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日本の就職試験は不毛な過程が重視される? 採用において「面接」が精度の低い選考方法である“決定的証拠”

文春オンライン / 2021年10月26日 6時0分

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©iStock.com

 採用選考にあたって必ず行われると言っても過言ではない「面接」。しかし、近年の研究では、「面接」で高く評価された人が、実際に仕事を行う際に高い成果を出すかどうかの関連性は低いというデータが発見された。なぜ「面接」では、正当な評価ができないのだろうか。

 ここでは、大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(DSS)代表の辻田一朗氏、人材研究所代表取締役社長の曽和利光氏の共著『 日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか 』(星海社新書)の一部を抜粋。精度が低い日本の企業面接の実態を紹介する。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

「面接至上主義」の崩壊

 日本の企業の採用選考においては、大昔から「面接」(インタビュー)が重視されています。現在でもそれは変わりません。今でも面接をせずに内定を出す企業はほとんどありません。その背景には面接というものが、他の選考方法と比べて、候補者の人となり、性格や能力を評価するのに、最適な手法であるという採用する側の信念があります。能力試験や実技試験、性格適性検査、グループワークなどいろいろな選考手法がありますが、顔を付き合わせて話をする面接(最近ではオンラインでの実施もふつうのことになりましたが)が最もブレることなく、その人の評価ができると信じ込んでいるのです。

 しかし、採用選考に関する世界の研究をみると、その信念は間違っている可能性が高いことがわかります。下の図をご覧ください。

 これは、さまざまな採用選考手法について、その妥当性を検討した研究の一覧です。妥当性とは「その選考手法によって高く評価された人が実際に仕事を行う際に高い成果を出すか」ということです。なお、表の妥当性係数は高い方が「妥当性が高い」とされています。

 認知的能力テストとはSPIの能力適性検査などのようなものです。ワークサンプルとは、実際にやってもらう予定の仕事をやってもらうということなので、いわゆるインターンシップと言ってよいでしょう。シチュエーショナルジャッジメントとはケーススタディ、アセスメントセンターとは仕事のシミュレーションのようなものと考えてください。

 その詳細は特にここでは触れませんが、最も注目すべき事実は、これらのさまざまな選考のうち、なんと「非構造的面接」の妥当性が最も低いということです。「非構造的面接」とは、「候補者ごとに違った質問をして反応を見る」ということなので、これが通常の企業で行われている面接です。つまり「面接」は最も精度が低い選考方法だったのです。

「構造的面接」(構造化面接ともいう)では、高い妥当性を示していますが、これは「マニュアル化された面接」(質問内容やテーマ、回答方法、収集情報、評価方法などを明確にルール化して行う面接)のことで、これをしている企業は現時点では一部の先進的な企業を除いてはほとんどありませんので、今回は触れません。ただ、現在、多くの企業が構造的面接の導入を検討し始めてはいますので、将来的には改善されるかもしれません。

面接の精度を下げる「心理的バイアス」

 なぜ、ふつうの面接(非構造的面接)はそこまで精度が低いのでしょうか。ここからは私の仮説ですが、それは人が人を見る際にはどうしてもさまざまな「心理的バイアス」が働いてしまうからです。「心理的バイアス」とは、言い換えれば「偏見」のことです。対象をまっすぐに見ることなく、自分の心の中の作用によって歪んで見てしまうことです。

 面接に関係のある心理的バイアスはさまざまなものがありますが、代表的なものをご紹介しましょう。

(1)確証バイアス

 仮説や信念を検証する際に、自分がすでに持っている仮説を支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことを「確証バイアス」といいます。「先入観」といってもよいかもしれません。たとえば、学校の成績が良い人に対して「勉強しか能がないガリ勉」「行動力が低く、おとなしくじっとしている人」「真面目で面白みのない人」という先入観があるのであれば、候補者が何を話しても前述の先入観に合致するものだけを拾って、「やっぱりこの人はガリ勉だ」と評価してしまうのです。

(2)類似性効果

 人は、「自分と似ている人に好奇心を抱く」という強い心理的バイアスを持っています。これが「類似性効果」です。逆に「自分と似ていない人」を低く評価するともいえます。もし、面接官が学生時代に勉強を頑張って高い成績を取っていた人であれば、成績の良い人のことを好ましく思うでしょうが、大学教育の変化も伴って、昔の大学で学んだ中高年の人の中には、勉強を頑張ったという人は今よりは少ないはずです。そうなると、自分とは違う「成績の良い人」を無意識に疎ましく思う可能性があります。

(3)初頭効果

 よく「第一印象が重要」と言われますが、それは「初頭効果」があるからです。初頭効果とは、最初に与えられた情報が印象に残って長期記憶に引き継がれやすく、後の評価に影響を及ぼす現象のことです。面接の最初に見るのは、履歴書やエントリーシート、そして成績表などの面接の際の応募書類です。そこで「ほう、ここの大学なのか」「成績がとても良いじゃないか」などとの属性をみて生じた印象が後々まで残るということです。前述のように「成績が良いこと」にあまり良い印象を持っていない(無意識でしょうが)人が最初にこの人は学業の成績が良い人だという情報を得てしまうと、評価は低くブレてしまう可能性があります。

採用する側もされる側も十分に注意すべき

(4)認識の相対性

「絶対音感」と言って、音に対する絶対的基準を自分の中に持っていて、どんな音を聞いても音階がわかるという人がいます。しかし、絶対音感を持っている人はとても少なく、多くの人は基本的に「相対音感」、つまり何かの音と別の音を比べた時にどちらが高いか低いかだけがわかるという人がほとんどです。同じように、人を見る場合、誰かと比較するとどちらの方が自社に合っているのかわかったりする(もしくはわかった気になる)のですが、1人だけを見た場合、その人がどれほど自社に合っているのかを評価するのは途端に難しくなります。これは1人の人の中での各性格特性間でも似たようなものがあると思われ、強み弱みのはっきりしている人の性格は認識しやすいものの、バランスの取れた人に対しては、「この人はこういう人」と表現しにくい場合があります。学業成績は全方位的に努力をしないと高得点が取れませんので、まさにバランスの取れた人である可能性も高そうですが、そうすると「特徴のないふつうの人」だと評価されてしまうかもしれません。

(5)ハロー効果

 ある対象を評価するときに、目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことを「ハロー効果」(“halo”=「後光」効果)といいます。「体育会の大会で全国優勝をした」「面白いイベントを立ち上げて、数千人を動員した」など、目立つエピソードを聞いてしまうと、本来、採用基準にはあまり関係ないことであったとしても、その他のすべての要素が良く見えてしまうことがあります。逆に、学業のような地味に思われがちなものでは、ハロー効果はあまり発揮されないかもしれません。そうすると、派手なエピソードを持っている人よりも相対的に低い評価を得る可能性があります。

 以上は採用面接に関わる代表的な心理的バイアスで、面接の精度を下げている原因ではないかと思います。しかも、各項目で例示したように、どの心理的バイアスも、特に成績の良い人に対しては良い方向に向かない可能性があります。もし読者が採用する側なら、このような心理的バイアスには十分注意して、落とすべきでない人を落とさないようにしましょう。もし読者が採用される側なら、このような誤解をされる可能性があることを知って、自己アピールの仕方を工夫してみましょう。

日本の企業は入社後3年間で約3割が離職する! 調査でわかった「スグにヤメる新入社員」に“共通する傾向”とは へ続く

(辻 太一朗,曽和 利光)

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