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日本人500万人が悩む「便失禁」…医師が教える「実際に効果があった7つの改善法」とは

文春オンライン / 2021年11月29日 6時0分

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便失禁を改善する「7つの方法」とは?©iStock.com

 快食・快便は健康のバロメーターだが、自分で排便をコントロールできなくなる病気がある。それが「便失禁」だ。医学的には「無意識または自分の意思に反して肛門から便がもれる状態」だと定義されている。

 便失禁に悩む人は全国に500万人はいるといわれ、決して珍しい病気ではない。しかしながら、恥ずかしさから人知れず悩み、外出を控えるなど、日常生活に支障を来す人も多い。

医師に取り合ってもらえず…

 50代前半から便失禁に悩んできたという原田貴美子さん(仮名・63歳)は「近所にある大腸肛門科を受診したのですが、まったく取り合ってもらえず、別のところも受診。けれども、しかたがないね、といわれて終わりました」と話す。

 それでも諦めきれなかった原田さんはネットで病院を検索し、ようやく便失禁を専門に治療している医師に巡り会うことができた。

「そのとき、いろいろ検査をしたのですが、原因ははっきりしませんでした。とりあえず、便の固さを整える薬と下痢止めを処方されましたが症状が改善せず、保険適用になったばかりの仙骨神経刺激療法という手術を受けました。これはお尻にペースメーカーを植え込んで、仙骨神経に電気刺激を与えるというもので、失禁の回数は格段に少なくなりました」

 原田さんが病院を受診したのは約7年前のことだが、専門医はいまでも増えているとはいえない。そんな状況を受け、地方だけでなく、遠くは海外からも患者が訪れるという亀田京橋クリニック・直腸肛門外来の高橋知子先生に便失禁の原因と治療法についてお話を伺った。

原因は老化だけじゃない…便失禁に悩む人の特徴とは?

 便失禁の原因として、もっとも多いのは「老化による肛門括約筋の衰え」だ。女性だと閉経後、男性だと70歳前後から増えてくるという。排便を調節している肛門括約筋と骨盤底筋は、手足の筋肉に比べてとても小さく筋肉が薄いため、老化の影響を受けやすいのだという。

 老化に次いで多いのが、「肛門括約筋が傷ついて起こる便失禁」である。女性の場合は、時に分娩で肛門括約筋まで切れることが原因となりうる。また、男性でも肛門の手術を受けた後に症状が現れることがある。

 直腸がんの手術では、直腸という便をためておく場所がなくなるため、便がストレートに出てしまい、もれやすくなることもある。がんの場所が肛門近くにある場合には、肛門を残すために肛門の筋肉の一部を切除することがあり、便がもれやすくなるという。

 さらに、神経の病気でも便失禁になることがある。たとえば、糖尿病。血糖値のコントロールが不良の状態で、経過が長い場合、末梢神経障害を発症することがあり、便失禁を生じることがある。

 また、分娩のときに神経の一時的な麻痺で便失禁になったり、婦人科系のガンなどでリンパ節の郭清をすると、お通じの感覚がわかりづらくなり、便がもれることもある。

 そのほか胆嚢の摘出や、腸の病気のために普段から便がゆるめな人も便失禁が生じやすい。また、先天性の障害で、肛門括約筋が形成されていない場合にも便失禁が起こりやすい。

「食事療法だけ」で70~80%の人が改善

 便失禁の治療として最初に行うのが「食事療法」である。

 亀田京橋クリニックの治療結果では、患者50人に栄養指導をしたところ、そのうち70~80%の人に改善が見られたという( Effects of Dietary Guidance without Dietary Fiber Supplements on the Symptoms, Quality of Life, and Dietary Intake in Patients with Fecal Incontinence )。便失禁に悩んでいる人は、一度、試してみるといいだろう。

 具体的な食事療法の中身は、次のようなものである。

(1)「便がゆるくなる食品」を減らす

 便がゆるくなる代表的な食品として、お酒、乳製品(牛乳、ヨーグルト)、お菓子、果物、ジュース、カフェインなどがあり、この中にはFODMAPも含まれる。

 FODMAPというのは、F(fermentable:発酵性の糖質)、O(oligosaccharides:オリゴ糖)、D(disaccharides:二糖類)、M(monosaccharides:単糖類)、And、P(polyols:糖アルコール)の頭文字を取ったもので、FODMAPの少ない食事をすると過敏性腸症候群の症状が軽減するといわれ、オーストラリアで提唱された。

 FODMAPの糖質は小腸で吸収されにくく、大腸まで下りてしまうと、大腸の液の濃度が高くなってしまうため、水で薄めようとして便がゆるくなってしまう。

 それを防ぐ食事療法として、このようなFODMAPを多く含む高FODMAP食品の摂取を減らすことを高橋先生のクリニックでは勧めている。ネットで調べると高FODMAPの食品について紹介されているので、参考にするといいだろう。

(2)米飯をしっかり摂る

 米飯のデンプンには、便をしっかりまとめてくれる働きがあるので、1日に2膳は食べるようにする。ただし、玄米はデンプンが少ないので、白米にしたほうがいい。

 また、飲酒量の多い人は夕食の食事量が少なくなりがちで、お菓子をたくさん食べる人はダイエットをしようと主食の量を減らしがち。いずれにしても米飯の摂取量が少なく、便をまとめる力が弱くなるので、しっかり白米を食べることが大切だ。

 米飯を十分量摂るようにすると、腹持ちが良くなり、お菓子や果物の摂取が自然と減るため高脂血症を改善する効果があり、コレステロールの高かった人が正常値になるという相乗効果が見られることもある。

(3)バランスのいい食事をする

 ご飯と主菜、野菜の入ったお味噌汁、野菜の和え物やサラダという、一汁三菜の組み合わせを意識すると自然と食事のバランスが良くなり、便失禁予防につながる。

 コンビニなどで買うお弁当は、おかずの量が多すぎるので、単品で買うのがオススメ。自宅からおにぎりだけ持っていき、おかずをコンビニで買ってもいいだろう。

 食事療法以外だと4つの改善法がある。

(4)お腹に力を入れるのをやめ、正しい姿勢を心がける

 便がもれやすい人は、肛門のまわりの筋肉が弱くなっている。そういう人がお腹に力を入れるともれてしまう。勢いよく立ったり座ったりする動作はお腹に力が入るので、避けたほうがいい。また、ベッドから起き上がるときもガバッと起きるのではなく、横向きになって静かに起きるようにするなど、普段の動作を見直すことが大切である。

 姿勢をまっすぐ保つのに必要な筋肉は、骨盤底筋、腹横筋、多裂筋、横隔膜である。正しい姿勢をするだけで、これらの筋肉を鍛えることができ、便失禁予防になる。椅子に座る場合も、腹部がまっすぐになるように姿勢を正すことがポイントだ。

 もし運動をするなら水泳がオススメ。浮力があるため、お腹に圧力が加わりにくい。

 また、ジョギングは地面に足が着いたときに、体重の何倍もの重力が骨盤底筋にかかってしまい、もれやすくなる。お腹を折り曲げないように走れば、もれにくくなるが、ジョギングでもれてしまうという人はフォームを見直したり、足腰の筋肉を強化してから始めるといいだろう。

(5)トイレではいきまないこと

 トイレではいきまないことが大切だ。いきむと肛門括約筋や骨盤底筋に負荷がかかってしまい、かえって便失禁を引き起こしてしまう。便の出にくい人は、足台を置いて手を斜め上にあげ、腹部を伸ばすようにして息をハーッと吐くと便が出やすくなる。

 足台を使うのは、お尻の穴の位置よりヒザを高くするためだという。そうすると、直腸と肛門の角度が鈍角になるので、いきまなくても自然と便が出るようになる。

(6)薬物療法を試してみる

 食事療法で便失禁が改善されないときは、薬物療法を行う。便の中の水分を吸収して軟らかい便を適度な固さに整える薬や下痢止めなどを処方する。

 外出時やスポーツ時に便失禁を防ぎたいという人には、ペリスティーンアナルプラグという装具を肛門内に挿入する方法もある。これはタンポンのようなもので、肛門にふたをすることで便もれを防ぐ。

 それ以外に、冒頭で紹介した原田さんが受けた仙骨神経刺激療法という手術を行うこともある。これは心臓のペースメーカーと同じ形の装置を臀部に埋め込み、リード線を介して排便にかかわる仙骨神経に微弱な電気刺激を与えて便失禁を改善するというもの。電流の強さを医師が調節するが、患者自身がリモコンで変えることもできる。ただし、これは最後の最後に行う治療法で、亀田京橋クリニックでは年に1回あるかどうかという頻度だという。

(7)肛門外科あるいは消化器外科を受診する

 日本では便失禁の診断・治療に関する歴史が浅く、1990年代後半から専門に扱う病院が出てきたという状況にある。そのため、いまだに便失禁の治療に当たる医師や医療機関は少ない。

 しかし、2017年に日本大腸肛門病学会が「便失禁診療ガイドライン」を刊行したことをきっかけに「便もれは治療できる病気」だという認識が医師の間でも広がりつつある。今後は便失禁を扱う専門医や医療機関も増えていくことだろう。

 便失禁で医療機関を受診する際、最寄りに病院が見あたらない場合には、大腸肛門機能障害研究会のホームページに 全国の専門病院リスト が掲載されているので、参考にしてほしい。

(佐久間 真弓)

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