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眞子さまの心に国民の声は響かなかったのか 美智子さまが築かれた「大衆天皇制」が崩壊する

文春オンライン / 2021年10月16日 6時0分

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婚約内定記者会見での眞子さまと小室圭さん ©JMPA

「文藝春秋」11月号より御厨貴氏と林真理子氏による対談「『大衆天皇制』の崩壊」を一部公開します。(全2回の1回目/ 後編 に続く)

◆ ◆ ◆

象徴天皇制を揺さぶる問題

 眞子さまと小室圭さんのご結婚がついに実現しそうだ、とどこへ行ってもその話題で持ち切りです。世間では“駆け落ち婚”なんて言われているようですね。

御厨 急転直下で年内結婚、と相成りそうですね。

 お二人の婚約内定の発表からこの4年間は、大変な大騒ぎになっていましたし、各々の皇室観や結婚観をめぐって国内が分断されているような状態です。現在に至っても、必ずしも祝福ムードにはなっていないように見えますが……。

――毎日新聞が行った世論調査では、眞子さまのご結婚を「祝福したい」という人が38%、「祝福できない」が35%、「関心がない」が26%という結果だったそうです(9月18日付)。

御厨 私はね、大衆の人気こそが戦後皇室を支えてきた歴史を振り返ると、この数字には隔世の感を禁じ得ません。皇族の結婚を「祝福したい」という声が4割に届かないというのは考えられない。

眞子さまの心に国民の声は響かなかったのか

 お父様の秋篠宮さまも3年前の誕生日会見で「多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況、そういう状況にならなければ、私たちは、いわゆる婚約に当たる納采の儀というのを行うことはできません」と発言されていました。これは「皇室は国民と共にある」というお考えから出たお言葉だと思います。でも結局眞子さまの心には国民の声は響かなかったということなのでしょうか。

御厨 どうでしょう。ただ私は、眞子さまの今回のご決断が、戦後の象徴天皇制を支えてきた根幹部分を揺さぶるような、本質的な問題をあぶり出したと考えています。

 象徴天皇制を揺さぶる問題! 御厨先生は、上皇さまの生前退位を考える有識者会議の座長代理を務められました(2016年、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」)。今後の皇室はどのようになっていくとお考えですか。

天皇家は何のために存在するのか

御厨 会議では、これまで安定した皇位継承についてのみを考えていればよかった。つまり皇族の数が減少していく中でいかに皇統を絶やさず次世代に繋いでいくかということです。しかし、眞子さまの結婚をきっかけに世論がここまで二分され、「天皇家は何のために存在するのか」「現代における象徴天皇制の意味は」といった、かつてはタブー視されていた皇室の本質的議論に国民のほうが先に行き着いた。私は今こそこの議論から逃げてはいけないと思うんです。しかし、事ここに至っても、政府は皇位継承も含めて皇室の問題を深く掘り下げることから逃げており、総裁選という政局を経てすぐに議論が始められるとも思えない。暗澹たる気持ちでいる、ということを最初に申し上げておきます。

 私はいま上皇后・美智子さまが、一体どんなお気持ちでいらっしゃるのか、それをお聞きしてみたいんです。もしあの方がいらっしゃらなければ、皇室はこれほどまで国民から敬愛されていなかったと思う。それくらい大きな役割を果たされたのに、この数年で皇室がこんなことになってしまって……いま、すごくおつらいのではないかと思うんです。

御厨 おっしゃる通りだと思います。美智子さまは民間の出身として初めて皇室に入られ、どうすれば上皇陛下とともにこの国に幸いをもたらせるのかをずっと考えてこられた。それが退位された途端に眞子さまへのこのバッシングでしょう。私もお気の毒な気がするんです。

すべては明仁皇太子と美智子妃の結婚から始まった

 眞子さまは美智子さまにとって初孫でいらっしゃるし、その成長を心から喜んでおられたでしょう。まさかこんなかたちで皇室から送り出すことになろうとは。

御厨 そうですね。そもそも現在の皇室のかたちを作り上げたのは、現在の上皇さまであり、それを支えた美智子さまなんです。戦争の影を引き摺っていた皇室像を、あのご夫婦が一変させた。すべては60年前の明仁皇太子と美智子妃の結婚から始まったのです。

 「ミッチーブーム」ですね。

御厨 そう、1959年のことです。以来60年余にわたって、その皇室像がこの国に浸透していった。当時、政治学者の松下圭一は「大衆天皇制論」という論文を発表し、天皇に対する国民の価値観の一変を看破しています(『中央公論』)。当時はまだ戦争の記憶から天皇へのわだかまりが国民に残っていました。そこに旧皇族や旧華族と何の縁もない民間人である美智子さまが入っていき、メディアを通じてそのご様子が発信されることで、皇室は大衆に開かれ、支持されていったのです。

皇室はずっと、日本人にとっての「理想の家族」

 「大衆天皇制」ですか。私が美智子さまのご成婚パレードを見たのは保育園児のときでしたが、いまでも脳裏に焼きついています。近くの電器屋さんの店先のテレビで、近所の人みんなで見たなあ。

御厨 テニスコートの恋を実らせたお二人のシンデレラ・ストーリーに、国民は新しい皇室の風を感じました。中流家庭の理想像を見るようになり、皇室は神聖不可侵なものではなく、大衆にとっての「スター」になったわけです。松下は論文でこう書いています。

〈皇太子はスキーでころんだり、テニスをやっても女の子に負けてしまう。それに恋すらするではないか。このような皇室をかこむ雰囲気の変化は、憲法上の天皇の地位の変化以上に重要とみたい。今日、皇室は大衆にとってスターの聖家族となったのである〉(「大衆天皇制論」『中央公論』59年4月号)

 なるほど。たしかに皇室はずっと、日本人にとっての「理想の家族」でしたよね。

大衆天皇制という考え方の崩壊

御厨 その中心にいたのが、美智子さまです。美智子さまは、皇室における最良かつ最上の“アクトレス”ですよ。表現力と国民を感激させる力は類を見ない。

林 女優ですか。

御厨 はい。美智子さまの動向はテレビや週刊誌を通じて大衆に消費されていきました。戦前の「絶対天皇制」が臣民の皇室に対する「畏怖」を支配の基盤としたのに対し、戦後の「大衆天皇制」は皇室への「親愛」の情に支えられる。この松下の指摘は正しいと思います。

 私もテレビで観た美智子さまが本当に美しくて、この方が日本の皇室にいて下さって本当によかったなんて、心から思います。

御厨 それが昭和から平成をまたいで令和へ来て、今や大衆が天皇制そのものを無視している。大衆天皇制という考え方が全く以て崩壊してしまっているんですよ。

 眞子さまもスターとして注目されることに辟易していたんじゃないでしょうか。「結婚して早く皇室から出たい」とおっしゃっているという報道もありました。私は以前、別の宮さまの女王さまにお目にかかったことがあるのですが、外出や食事はもちろん、いついかなるときもSPの方が付いていて、デートのときもこんなのじゃ大変だろうな、なんて思いました。

( 後編 に続く)

「 『大衆天皇制』の崩壊 」の全文は、「文藝春秋」2021年11月号と「文藝春秋digital」に掲載されています。

紀宮さまは“相応しいご結婚相手”黒田慶樹さんと…眞子さまの自由なふるまい、“皇族然”とした愛子さまの今後は? へ続く

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年11月号)

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