1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

飲んだら“触ってしまう”男、ゴム長靴ばかり271足盗んだ男…再犯が止まらない被告人たちの「ヤバい裁判」

文春オンライン / 2021年10月8日 17時0分

写真

©iStock.com

 裁判の傍聴を続けていると、前科を重ねている被告人が同じ様な犯行を繰り返している人物である事が多いなぁと気付きます。例えば前科5犯で、それらが詐欺と器物損壊と強制わいせつと現住建造物等放火と不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反……とバラエティーに富んでいる人は少ないのです。その犯行自体がクセになってしまっているのか、バレずに上手くいった成功体験があるからなのか、同じ罪名で逮捕されているケースが非常に多いのが現実。

 という訳で、やめる事が出来ず何度も何度も同じ犯罪を繰り返してしまった被告人の実例を4つ紹介します。

新幹線専門のスリ 盗んだバッグの中には…

〈 公判 2008年6月12日

 罪名 窃盗

 被告人 無職の男性(61)〉

 起訴されたのは、2008年4月に被告人がJR東京駅に停車中の新幹線車両内で被害者のビジネスバッグを盗んだ件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は1967年に服役したのが最初で刑務所の入出所を繰り返して前科は12犯。知人が盗みで一気に儲けていると知り働いているのがバカらしく思えて盗みをやるようになったそうです。

 被告人がやっていたのは俗に言うブランコスリ。壁や椅子に掛けた上着から財布などを盗む手口です。被告人は新幹線専門らしくて、入場券で新幹線のグリーン車に入ると壁に掛けてあるスーツから財布を盗ったり、棚からバッグを盗むことを繰り返していたとのこと。

 そして被告人質問。

弁護人「去年の12月に出所して、今年の2月にまた同じ手口で盗みを再開してしまったと。本件以外に何回やりましたか?」

被告人「2件です」 

弁護人「2月にバッグを盗んだという話でしたね。中に何が入ってました?」

被告人「宗教関係の本と聖書が入ってました」

弁護人「それ見てどう思いました?」

被告人「バチが当たるんじゃないか……って思ってたら、やっぱ逮捕されましたね」

 聖書を盗んだのが何かの運命と思って盗みをやめていれば……。長年仕事のように続けていたからやめる気はなかったんだろうけど。

「今後お酒は…」飲んだら痴漢になる男

〈 公判 2013年8月28日

 罪名 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反

 被告人 公共機関勤務の男性(46)〉

 起訴されたのは、2013年6月に被告人がJRの電車内で被害女性の股間付近を服の上から触った件。

 検察官の冒頭陳述によると、前科は2犯で全て帰宅ラッシュ時の電車内での痴漢行為です。

 そして被告人質問。

検察官「新宿で飲酒した後の電車に乗ったと。前回も前々回も飲酒しての犯行ですけど、酔ったら触ってしまうかもとは思わなかった?」

被告人「可能性はあったとは思います」

検察官「今後お酒はどうしますか?」

被告人「外ではもう完全に飲まないとは言い切れないですけど、たしなむ程度にします」

 こういう人には飲まないと言い切って欲しいんですけどね。

「2人を次々に触ったの?」「いや、同時です」

 続けて裁判官からの質問。

裁判官「真後ろから触る事件が多いんだけど、あなたは真正面から触ってるでしょ。絶対に言い逃れ出来ないよね。これはなんで?」

被告人「何も考えてなかったです」

裁判官「前回の起訴状を見ると、2人の女性を触ってると。酔ってたって事だけど、これって次々と触ったの?」

被告人「いや、同時です」

 お酒を飲んで電車に乗ることとチカンというのが頭で繋がっちゃっているんでしょうね。真っ正面から触ったり、2人同時に触ったりというのは結構珍しいケースなので酒癖の1つと言えそう。酒をたしなむ程度と言う以上に、飲んだら乗らないことの方が重要かも知れませんね。

「働いた人の臭いを嗅ぎたくて」ゴム長靴ばかり271足盗んだ男

〈 公判 2019年6月18日

 罪名 建造物侵入、窃盗

 被告人 デパート勤務の男性(53)〉

 起訴されたのは2件。1件目は、2019年3月に被告人が東京都内の工場に侵入してゴム長靴2足を盗んだ件。2件目は、2018年10月に被告人が東京都内の小学校給食室に侵入してゴム長靴2足を盗んだ件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人はゴム製の長靴の臭いに興味があり、何度も工場に侵入してゴム長靴を盗んでいたという。

 取り調べに対し被告人は「働いた人の長靴の臭いを嗅ぎたくて、5回くらい工場に入り12足盗んだ」と供述しているそうです。

 そんなに長靴集めても使い途ないだろうとは思いますが、逮捕後に被告人のマンションを家宅捜索したところ長靴が271足見つかったんだとか。かなり大きめの靴屋さんでも長靴はそんなに置いてないですからね。それだけ臭いを嗅ぐのが好きだったんでしょう。

 そして被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「長い間盗みをやめられなかったのは何故ですか?」

被告人「盗んでいるうちにドンドン盗むようになっていたと思います」

 盗めば盗むほど盗みたくなってしまうんですね。酔えば酔うほど強くなる酔拳の様に、盗めば盗むほどドロボーとしての自信がついて気持ちが強くなってしまうのかも知れません。

弁護人「今長靴に興味あるんですか?」

被告人「いや、今は好きではありません」

弁護人「今後、欲しいという欲を抑える為にはどうしますか?」

被告人「長靴を忘れる為に長靴の事は気にしないと肝に銘じて、もう長靴の事を考えるのはやめたいと思います」

 逆に長靴を意識し過ぎのような気もしますが、長靴からは離れると約束していました。

“浮気バレ後の不倫関係”みたいな問答へ…

 続いて検察官からの質問。

検察官「今は長靴好きじゃないと。きっかけは何ですか?」

被告人「捕まってからそう思うようになりました」

検察官「それって……ホントは興味あるんだけど、好きになってはいけない!って思ってるだけじゃない?」

被告人「ん……はい……」

 浮気がバレた後もまだ気持ちが残っている不倫関係について訊いてるかのよう。被告人としても長靴への未練が残ってるような感じです。

 そんな受け答えの後に裁判官から。

裁判官「人の趣味を良い悪いとは言えないし、長靴を集めるのは自由なんですよ。盗む事自体が悪いのであってね。長靴に興味無くすって可能なんですかね?」

 検察官と同じように「まだアイツのこと好きなんだろ?」とホンネに迫っていきます。

裁判官「人間なかなか趣味を変えるのは難しいですよ」

被告人「もうやりません」

裁判官「う~ん……これってどうしても人の物に手を出さざるを得ないんですかねぇ。人の物に手を出さないで趣味を満たす方法ないんですか?」

被告人「いや~……」

 と口籠ったところで被告人質問終了。新品なら靴屋で購入すればいいんだけど、使い古しの長靴となると古着屋でもなかなか見掛けないですからねぇ。結局答えは見つからなかったけど、趣味を継続したままで再犯防止策を考えてくれる裁判官は素敵ですね。この想いに応えてくれればいいんですけど。

◆◆◆

 1999年から現在まで、20年以上にわたり約2万件の刑事裁判を傍聴してきた裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火氏。その多数の公判の中から、後編では何度逮捕されても25年間無免許運転を続けた男の裁判を取り上げる。法廷でくり広げられた予想外の再犯理由とは……。

「気を使いながら乗ってました」「クレームが出ないようにしますんで!」何度逮捕されても25年間無免許運転を続けた男の「ヤバい裁判」 へ続く

(阿曽山大噴火)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング