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歌詞、振り付けを自ら考えさせる…オーディション番組『ガルプラ』に見る、K-POPアイドルが「大量生産型」を脱せたワケ

文春オンライン / 2021年10月1日 17時0分

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Mnet 公式YouTubeより

博多華丸の次女も脱落…日中韓オーディション番組『ガルプラ』に見る、次世代アイドル争いの「激しさ」 から続く

 日韓中から33人ずつ99人を集めて始まった、K-POPオーディション番組『Girls Planet 999』(以下『ガルプラ』/ABEMA・金曜20時20分)。9人組ガールズグループを生むためのオーディションは、エピソード3~4の最初のミッションを経て45人の脱落が発表された。

 その過程では、日韓中の参加者たちの異文化コミュニケーションが目立った。その様子を大まかにまとめれば、はっきりと自己主張をする中国勢に対し、大人しくて積極性の乏しい日本勢、そしてその両者を気遣う韓国勢というものだ(「 消極的すぎる日本勢、自己主張する中国勢…日中韓オーディション番組『ガルプラ』に見る日本人アイドルの『壁』 」2021年9月10日 )。

 そしてエピソード6~7では、54人から半分の27人(日韓中9人ずつ)まで減ることとなる新たなミッションが行われた。

アレンジやリリック、振り付けが任せられる

 ここから始まるのは、11グループで行われる「コンビネーションミッション」だ。ダンス、ヴォーカル、ラップの各ポジションに特化した既存曲で競い合う。ただし、各グループの人数は異なる。3人グループは6組、6人グループは3組、9人グループは2組の編成で、これまで同様、全チームで日韓中の人数は均等だ。そして各グループごとの勝利チームは、視聴者投票に得点が上乗せされる「ベネフィット」を獲得できる。

 課題曲は、前回順位の上位の参加者から選択していく。それぞれ自分の特長をアピールできる曲を選ぶが、定員に達したグループは締め切られるので、順位が低い参加者は不本意な選択をしなければならなくなる。

 また、各課題曲のアレンジは参加者に委ねられる。ヴォーカルポジションであれば、曲のキーや生バンドにおけるアレンジを決めなければならない。ラップポジションでは参加者自身がリリックを書き、ダンスポジションでは振り付けやフォーメーションを考えなければならない。

 つまり、単に既存曲をコピーするのではなく、能動的にパフォーマンスを創っていく能力も評価対象となる。そこで目指されているのは、プロダクション主導の“ファクトリー(大量生産型)アイドル”ではなく、パフォーマーたちの能動性・自律性を重視するK-POPの“ガールズグループ”だからだ。  

 コンビネーションミッションにおいて勝利したのは、そうした主体性を発揮した3チームだ。

「傷ついた少女の復讐物語」を率いた日本人メンバー

 まず3人グループにおいて圧倒的な力を見せつけたのは、ヴォーカルポジションのITZY「Mafia In the morning」チームだった。ここでリーダーとキリングパートを務めたのは、JYPエンターテインメントの元練習生で、ITZYのメンバー候補でもあった坂本舞白だ。NiziUのリーダー・マコからも慕われていたという彼女は、自分に訪れるかもしれなかった未来の楽曲をあえて選んだ。

 そのコンセプトは、「悪い男に出会って傷ついた3人の少女の復讐物語」。もともとのガールクラッシュをさらに強めたその内容は、3人の挑発的な表情の調整も含め完璧に近いものだった。この成果を導いたのは、やはりリーダーを務めた坂本によるところが大きい。


 6人グループで勝者となったのは、イ・ソニ「縁(Fate)」をパフォーマンスしたダンスポジションのチームだ。

 この曲は、2005年に公開の李氏朝鮮時代を描いた大ヒット映画『王の男』のテーマソングだ。まだK-POPという言葉がなかった時代に、朝鮮の伝統楽器を取り入れたひとむかし前の歌謡曲だ。そうした“古臭い曲”だからこそ、能力の高い参加者たちがどう解釈するかが見どころだった。

 6人はアイディアを出し合い、原曲のテーマ「縁(Fate)」を自分たちの関係に置き換えて表現した。コンセプトは「約束して、この瞬間が終わってもまた会える日」。

 指切りをしたり、手をつないで離れたり、あるいは手を伸ばしてお互いを求めたり──それは全員がデビューすることはないだろう未来を踏まえての表現だ。バレエシューズを履き、ほぼモダンバレエと言えるその振り付けは、リーダーを務めた四川音楽大学出身のシェン・シャオティンによるものだと思われる。

 審査するK-POPマスターのソンミは「圧巻のステージ。シーンが変わっていく様子は映画のようだった」と絶賛した。舞台演劇のようなそのパフォーマンスは、その解釈も含め非の打ちどころがないレベルだった。

最年長・中国人メンバーの「焦り」が引き起こした対立

 9人グループで勝利したのは、イギリスのガールズグループであるリトル・ミックスの「Salute」のチームだ。2013年に発表された原曲は、戦う女性たちを描いた強めの内容だ。9人のパフォーマンスは、フォーメーションや振り付けも含め、本家を上回る出来だった。


 しかし、このグループはチームワークにおいて大きな失敗をした。リーダーとキリングパートをともに務めたのは参加者の最年長であるツァイ・ビーンだったが、番組では彼女の不安定さが描かれた。

 とくに練習時における強硬な姿勢は、他メンバーの反感を買った。事前に合意していたフォーメーションを独断で変更し、それに意見をされると「私がリーダー。言うとおりにして。意見をしないで」と主張して場を凍らせた。『ガルプラ』では、当初から中国勢のはっきりとした姿勢が見られたが、それがもっとも良くないかたちで現れたシーンだった。

 もちろん、より良いパフォーマンスを求めるうえではこうした意見の相違は必須だ。そこで重要なのは、議論したうえで解決してより良いパフォーマンスを導くことにある。「Salute」チームは、番組内では対立が回収されないまま本番に至った。結果は最高のものとなったが、このチームはもともと順位が低い参加者が多いこともあり、ツァイ・ビーン以外の8人全員がここで脱落した。

大幅に順位を上げた、日本勢の「ダークホース」

 このコンビネーションミッションを終えて、エピソード8では次の段階に進む27人が発表された(後に中国勢ひとりが辞退)。今回も当落は日韓中が同じ割合だ。上位勢に大きな変化はなかったが、幾人か当落線上の参加者の躍進が目についた。

 なかでも大幅に順位を上げたのは、ラップ曲であるウ・ウォンジェ「We Are」をパフォーマンスした3人だ。メンバーのキム・ボラ(Cherry Bullet)とウェン・ヂャはそれぞれ5つ順位を上げ、永井愛実もふたつ上げて全員が生き残った。ベネフィット獲得はならなかったものの、視聴者からの評価はとても高かったことになる。

 この3人は、前回の順位は低く全員ギリギリで通過した。そのため、キム・ボラと永井は希望していたヴォーカル曲を選択できず、消去法でラップ曲を選んだ。だが、それによって、逆に3人の新たな才能を発揮させた。

 なかでも光ったのは、永井のリズム感の良さだ。彼女は韓国語があまりわからない中リリックを書かなければならなかったが、それにもかかわらず、審査するK-POPマスターからは高く評価された。なかでも原曲のラッパーでもあるウ・ウォンジェは、「本当にこれからもラップを続けてほしいです」と繰り返し絶賛した。


 福岡出身で19歳の永井は、今回の日本勢ではダークホース的な存在だ。詳しい経歴はあまり確認されておらず、わかっているのは福岡で和太鼓チームのメンバーだったことくらいだ。和太鼓で培ったリズム感とラップが上手く組み合わさったことで、その潜在能力が大きく開花したのかもしれない。

K-POPの脱“ファクトリーアイドル”の傾向

 永井愛実のこうした急成長は、現在のK-POP状況を象徴するものとも捉えられる。

 2010年代以降、K-POPがその源流のひとつである日本のアイドル文化から距離をおき始めたのは、音楽と実直に向き合う姿勢を強めたからだ。

 単なる“ファクトリーアイドル”ではなく、そこではパフォーマーたちの能動性・自律性がより重視されるようになった。『PRODUCE 48』から生まれたIZ*ONEでも、宮脇咲良が作詞・作曲をするなどメンバーの制作参加がしばしば見られたが、それにはこの背景があるからだ。

 こうした状況をリードしてきた存在は、やはりBTSだ。代表曲のひとつである「IDOL」(2018年)では、冒頭で「アーティストと呼ばれても、アイドルと呼ばれても、俺は気にしない。俺は自由だ」と歌う。リーダーのRMが作詞・作曲に携わったその歌詞は、2018年段階におけるBTSの所信表明だった。

 『ガルプラ』が向かうのもこの地平だ。そこで目指されているのは「アイドル」概念を拡張した「音楽をちゃんとやるアイドル」とも言えるし、逆に従来の「アイドル」からの離脱とも言える。

 なんにせよ、呼び方がなにであろうとも音楽とちゃんと向き合う。『ガルプラ』は、そのためのトレーニングをオーディションの過程に組み込んでいる。それは、音楽的なアップデートが見られず凡常化した日本のアイドル文化とは、もはや比較が難しいほどの差異となりつつある──。

大きな順位変動が起こる可能性

 次回のミッションでは、26人(中国勢がひとり辞退)から18人にまで絞られる。次は4つのオリジナル曲をパフォーマンスするクリエーションミッションだ。

 今回発表された順位の票数(生存24人のみ)を偏差値で表すと、以下のようなグラフとなる。当落は韓国票50%、グローバル票50%に換算されて決められる。

 中国勢はシェン・シャオティンの独走状態、日本勢は上位3人に票が集中、そして韓国勢は大混戦だ。なかには、スー・ルイチーのように過去の言動によって韓国とグローバルで人気が極端に異なる参加者もいる。  

 次からは投票方式も変わる。これまで日韓中3人ずつ9人に票を入れる形式だったのが、各1人ずつ3人に票を入れる形式に変わる。よって、次回は大きな順位変動が生じる可能性が高い。だれがデビューメンバーになるかはまだまだわからない。

(松谷 創一郎)

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