなかった。2021年2月、大翔くんに惨たらしい暴行を加えて死に至らしめ、蓮翔ちゃん、姫奈ちゃんを殺害した。

「涼二は子供の愛し方を知らなかった」

 進藤牧師はこう語る。

「確かに彼は嘘もつきますし見栄も張る。でも『キリスト教はいい』と断りました。それは当時もある意味、彼は正直な部分も持ち合わせていたということなんです。涼二は子供のことを本当に愛していたんだと思います。

 ただ、彼自身が幼少期に親からの愛情を知らないままに育ち、愛し方を知らなかった。涼二は子供を愛したい気持ちがあっても、どうすればいいかわからなかったのではないでしょうか。

 暴行で亡くなった養子の大翔くんは実の母親であるA子さんではなく、涼二を選んだんですよね。子供は涼二と一緒に生きたかったんでしょう。そんな養子を死なせてしまうのは涼二のエゴです。子供たちのために一生償って、すべきことをしてほしい。キリスト教の考え方では罪を犯しても命の価値は変わりません。これから彼がどうなるか分かりませんが、塀の中でしっかりと罪と向き合い、悔い改めてほしいです」

 自らも服役経験のある進藤牧師は刑務所の中で「どう生きるかが重要だ」と話した。近く、田中被告の面会に行くという。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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