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20億を巻き上げる闇カジノ“イカサマ”の実態〈1台約200万円“中国製イカサママシン”、“職人”の「手仕事」…〉

文春オンライン / 2021年11月21日 17時0分

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トランプの横には怪しげな「車のキー」のようなものが……。闇カジノに潜む“イカサマ”の実態に迫る

「あの客、たんまりもっているかも(笑)」闇カジノの“意外な”利益率とその理由 から続く

 都内某所の闇カジノ。鉄の扉の向こう側では、虚々実々の駆け引きが繰り広げられている。その日、バカラテーブルは異様な熱気につつまれていた。

 バカラのルールは、丁半博打にも似て実にシンプルだ。「BANKER(バンカー)」と「PLAYER(プレイヤー)」という架空の二人の人物に対して、客は第三者としてどちらが勝つのかを予想し賭けるというゲームである。ディーラーが配る2~3枚のカードの合計の下一桁が9を超えない範囲で9または9に近いほうが勝ちというルールで行われる。

 ディーラーがスマートな手つきでシューターからカードを配る。シューターとはカジノ専用のカードケースのことで、長方形のケースには数セットのトランプが収納されている。ディーラーはシューターの取り出し口からカードを取り出しテーブルに配るのだ。

血走った目に「ここは勝負ですね」の声かけ

 ディーラーにめくられるカードの数字を凝視する客たち。

 テーブルには、クラブXの上客だった田島壮太の姿があった。建設会社の二代目社長である田島はクラブXの上客だった。お気に入りのキャバ嬢に誘われて、支配人神崎とともに闇カジノ店で遊び、どっぷりとはまるようになっていた。

「ここは勝負ですね」

 神崎が田島に声をかけた。

 最初は大勝していた田島は、ゲームが進むほどに負けが込み始めるようになっていた。その目は血走っている。

 田島は大量のチップをBANKERにベットした。一発逆転の大勝負だ。

 闇カジノの別室には、モニターを監視している男がいた。男は手元のコントローラのスイッチを押した。

 シューターの中のカードが静かに入れ替わった――。

「関東近郊でバカラをやっている店の7割から8割はイカサマをしている」

 この日、田島はバカラで500万円を負ける。ジャンケットとして田島を店に連れてきた神崎は50%バックの250万円を手にした。騙し騙されという人間関係のなか、闇カジノには人が集うのだ。

「関東近郊でバカラをやっている店の7割から8割はイカサマ、いわゆるポンコツ箱と呼ばれる店だと言われています。残りの1~2割が調整店や平箱と言われている店です。調整店とは経費分だけはイカサマをして稼ぐという良心的な店で、平箱はガチのギャンブル店です」

 闇カジノ店の元オーナーである漆原康之氏はこう解説する。彼が語る関東近郊の主要エリアは東京、横浜、西川口、千葉などを指す。彼の言葉を信じるならば、バカラ賭博の大半はイカサマだということになる。

「闇カジノ業界のなかでイカサマをしている店と、普通(イカサマをしていない)の店の差は割と明確です。店構えが立派で豪華な内装のバカラ店は危ない。運営に多額の経費が掛かる店ほど、大きく儲ける必要があるし当局から摘発されるリスクも高い。当然の帰結として、早く大きく儲けるためにイカサマを必要とするという発想になることが多い。

 逆にマンションの一室など質素の店の方が、取り切るとかをせずに経費分だけを『調整』するとか、平箱(イカサマのない店)の可能性も高い。何せ豪華店と質素店は、ランニングコストと摘発リスクに雲泥の差があるからです」(漆原氏)

韓国から流れてきた“イカサマ”マシン

「実際のものをお見せしましょう」こう語ると、漆原氏はおもむろに大きな箱をテーブルに置いた。箱の中身はシューターだった。アイボリー色の機械と、自動車のキーのようなスイッチ、そしてトランプ、この3つのアイテムについて漆原氏が解説する。

「バカラはカードの出目だけで勝負が決まる単純なゲームです。だから面白い。一方で、闇カジノ側からするとゲームを操作しやすいギャンブルだということが言える。

 これらはイカサマのために使用されるマシンなのです。このトランプは特殊な加工が施されており赤外線でカードを読み取れるようになってます。赤外線でカードを読み取り、シューターの中のカードを操作する。シューターはこのスイッチで遠隔操作できるようになっており、スイッチを押すことでシューターの中のカードを1枚、2枚と入れ替えることが出来ます」

 このシューターの動きを捉えた動画がある。シューターに手を添えるディーラー。彼が1枚、2枚とカードを取り出すなかで、3枚目のカードが静かに上にスライドして行っていることが確認できる。ディーラーは素知らぬ顔で次に出てきたカードを手に取る。すると、今度は静かにカードが降りてきた。つまり遠隔操作によってカードの順番が入れ替わったのだ。

 スタッフが写真のようなモニターで赤外線を使いカードをチェック。カードには特殊な加工がしてあり、モニターに映る黒い印の位置でそのカードが1~9のどの数字であるかを確認できるという仕組みだ。

「このシューターを使えばターゲットがBANKERにベットしたならば、PLAYERが勝つようにカードを入れ替えるという操作をいとも簡単に行うことが可能なのです」(漆原氏)

 こうした遠隔操作できるシューターは韓国カジノから流れてきたもので、主に中国製のマシンが使用されているという。つまりイカサマシューターの存在は、大手カジノグループがしのぎを削る韓国でも、こうしたイカサマ行為が横行していたということを示唆している。

1台約200万円も…中国製イカサマシューターの“稼働時間”

 漆原氏は苦笑いしながら語る。

「イカサマシューターは200万円と高価なものなのですが、中国製ということもあり電力の消費は早いしすぐ故障する。故障は闇カジノ側としては死活問題になるので、日本製のシューターが作れないかと模索したこともありました。

 しかし、工場からシューターの発注数が少ないとあまりに巨額になってしまうと聞き、泣く泣く断念しました。中国製シューターはあまりに故障が多いし稼働時間が2時間ほどしかない、ということで最近は廃れてきているようです」

 故障がちで稼働時間も短いという中国製イカサマシューターに代わって、近年、導入が進んでいるのがカタツムリ型の新マシン(写真)だという。こちらも海外カジノで使用されていたもので、価格は1000万円以上と更に高価だが性能は段違いだ。

「この機械の特徴は簡単にイカサマが出来る“全自動シューター”になっているということです。準備はカタツムリにカードを入れるだけ。マシンがカードを全て読み込んでくれるので、勝敗を簡単にかつ自由自在に操れる。リモコンスイッチを押すだけでBANKERが勝つか、PLAYERが勝つかを変えることができる。旧マシンのように赤外線でカードを読んで、出るカードを一枚一枚入れ替えるというような手間もかかりません。

 カタツムリ型マシンはイカサマではない普通のカジノで使われているマシンと同じ形をしているので、お客さんも普通のマシンだと思って警戒感を持ちにくいというのも特徴です。闇カジノだけではなくオンラインカジノなどでも使用されています。

 これからは中国製の旧マシンではなく、このカタツムリ型マシンが闇カジノでも主流になっていくと思います」(漆原氏)

 カタツムリ型マシンは闇カジノだけではなく、オンラインカジノなどでも普及が始まっているという。日進月歩で進化を続けるイカサマのテクノロジー。テーブルの上のマシンを客はどこまで信用できるのか、という攻防が日夜続くことになるのである。

“職人”たちの「手仕事」

 マシンを使ったイカサマ以外にも、騙しのテクニックは様々ある。遠隔操作に頼らないアナログな技術も依然、闇カジノでは使用されているという。

 例えば客の目を盗んでディーラーがテーブル上でカードを入れ替えるというような初歩的イカサマもあるが、あまりにもリスクが高い。アナログ技術の中で、重要視されるのが緻密な職人技なのだという。

「私も闇カジノ業界に入ったばかりのころは、職人と呼ばれる人たちから『手仕事』と呼ばれるイカサマの技術を缶詰になって数週間訓練されたことがあります。こうした『手仕事』と呼ばれるイカサマの技術も韓国から流れてきたものが多いそうです」(漆原氏)

 バカラでは52枚で一組のトランプを1デッキ(セット)とすると、4~8デッキ使用しゲームが行われる。イカサマを行う場合は、その中の2デッキ(104枚)に「組みカード」と呼ばれる勝敗が判るようなトランプの並びを作り仕込んでおくのだ。組みカードのことは、「ポン」、または「具」と呼ぶ。ポンとは、イカサマの通称である「ポンコツ」から取った隠語であり、具は後述するヤキソバなどのテクニックから来ている。

「普通のトランプを組みカードに変えることを、闇カジノでは『ポン変え』と言うのが主流です。では、どのようにイカサマが始まったのを理解するのか。これは例え話ですが、組みカードの頭の並びの数字を決めておき、そこからはイカサマが始まりですよという合図を仕込んでおく。

 イカサマデッキ(ポン)が始まったらそこにも法則が仕込まれており、ディーラーはそれを覚えておく。あくまで法則の一例なのですが、例えばカードには背面が赤いカードと青いカードの2種類がある場合がある。そのデッキの中では、一番最初に赤いカードが出ればBANKERの勝ち、青いカードが出ればPLAYERが勝ち等の法則が決まっている組みカードになっているのです。

 法則にはいろいろなパターンがあります。この法則を『ローズ』と言うのですが、ディーラーや一部の従業員は覚えておく。例えばローズを勝たせたいサクラの客に教え、ターゲットとなるカモを負けるように誘導させるなどの手法が取られたりします。

 また、1枚を抜けば勝ち負けを逆転させることが出来るなどの方法もあり、ディーラーの手さばきでカードを抜き、ターゲットのベットとは逆の方を勝たせるという技術もあります。ポイントは信用できる人間だけにローズを教えるということです」(漆原氏)

「いまのバカラで行われることは絶対にないのですが…」

 凄い技術を持った人間になると、テーブル上でカードをシャッフルしながら「組みカード」を作るという技術を持つディーラーもいるという。

「いまのバカラで行われることは絶対にないのですが、新品のカードをテーブルに広げます。新品のカードは1から13の並びになっている。それをグチャグチャとシャッフルするのですが、シッャフルすることを隠語で『焼きそば』といいます。鉄板の上で焼きそばを焼くような感じなのでそう言うそうです(笑)。

 適当に混ぜているように見せかけながら、例えば7以上の『ハイカード』の塊と、7以下の『ローカード』の塊を作るのです。この塊を『具』といいます。この塊をまたシャッフルしながら、ハイカードとローカードを組み合わせていく。シャッフルする時に一枚一枚カードを思いのままに噛合わせていくという技術があるのです。

 そうした手法で組みカードをテーブル上で作ってしまう。こうした凄い職人もいます。これこそ修業を重ねて身につける技術です。現在は闇カジノも素人が多いので、こんなことを出来る人はほとんどいません」(漆原氏)

遠隔操作が使えない場合に重要になる「サクラの存在」

 バカラというゲームの構造は丁半博打と似ている。よく任侠映画などで丁に大きなベッド(賭け)があった場合、「半ないか。半ないか」と客を呼び込むシーンがある。これは賭けがイーブンではないと、差額が賭場の負担となるために客を呼び込むのだ。

 例えば丁に100万、半に50万を賭けるというアンバランスが起きた場合、丁が勝った際の100万円を支払う為には、半に賭けられた50万円+差額分の50万円が必要となる。つまり賭場は50万円持ち出しとなるのだ。闇カジノでバカラを行う場合も、店側は同じリスクを背負うことになる。

「特にバカラの場合はバランスが保ちにくいゲームなので、店側としてはイカサマを必要とするという側面が強いとも言えます。遠隔操作が使えない店の場合は、よりサクラの存在が重要になります。

 ターゲットを連れてくるジャンケット、もしくはターゲットの友人などは同じテーブルでゲームに興じるときは、サクラの役割を果たす。そこで店がLINEをサクラに送って勝敗を知らせる。

 サクラは『こっちに張ったほうがいいよ』とかターゲットを誘導する。ターゲットも親しい相手だと『わかった。一緒に勝負しよう』とベットして共に負ける訳です。でもサクラには、あとで闇カジノ側は金を返し取り分も渡すので痛くも痒くもない」(漆原氏)

最低でも200~300万円、客によっては4000~5000万円を…

 バカラで使用されるマシンや手仕事など様々なイカサマ。闇カジノ側が腐心するのが、いかにテーブルの上のゲームがイカサマではないと思わせるかの雰囲気づくりだ。適度に勝ちを入れてターゲットにギャンブルの快感を覚えさせて、時間をかけて吸い上げていく。最低でも200~300万円、客によっては4000~5000万円をイカサマで巻き上げるという場合もある。

「10億、20億円という例も普通にあります。例えばこの客は5000万円持ってきているというのが分かっているという場合。はじめは100万とか200万を勝たせる訳です。つまりシナリオを作って遊ばせる訳です。

 私たちはこの客はイライラさせたほうが多額のベットをするのか、または楽しいほうがベット額が大きくなるのかを観察しながら把握する。芸能人や女性をサクラとして入れてターゲットをおだて上げるという場合もある。

 エグイ店だと持ち金の5000万円以上を取りに行く。持ち金を超えた場合は『ボタ』という貸付も行います。ボタはその人間を借金でがんじがらめにするために行われます。

 例えば中小企業の社長さんなら借金が膨らみ、会社で数億の銀行借り入れを行い、また溶かしてしまうという例もあります。横領、着服、金が取れると踏んだらありとあらゆる形でしゃぶり尽くして行く訳です」(漆原氏)

表のカジノと闇カジノの“違い”は…

 巨額の金を溶かしてしまうバカラというゲーム。その狂乱はメディアでも度々、取り上げられてきた。大王製紙子会社7社から55億3000万円を借り入れて損害を与え、会社法の特別背任罪に問われた大王製紙元会長・井川意高氏のケースしかり。

「老舗家具メーカー経営者が賭博で味わう『敗北の味』」(週刊新潮 21年8月5日号)という記事では、光製作所の創業者である安岡光雄前会長が、イカサマバカラで12億円もの大敗を喫したと報じている。前者はラスベカスやマカオを舞台にした話であり、後者は日本の闇カジノで起きた事件である。表のカジノと闇カジノにはどのような違いがあるのだろうか。

「日本でもIRが導入される予定です。闇カジノを経営していた私が気になるのは、どのようなグループが日本に入ってくるのか、ということです。

 例えば韓国の会社が入ってくるとすると、イカサマシューターも手仕事も韓国から伝わってきた技術ですから『イカサマ対策は大丈夫か』と思う訳です。もしかしたらMGMグループは普通かもしれない、とか考えたり。カジノグループがどのような経営方針でやっているのかが気になりますよね。イカサマはどこのカジノでも起こり得る現実なのですから。

 闇カジノでも、イカサマが少ない店はある。表カジノでも、海外にあるような豪華なカジノ施設は儲ける必要がある。そこにイカサマが入り込む余地がある。IRを導入するということは、そんなグレーな文化を受け入れるということでもある。昔から『飲む、打つ、買う』と言うようにギャンブルはいつの時代も人間の欲望を刺激する。ぼったくり、イカサマ、美人局という犯罪がそれらにつき纏うように、欲望の裏側には常に闇がある。客はグレーだと頭のどこかで分かっていながらハマって行くのは、ギャンブルに何がしかのガス抜き効果があるからなのです……」(漆原氏)

 ギャンブルが抱える闇は果てしなく深い――。

写真・動画=赤石晋一郎

(赤石 晋一郎)

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