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なぜ横浜国大の現役学生が“大衆そば屋”を運営してるのか? 三ツ沢上町「蕎麦ずずず」に行ってみた

文春オンライン / 2021年11月9日 11時0分

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横浜地下鉄ブルーライン三ツ沢上町1番出口を西へ

 横浜国立大学の学生が運営を任されているそば屋が横浜にあるという。地域おこしのNPO法人がそば屋を開店というニュースはよく聞くが、大学生が運営しているというのは珍しい。その店は三ツ沢上町駅近くにある「蕎麦ずずず」。コロナ禍真っただ中の2021年4月に開業している。

 秋晴れの日曜日、散歩がてら気楽に伺ってみたのだが、色々話を聞いていくと、実はこの店、横浜という地域に密着したかなり優れたビジネスモデルであることが判明した。

横浜国大の学生が運営

 場所は三ツ沢公園の北西あたり。横浜地下鉄ブルーライン三ツ沢上町の改札を出て、1番出口の階段を上がる。目の前の横浜新道を西方向へ進む。新横浜通り、さらに首都高速の高架橋を超えてさらに直進すると、約10分で店に到着する。横浜国大までは約3分という立地だ。

 お店は新しいマンションの1階で外観は清楚なイメージで、「つけそば」という大きな幟が目印になっている。

学生店長は教育学部の2年生

 入口の券売機の前で何を食べようか悩んでいると店の方がにこやかに出て来てくれて、おすすめなどを教えてくれた。この方が学生店長の雨森久弥さんだった。横浜国立大学教育学部心理学専攻の大学2年生である。

 人気メニューは2種類の麺を合体させた「二色蕎麦」(600円)、「逆きつね蕎麦」(950円)、「肉蕎麦」(1000円)、「ごま蕎麦」(750円)など。さっそく「二色蕎麦」のチケットを買い入店した。

 開店11時直後の到着だったが、店には近所の方だろうか2名が食事中である。すでに人気店のようだ。しかし、入店してまず驚いたことがある。内装が黒い素材で統一されており、シック極まりない。4人掛けテーブルが3つ、左窓側には立ち食いコーナーもある。メタリックな厨房はオープンキッチンスタイルで、調理の工程がすべて見渡せる。大変オシャレな雰囲気である。そして、テーブルの上にはマスクケースが置いてある。気配りが感じられるサービスだ。

 ちょうどそこに「蕎麦ずずず」運営会社のマネージャーである服部仲宏さんが到着したので、料理ができるまで、学生店長の雨森さんと服部さんにいくつか質問してみたのだが、これがなかなか興味深い内容だった。

「そば」という新ビジネスを考えた

「蕎麦ずずず」を経営しているのは横浜市二俣川で美容院からスタートし、飲食店の運営・店舗デザインなども手掛けている株式会社で、服部さんはそこの所属である。

 2020年以降、コロナ禍で売り上げも壊滅的に激減。新たなビジネスを模索していた。そこで昨年、肩ひじ張らないファスト系のそば屋をやってみようという話が持ち上がった。どうせやるのなら本格的なものを提供したいというオーナーの思いもあったという。

 そして偶然にも長野県松本市にある「そば処榑木野(くれきの)」に出会うきっかけがあり、相談することになった。すると、そばの進化、そばの可能性や、そば文化を未来に残すために今以上の五感を刺激出来る食べ物にしていきたいという思いが一致。

「榑木野」は本店で提供していないそばなら製麺してもいいということになり、協議を続け、他で作ったことがない二色蕎麦を開発するに至ったという(二色蕎麦については後述します)。また、返しは南万騎が原にある「満月屋」に相談し、かつお出汁をベースにした特注の返しを完成させた。

 つまり店舗では従業員が「榑木野」で製麺したそばを茹で、かつお節や宗田節、昆布などで出汁をとり、「満月屋」の返しを合わせてつゆができるという、誰にでもできる調理マニュアルを作り上げたわけである。

学生はこのビジネスをどう見たか

 さてスタッフィングをどうするかということになった。そんな時、服部さんの知り合いに横浜国大の学生さんがいたので、そこに話を振ってみたという。返事はもちろんOK。学生側としてはコロナ禍でバイトも激減していたので仕事をしたかった。しかし、素性の分からないところや密な環境ではバイトはしたくなかった。その点、「蕎麦ずずず」のバイト環境はすこぶる魅力的だったわけである。

「学生バイトは20名位います。ただ働くだけでなく、季節メニューの開発や新メニューの提案など、また改善すべき点を服部さんと打ち合わせして、全体の環境をよくしようと考えています」と雨森学生店長は話す。

学生も一緒にメニュー開発

 経営者側も、横浜国大の優秀な学生が経営スタッフになってもらえるのなら御の字。それならバイト学生のシフトだけでなく、メニュー開発や店舗レイアウトや動線などを一緒に考えてもらおうということになった。つまり、店側は優秀なスタッフと連携できるメリットがあった。

 学生側は安全にしかも実践的に経営ノウハウを習得しながら仕事ができるというわけである。若い発想で味の調整や時代にあったそばのメニューの提案を実践している。例えば、「鶏白湯カレー蕎麦」に使う「鶏白湯スープ」が美味しいという話があれば、それをセルフで自由に飲めるようにしたり、季節の混ぜそばを提案したりといろいろ実施しているという。

「二色蕎麦」のユニークな構造

 配膳された「二色蕎麦」の麵はユニークそのもの。平打ちの麺線が二色になっている。聞くと白い部分は更科粉で打った更科そば、濃い目の色の部分は同割(五割)で打ったそばだという。それを麺帯にして合体し二層にして、独自の製法で製麺した今までにない新感覚のそばである。

 辛汁はかつお出汁に昆布出汁を追い出汁してつくった奥深い味で、相当うまい。そして、薬味のわさびはわさび菜の漬物を細かく切ったものが併せてある。これもまたユニーク。そばはややゴワっとした硬めの食感で、食べ応えも十分。二色で彩がよい。また、セルフサービスの鶏白湯スープをつけて食べてもなかなかうまい。

「逆きつね蕎麦」のつゆも絶品

 温かい「逆きつね蕎麦」も食べてみた。こちらは「山菜きつねそば」である。初めはきつねの巾着の中にそばを入れていたのだが、あまりの調理の難しさに逆にそばを普通に出して、山菜をきつねの中に入れることにしたので「逆きつね」と命名したそうだ。この麺も二色蕎麦が使用されている。温かいつゆはかつお節、宗田節、昆布でとった出汁が香る奥深い味である。

気の利いたメニューがうれしい

 また、別の日にいただいた「ごま蕎麦」はいわゆる胡麻切りそばで、つけ汁が胡麻だれと普通の辛汁で食べることができる。こちらは繊細な細切りそばで胡麻が香る。「おつまみの胡麻サバ」もシメサバを胡麻みそであえたもので酒のつまみには最高である。とにかく気の利いた粋なメニューがあるので、リピーターが増えるのだろう。

経営者と横浜国大生の夢

 服部仲宏さんは経営者として、コロナ禍を乗り切って「蕎麦ずずず」がうまくいけば、店舗を今後は増やしていきたいという。

 一方、学生店長の雨森久弥さんは、他の大学サークルとのコラボを期待している。横浜国立大学生が立ち上げたクラフトラッシー専門店「LACCI(ラッチ)」(横浜市神奈川区片倉)や横浜国立大学公認アカペラサークル「Stairways」とイベントを開催したり、今年はオンライン開催となったが、いつか横国祭にも出店したいと夢は膨らむ。

 横浜という舞台でそれぞれの夢が広がっていく予感がする。若い人たちの夢はとても輝いてみえた。なかなか有意義な訪問であった。また行こうと思う。

写真/坂崎 仁紀

INFORMATION

蕎麦ずずず

住所:神奈川県横浜市保土ケ谷区岡沢町150 パーク三ツ沢 1F

営業時間:11:00~15:00 17:00~22:00、年中無休

https://zuzuzu.restaurant/

(坂崎 仁紀)

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