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川口市小2いじめ、学校設置の対策委でメンバーが決まらず半年間も“放置状態”

文春オンライン / 2021年10月18日 6時0分

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川口市教育委員会 ©️文藝春秋

「僕は、嫌な思いをしたので、学校には行きません」

 埼玉県川口市立小学校に在籍する男子児童Aくん(小学2年生、8歳)は、筆者が自宅を訪問すると、最初にこう話した。どうやら学校の教師や市教育委員会の職員だと思われたようだ。

いじめをめぐる不適切な対応が問題となっている川口市

 Aくんは5か月間、学校へ行っていない。保護者は、同じ学校の上級生からのいじめが理由だとして、学校や市教委に伝えた。そのため、いじめ防止対策推進法(いじめ防対法)による「重大事態」と判断されている。保護者は市教委に調査委員会(以下、調査委)の設置を求めた。学校では、常設されている「いじめ問題対策委員会」(以下、対策委)を活用すると説明していた。ただ、10月までに委員が決まっておらず、事実上、設置されていないことがわかった。

  筆者がたびたび報じてきたように 、川口市ではいじめをめぐる不適切な対応が問題となってきた経緯がある。2019年には、 「教育委員会は、大ウソつき」とメモを残して高校1年生の男子生徒が自殺 している。この生徒は、中学時代にいじめにあっていた。

 Aくんの保護者によると、加害者は同じ学校の4年生B、6年生Cら複数人(いずれも現在の学年)。Aくんは1年生のときの21年2月ごろ、身体的特徴を指摘した「不快なあだ名」をつけられていた。そのため、Aくんは傷つき、一時的に学校へ行かなくなった。

 同年2月中旬、学校側が「謝罪の会」を開いた。加害者は言い訳をしたものの、結局は謝罪をした。学校側は、加害者とその保護者に対して指導した。Aくんとしては、仲直りしたものと思っていた。ところが、2年生になった4月、学校外でAくんが近づいたとき、BとCから「え? なに?」と言われた。Aくんは、この態度を見て怖くなったという。学校への行きしぶりが出てきた。

警察がいきなり自宅に訪問

 この頃、保護者が市教委と電話で話をしているとき、警察がいきなり自宅を訪問してきたことがあった。保護者が不安定になっていると思い込んだ教頭が、警察と児童相談所に電話をしたというのだ。保護者は振り返る。

「警察が来たときには、息子はすでに学校へ向かっていました。主幹教諭に確認をすると、『市教委の了承を得ている』と言ったんです。いったい、誰に了解を得たのでしょうか? 息子の件を担当している職員は電話中でした。市教委の了承を得ているのなら、校長の判断か、少なくとも校長は事情を知っているはず。訪問した警察も『どうして学校が連絡をしてきたのかわからない』と言っていました。市教委の指導課長に確認すると、『報告を受けていない』と言っていました。学校側が勝手に“市教委”の名前を使ったのでしょうか? 息子が不安定だったことを家庭の責任にしようと思ったのではないでしょうか」

 その後、Aくんは5月6日から不登校が続いている。

「重大事態」により保護者は調査委の設置を申し立て

 いじめ防対法によると、いじめによって「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑い」がある場合は、「重大事態」とされている。Aくんが再び不登校になったことで、保護者は調査委の設置を申し立てた。

 川口市には「いじめを防止するためのまちづくり推進条例」があり、常設の組織として、各学校に「対策委」を設置している。対策委では、必要に応じて、心理や福祉の専門家、弁護士、医師など外部の専門家も参加する。その上で、学校での調査が困難な場合、市教委が「市いじめ問題調査審議会」、つまり、防対法でいう「調査委」で対応することになっている。

 ところが、対策委も調査委も動こうとしなかった。

「(新たな)4月のいじめの件について、学校も市教委も知っています。調査委の設置の連絡がなかったので、8月になって、市教委に問い合わせをしました。すると、学校が設置主体となったというのです。ならば、学校から説明がないのはおかしいとの話でした。学校に問い合わせをすると、主幹教諭は『知らない』ということでした。しかし、教頭に確認しても、返事が曖昧でした」(保護者)

いじめが終わっているとは言えない状態

 学校側は、Aくんのいじめ被害を認めている。一旦は、加害者側がAくんに謝罪をした。そのため、一応の“解決をみた”ことになっている。しかし、Aくんは再び不登校になった。文科省では「いじめの解決」について、2017年3月、「いじめの防止等のための基本的方針」の改定で、いじめが止んでいる状態が「3か月が目安」とした。Aくんのケースでは、いじめが終わっているとは言えない状態だ。

「Aくんの件については、学校はいじめを認知していました。通常のいじめ対応はしていたと聞いています。しかし、調査をすると、確認できたことは学校の管理外での出来事で、目撃者もいませんでした。学校として何をしたらよいかという相談が市教委にありました」(市教委)

学校内の「対策委」は設置されず放置状態

 保護者対応についても、市教委はこう述べる。

「学校側から『謝罪をしたことで、解決をみた』と聞いていました。市教委としてもこの件は見守りながら、丁寧に見ていくことにしていました。親御さんも、相手方の児童が謝罪をしていたことで、解決を認めていました。しかし、その後の、相手方児童の態度について、『反省がないのでは?』との疑念が生じたとのことでした。学校側にも親御さんが『反省していないんじゃないか?』と言っていました」

 市教委によると、Aくんのいじめの調査は学校内の対策委がする。しかし、学校側から、保護者に設置に説明がなく、9月になっても委員が決まっていないことが明らかになった。

「校長が今年度代わったばかりで、そうそう早く動けなかったようです。あとからみれば、私どもが反省すべきところです。それに、各学校の『いじめ基本方針』を作った時に、委員の内諾を取っていたはずです。しかし、校長等の人事異動があり、人脈が引き継がれていないのではないでしょうか。学校では、あらためて委員を探しています。学校には、なるべく早く揃えていただきたい」(市教委)

校長はダンマリ、その後も終始曖昧な返答

 その後、保護者側と学校、市教委は9月28日夕、話し合いを開いた。対策委で調査することが決まったが、いまだに常設の対策委であるはずの委員が誰かはっきりせず、模索中という。保護者は、そのときの様子について、こう話す。

「校長はダンマリで、市教委は『校長は赴任したばかりで、前校長と引き継ぎができていなかったんですよ』などと言いましたが、言い訳に聞こえました。『前校長に聞けば、誰が対策委の委員なのかわかりますよね。今年の4月から、調査委を設置してほしいと言っていましたよね?』と聞くと、校長は『模索していましたが、なかなか対策委を開くという結論に至らなかった』と言っていました。

 それに、調査委の設置をお願いしたとき、校長先生が『お母さんの意に添えない』と言ったんですよ、と問いただすと、校長は『その言葉を言った覚えがない』と言っていました。そして、校長は『9月になって、男子児童が登校をしないことを踏まえて、やっぱり、対策委は必要だという結論になりました』と言っていました。私が『今年中に解決をしてほしい』と言うと、民生委員や前校長にお願いをすると言っていましたが、『いつぐらいになりますか?』と聞いてもはっきりしませんでした」

いじめられて不登校なのに、なぜか成績表には『B』判定が…

 この日の話し合いでは、Aくんの1学期の成績表を持ってきた。ほとんどの科目に成績がついていたが、保護者は納得がいかない。

「いじめられて不登校になっているのに、どうして成績が『B』についている科目があるのでしょうか。出席をしていないので、(判定不能を意味する)『/』でいいです、と言ったんです。その代わりに、欠席をした理由を、いじめで不登校になっていたことを証明する文書をくださいと言いました。もっと早く解決をしてくれれば、こんなに長く学校に行かないということはなかったはずです」

 結局、保護者の要望が聞き入れられ、Aくんの成績表は「/」となり、「欠席理由 いじめられたことに不安を感じて不登校となったため」という文書が渡された。

話し合いの終盤で校長は「もういい加減、眠くなった」

 この日は22時まで約4時間にわたり話し合いが行われた。その終盤で、校長は重大事態との認識で「誠心誠意やらせていただきたい」とは言ったものの、話し合いの終盤では「もういい加減、眠くなった」とも言っていたという。

 話し合いを踏まえ、保護者はこう話した。

「10月末までに対策委を開催してほしいです。息子は学校へ行きたいのです。そのため、3学期から通ってほしいんです。そうしないと、解決しないままになってしまう。子どもが安心して学校に行ける環境づくりをしてくれない限り、学校には通わせられない」

 写真=渋井哲也

(渋井 哲也)

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