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「『キムタク』って呼ぶ奴に、俺側の人間はいない」と…頑なだった木村拓哉(49)を変えた、明石家さんまの“言葉”

文春オンライン / 2021年11月13日 11時0分

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木村拓哉 ©文藝春秋

 きょう11月13日は、元SMAPで俳優の木村拓哉の49歳の誕生日である。40代も後半を迎えたここ数年の彼を見ていると、徐々に変化が表れつつあるようにも感じる。

 たとえば、マクドナルドのCM(昨年からイメージキャラクターを務める)では、女子高校生たちの話す「モバコ」という言葉の意味がわからず、木村が思わず「モバコって何だ?」と口にすると、「“モバ”イルで買う“コ”ーヒーなんですけど」と冷たくツッコまれていた。これには、CM上の設定とはいえ、あのキムタクもおじさん扱いされるようになったか……としみじみとさせられた。

 かと思えば、昨年放送のスペシャルドラマ『教場』で警察学校の冷徹な教官・風間公親を演じるにあたっては、髪を真っ白にして初めて老け役に挑戦した。

 本人によれば、見た目についてとくにこだわりはなかったものの、《ただ、生徒役30人のエネルギーが現場にすごく満ちあふれている状況のなか、風間だけが無機的な静物のように存在している感じのイメージは伝えたかった》という(※1)。監督の中江功からは「そこまで頭は白くなくてもいいんじゃない?」と言われたが、意見を交換し合って、最終的にOKが出たとか。

若手俳優の意識を変えた言葉

『教場』の撮影前には、共演者たちとトレーニングを行った。このとき、若手俳優たちがなかなか役に入れず、警察学校の衣装を着てもコスプレ感覚で、帽子を団扇代わりにあおいだりするありさまだったらしい。

 そんな折、みんなでパーソナルに集まって話す機会があった。このとき木村が若手に「カメラの前に立つ状態が10だとしたら、いまの自分たちはいくつだと思う?」と訊けば、「2」とか「3」という答え。その時点でトレーニング期間は残り3回しかなかった。そこで木村は「今日中に5まで上げようよ」と呼びかけると、その瞬間、全員が大声で「はい!」と返事をし、急に撮影に向けてギアが入ったという(※2)。

 今年正月には続編『教場Ⅱ』が放送された。このときの現場では、共演する20代の俳優たちとこんなやりとりがあったそうだ。

《よく喫煙室に誘われました。自分が誘ったにもかかわらず火もつけないから、「何やってんの?」と言うと、「撮影中は風間教官なのでお話ができないんですけど、好きです!」って(笑)。男子からよく告られてました》(※3)

 若い俳優たちの“告白”は、木村に大人の男性の魅力を感じてのことだろう。かつて木村のファンは圧倒的に女性で、大人の男性には苦手とする人が多いとされていたことを思えば、やはり状況も彼自身も変わりつつあるらしい。もっとも、本人としては、意識的にイメージチェンジを図っているわけではないのかもしれない。

 過去のインタビューでは、これからどんな役をやっていきたいかとの質問に対し、《僕が役を選ぶことはないんじゃないですか。(中略)求められることの大きさや価値は、ほかの何にも代えられないので。その現場が求めてくれるのであれば、僕は赴きたい》と語っていた(※4)。

 とすれば、最近の変化も、求められるものに応じて最善を尽くしたらそうなったというにすぎないのだろう。

「何をやってもキムタク」という評価

 撮影現場で共演者たちをリードする立場であることも、以前からのようだ。木村とは1996年放送の『ロングバケーション』以来、『HERO』シリーズなど四半世紀にわたってドラマや映画で組んできた演出家の鈴木雅之はこんなふうに語っている。

《彼にはみんなを引っ張ってゆく座長感があるんです。セットに入ってくるのは早いし、頭に全部入っているから現場に入ったら台本を見ないし、あの男は楽屋に戻らない。そうすると、和やかなんだけれど引き締まっているという状況が生まれる。共演する俳優さんもスタッフもその状況に引っ張られるので『木村拓哉がやっているなら自分もやらなければ』という気持ちに自然となるんでしょうね》(※5)

 現場を引き締める座長感とは、そのままスター俳優の条件と重なる。あるいは「どんな役を演じてもその人以外の何者でもなく、ファンからもそれを求められている人」という意味においても、木村はスターの条件に合致する。この定義はやや極端かもしれないが、石原裕次郎、勝新太郎、高倉健、吉永小百合、田村正和などこれまでのスター俳優を思い浮かべれば、納得していただけるはずである。

 しかし、ある時期から舞台出身の俳優が活躍する機会が増えたせいもあってか、どんな役にもなりきれることこそ俳優の必須条件とする見方が、一般に定着してしまったふしがある。そのなかで木村拓哉の演技は「何をやってもキムタク」と否定的に見られたりもした。

 木村自身も、「キムタク」という呼称に集約されるパブリックイメージに抗ってきた。かつては取材中に《俺を『キムタク』って呼ぶ奴に、俺側の人間はいない》と言って記者を絶句させたこともあったらしい(※6)。

 彼のなかにはおそらく、世間でのイメージに縛られたくないとの思いもあったのだろう。だが、ある人の言葉をきっかけにそうした態度を改めたという。木村が“おじき”と慕う明石家さんまである。

《さんまさんが自分に「こうやないの」って言ってくださった言葉があって。「こういう仕事をやらせてもらえている以上、俺らはただ生きているんやなくて、人に生かされているんや」と。まさしくそうだなぁって思いました。珍しく真面目な顔をして言ってくれたんですが、その言葉にすごく助けられていますね》(※7)

SMAP時代の曲を歌い上げる一幕も

 昨年1月にはソロシンガーとして1stアルバム『Go with the Flow』をリリースし、2016年末のSMAP解散以来、約3年ぶりに音楽活動を再開した。当初、再びマイクを取ることに躊躇があった木村を後押ししたのもまた、さんまの「オールドルーキーでええやろ。それが一番かっこええやろ」との言葉であったという(※8)。

 昨年2月のコンサートでは、MC中、正月特番『さんタク』のロケ帰りにさんまから「曲はアーティストだけのものじゃない。聴いている人との共有物や」と説かれたことを明かすと、バックバンドが突然、SMAP時代のナンバー「SHAKE」のイントロを演奏し始めたので、木村もこれに応じて一曲歌い上げる一幕があったとか(※9)。

 世間のイメージに対する抵抗感がさんまの言葉により一掃され、そのイメージをも自分の財産として大切にしていく姿勢へと転じたのだろう。冒頭にあげたような最近の変化には、こうした背景もあるに違いない。

 ちなみに、木村がホテルで潜入捜査を行う刑事・新田浩介を演じた映画『マスカレード・ホテル』(2019年)の原作者である作家の東野圭吾は、原作小説の連載中から新田を描くときは木村を漠然とイメージしていたという。

 同作はヒットし、今年9月には映画化2作目となる『マスカレード・ナイト』が公開された。同じく原作小説がシリーズとなっている『教場』(長岡弘樹原作)とあわせ、今後も映像化が予想される。『教場』の風間教官とともに、ここへ来て新たに当たり役を得たことは、50代に入ってからの彼の展開を考える上でも興味深い。

長澤まさみが「お父さん役をやるべきです」

『マスカレード』シリーズで木村とコンビを組むホテルパーソンに扮する長澤まさみからは、撮影のあいまに会話するなかで、「木村さんは今後NHKの朝ドラのお父さん役をやるべきです」とアドバイスも受けたという(※10、※5)。

 何とも意表を突いた提案だが、実現したら案外ハマるかもしれない。プライベートでも、昨年の誕生日には、長女のCocomiと次女のKōki,がそれぞれ幼い頃に父子で撮った写真をインスタグラムで公開するなど、父親のイメージも浸透しつつある。

 他方で、彼が主人公でない役を演じるのも見てみたい気がする。スター俳優には生涯主演という人もたしかに多いが、菅原文太や北大路欣也のように、主演を務める以外にも主役の脇を固める役で存在感を示す俳優もけっして珍しくはない。果たして木村はどちらの道を進むのだろうか。

※1 『AERA』2019年12月30日・2020年1月6日号
※2 『週刊朝日』2020年1月17日号
※3 『an・an』2020年12月30日・2021年1月6日号
※4 『AERA』2015年7月27日号
※5 『キネマ旬報』2019年1月下旬号
※6 『週刊文春』2003年3月27日号
※7 『AERA』2014年7月28日号
※8 『日経トレンディ』2020年11月号
※9 『AERA』2020年2月24日号
※10 『サンデー毎日』2019年1月20日号

(近藤 正高)

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