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「この害虫どもは、それに値する制裁を加えてやらねば」松永太の残虐な犯行に遺族が訴えたこと

文春オンライン / 2021年11月30日 17時0分

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北九州監禁連続殺人事件をめぐる人物相関図

「遺体無き殺人事件」の発覚から1年4カ月後、6人の葬儀に集まった親族たちは… から続く

 起訴された案件だけで7人が死亡している「北九州監禁連続殺人事件」。

 もっとも凶悪な事件はなぜ起きたのか。新証言、新資料も含めて、発生当時から取材してきたノンフィクションライターが大きな“謎”を描く(連載第82回)。

純然たる被害者遺族・西浦家

 松永太と緒方純子に殺害された緒方一家6人のうち、緒方の妹の智恵子さん(仮名、以下同)の夫である緒方隆也さんは、西浦家から緒方家に婿入りしていた。

 緒方家の親族は、被害者遺族であると同時に、“血族”である緒方が犯行に及んでおり、加害者の親族でもあるという、相反する事情を抱えていた。しかし、西浦家の親族は、隆也さんが緒方家の娘と結婚したことで犯行に巻き込まれ、その結果、隆也さんやその子供たちの命を奪われてしまうという、純然たる被害者遺族だった。

 福岡地裁小倉支部で開かれた公判での検察側の論告書(以下、論告書)では、そんな隆也さんの遺族による〈処罰感情〉が明かされている。

●西浦A子(原文実名、以下同)の処罰感情

 

〈A子は、隆也の実母であるとともに、花奈(隆也さんの長女)及び佑介(同長男)の祖母でもあり、緒方一家が久留米の自宅からこつ然と失踪した後、約6年間にわたり、毎日欠かさず願を掛けつつ、隆也、智恵子、花奈及び佑介の元気な帰宅を心待ちにしていたものである。

 

 その後、A子は新聞報道等によって隆也が殺害されたことを知るに至るが、捜査段階においては、「私は、もし孝さん(緒方の父)と和美さん(緒方の母)が、隆也たち家族だけでも逃げられるようにしてくれれば、隆也たちは殺されずに済んだと思ってしまいます。緒方家の問題なのだから、隆也には関係ないはずなのにと思えてしまうのです。しかし、仮に孝さんたちが、隆也に逃げろと言ったとしても、隆也は、孝さんたちを見殺しにすることはできず、きっと、逃げなかったと思います。隆也はそういう子でした。人一倍優しく、人一倍芯の強い子でした。」などと、情に厚く、人を決して裏切らない、家族思いの隆也の性格を述べる反面、隆也には家族を見殺しにしてでも生き延びて欲しかったという、母としての隆也に対する切ない情愛を述べていた〉

息子が初任給で贈ってくれた形見の腕時計を身に着けて

 論告書はA子さんが法廷に出廷した際の様子についても触れる。

〈さらに、A子は、公判廷に、かつて隆也が初任給で贈ってくれたという形見の腕時計を身に着けて出廷した上、そのふつふつと沸き上がる激しい感情を抑えつつ、「隆也が殺された時の状況を知った時には、隆也が、どれ程苦しみ、堪え忍んでいたか、ただただ痛々しく身が震え怒りと憤りがこみ上げてきました。こんな地獄のような目にあうとは。犯人を憎んでも憎みきれません。将来の希望や目標を絶たれ、残忍な手口で生涯を終えさせられて、さぞかし無念だったと思います。隆也の心情を察すると、親として、胸が締め付けられる思いでした。私は、息子である隆也の死を、傍で看取ることもできませんでした。隆也、許して、ごめんなさい。私に息子、嫁、孫を返してください。平穏な笑顔で過ごせた毎日を、返してください。隆也たち家族は、もうこの世にはおりません。私の心の痛みは、一生癒されることはないでしょう。今は、気持ちを強く持つことを心掛け、隆也たちの想いを守って行くことだけが大切と思い、供養につとめることで、自分を慰めていこうと思っております。」などと、やり場のない怒りにさいなまれつつも、隆也らの思い出を胸に気丈に生きていこうと努力している母の心情を、切々と述べている〉

「極刑に処されることを強く望みます」

 さらにA子さんは、松永と緒方に対して望む処罰について語る。

〈その上で、A子は、被告人両名の処罰に関し、「多くの人々を巻き込んで苦しめているという事実を認識し、心から謝罪し、犯した罪の重さに苦しんで欲しいと思います。残虐行為を行ったことを、自ら認めることはもちろんです。被告人両名は、極悪非道で、類を見ない犯罪を犯したのですから、親の気持ちを察し、極刑にしてください。それでも、彼らの罪は償いきれるものではないと思いますが、極刑に処されることを強く望みます。」などと述べ、被告人両名の死刑判決を強く切望している〉

同じ母親として、せめて幼い佑介や花奈を助けられなかったのか

 また彼女には、緒方に対して強く伝えたいことがあった。

〈A子は、子を持つ同じ母親としての立場から、緒方に対し、「理由がどうあれ、自分の身を守るためだったとしても、幼い花奈、佑介を手にかけるのは、言語道断です。」「お腹を痛めた者どうしの、辛い思いは、お分かりになると思いますけど、どうして、同じぐらいの子供がいますのに、花奈、佑介ら子供を助けなかったのか。子供だけでもかばってあげられたらという気持ちがあります。また、新聞で読みましたが、花奈が、『話しません、何も言いませんから、西浦の家に帰してください。』と言ったと、そういう文章がありました。そのことについて、どうして、そう言ったときに、その子供の気持ちをどう感じられたのか、どう思われたのかということを、やはり感じております。」などと、せめて同じ母親として、被告人両名の2子と同世代の幼い佑介や花奈を助けられなかったのかと、強く訴えている〉

死を現実のものとして受け入れることは容易でない

●西浦Bの処罰感情

 

〈隆也の兄であるBは、隆也の死を悼むことはもちろんであるが、花奈と佑介はとてもかわいい子であったので、その2人が殺されてしまっているというのは、ある意味で弟である隆也の死以上に衝撃が大きかったと述べ、ましてや、花奈が緒方一家の殺害・解体に関与させられていた点については、当時小学生であった花奈には、到底克服できないような辛さであったろうと思いやっている。

 

 また、本件は、被告人両名が緒方一家の死体をすべて解体処分したことから、遺族は、被告人両名が検挙されたことで初めて、緒方一家が数年前に死んでいたことを知らされ、しかも、その遺品も遺体もすべて処分されていることから、遺体と対面することはもとより、遺骨を拾い、丁重に弔うこともいずれもなし得なくなっており、Bもまた、隆也らの死を現実のものとして受け入れることが容易でないこと、その意味でも被告人両名にはやり場のない怒りを感じていることを訴えているところである〉

 Bさんは松永と緒方への処罰について、次のように求めている。

〈Bは、松永に対する処罰としては、松永が今なお自分かわいさに不合理な弁解にしがみつき、裁判を長引かせていることに遺族としての悔しさを吐露し、松永には当然死刑を望むとし、もし可能ならば、隆也らが受けた扱いを松永にも同じように加え、その苦しみを思い知らせてやりたいとまで述べている。

 

 また、Bは、緒方についても、いかに緒方が自白しているとはいえ、緒方がその気になれば本件犯行を防ぐことができたのに、そうしなかった点で松永と同罪であるとし、やはり死刑を望むと証言している〉

「害虫どもは、それに値する制裁を」

●西浦Cの処罰感情

 

〈隆也の弟であるCは、その姪及び甥である花奈及び佑介の叔父としての立場から、自身にも同年代の娘があることと重ね合わせつつ、2人が殺されずに生きていれば、今ごろはさぞ可能性に富む人生を送り得ていたであろうに、被告人両名の犯行によりそれらの将来が無情にも摘み取られたことに対し、「この未来ある2人を殺害したことに対しては、親族として、どんなことがあろうと許すことはできません。」と、激しい怒りをあらわにしている。殊に、被告人両名が花奈に対し、殺人や死体解体を手伝わせたことについては、「私たちの気持ちの中で、考えれば考えるほど辛くなることは、最後まで生存していた花奈の状況を想像することです。(中略)私たちが想像する以上に凄惨な場面が繰り広げられ、大人でさえ耐え難き現実ではなかったのかと、今では思います。自分の親族が一人一人亡くなり、その処理を手伝わされるということは現世ではなく、絶対地獄であって、悪夢であったのではないかと思います。よく数箇月間も耐えた花奈の心情を考えますと、この害虫どもは、それに値する制裁を加えてやらねばという思いです。」と、正に首肯すべき心情を吐露している〉

 極めて厳しい言葉で松永と緒方を断罪するCさんは、以下の言葉で彼らへの処罰について訴えた。

〈Cは、被告人両名に対し、「松永、緒方両被告に対しては、絶対に死刑にしていただきたい。」とその処罰感情を証言し、特に松永については、「姑息で、狡猾で、卑怯極まりない松永に対しては人間ではない。あいつは、寄生虫であるとしか思えません。こういうくだらないやつらに対しても、裁判中はきちんと保護され、3度の食事を与えられ、寝床も与えられているということは、親族として許しがたい。(中略)こいつらが、この世の中に存在している限り、我々親族にとっては重荷を背負っていくことになり、その親族の中には子供たちもおり、この子供たちにとっても、心の傷は計り知れないものがあります。」と述べ、今に至るも自己の刑事責任回避のために、恥も外聞もなく不合理極まる弁解を述べることにばかり終始し、自己の罪と向き合わないばかりか、反省の情が微塵も見受けられない松永に対する怒りを率直に述べている〉

 緒方家と西浦家の遺族はともに、法廷で松永への強い怒りを全面的に表し、死刑を求めていた。また一方で、緒方家の遺族においては、その罪の重さを認めつつも、一部で血族である緒方に同情的な意見を寄せることもあったが、西浦家の遺族は、実行犯としての緒方の刑事責任の重さを端的に指摘し、彼女の死刑を求めている。

 いずれにせよ、親族6人の命が極めて残酷な方法で奪われ、とりわけ5歳と10歳の子供が巻き込まれたことへの憤りが、直截的に伝わってくる。

(第83回へ続く)

(小野 一光)

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