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節税でマンション投資をする人はなぜ“現金が嫌い”なのか  下落する価値と多額のローンが子供にのしかかる“恐ろしい未来”

文春オンライン / 2022年1月25日 6時0分

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©️iStock.com

 不動産価格はなかなか下がらないどころか、都心部はどんどん高くなる。新築マンション価格は都区内ではすでに8000万円台の大台に乗り、一般庶民には到底手の届かないものになってしまっている。

 こうした状況の背景には、国内外の投資家マネーが入っていること、パワーカップルと呼ばれる夫婦共働き世帯が、夫婦ダブルローンで背伸びしてでも買ってくるためなどいろいろ言われているが、実はマンション価格を釣り上げている大きなカテゴリーが、高齢富裕層による節税目的のマンション投資だ。

賃料保証が切れたアパートは“地獄の幕開け”

 また空き家戸数が全国で848万戸に及んでいるかたわら、住宅の新築着工戸数は年間で83万戸。人口が減少に向かい、高齢化が急速にすすむのに、そんなに家が足りないのか、これも不思議な現象だ。住宅着工が多いと聞くと、マンションや戸建て住宅の供給が多いように感じがちだが、実態は違う。着工戸数の約半数は貸家、つまりアパートである。アパート建設も相続税を節税したいという目的からさかんに行われている。

 マンション購入とアパート投資はいずれも不動産を使った節税目的が後押しをしている。一般庶民とは関係なく、日本の不動産マーケットはとにかく税金を少しでも安くしたいという歪んだ欲望のもとに成り立っているのである。

 アパート投資による節税は、節税だけに目的を絞り、需給バランスにほとんど目を向けなかったことから、競合が続々誕生する。テナントがつかなければ運用収入がなくなる。賃料保証がある期間は安心だが、保証期間が切れると地獄の幕開けである。

 アパートは賃貸マンションよりも安普請のものが多いため、大規模修繕や設備機器の劣化も早い。こうした工事関係も当初のアパート業者が仕切る。他社に頼めば、賃料保証は受けられなくなる。悪循環である。

相続する子供たちに未来はあるのか

 マーケットから放り出されたアパートは相続されたのちも子供たちがこれを引き継ぐことになる。資産性がある優良な賃貸資産であればよいが、田園地帯に佇む(相続されるころには)ややくたびれてしまったアパートを相続した子供たちの未来はどこにあるのだろう。借入金をなるべく多く調達すれば、節税効果はさらに増します、と言われていたはずだ。その借入金の元本は、あまり減ることなく子供たちに引き継がれている。

 貸した金返せよ、の声がリフレインする。だが返済原資であるはずのテナント賃料がままならない。「ぴえん」である。アパートも売却できればよいが、どうだろう。田園地帯の中にある、空き住戸の多いアパートを何の理由で買う投資家がいるというのだろうか。

 この頃になると金融機関も頭を抱えだす。担保であったはずの土地建物。評価額が下がってしまうと、貸し付けた元本の回収ができるのかどうかという懸念が持ち上がっているだろう。差し押さえたところで、やはりマーケットで売却できないならば、今度は金融機関が抱え込むよりほかに術がなくなる。「ぱおん」である。

 不動産業者は涼しいものだ。もう売却してしまったし、運用での手数料なんてしれたものだ。すでにその後に建設したアパートの営業に忙しく、新築物件にテナントを連れて行ってしまうなんていう悪辣な行為もお手のものだ。家賃保証もトリガーにかかれば簡単にはずすことができるからだ。

 結局相続した子供たちは親が残したパッとしないアパートと多額の借入金に悩まされ、潤沢に現金でも持っていない限り、せっかく親から譲り受けた土地を売却して返済するしかない。売却できなければ自己破産が待っている。良かれと思って始めた不動産投資が刃になって戻ってくるのがアパート相続対策の悲しい未来だ。

一方、タワマン節税は…

 タワマン節税もそんなにバラ色な未来が待っているわけではない。タワマン節税が本当にハッピーエンディングを迎えるためには、タワマンがこれからの未来どこまで価格を維持、値上りできるのかにかかっているからだ。

 すでに首都圏ではタワマンが900棟以上林立している。初めのころこそレアものだった超高層からの眺めも、たとえば豊洲エリアでは、せっかく眺望を買ったと言ってもよい高層階からの眺めも眼前に立ち上がった別のタワマンに塞がれてしまい、窓の外には他人の家、などと言う状態になっているマンションが多くなっている。

 マンションは新しさが命。続々立ち上がるタワマンの賞味期限は、未来において意外に短いのかもしれない。本来の不動産投資であれば、目の前に他物件が建ちそうだ、家賃はそろそろピークアウトしそうだ、ライバル物件が増えて価値が下がりそうだ、と判断すれば、その心配が現実化する前に売り抜けることができる。

 ところが相続対策が厄介なのは親が亡くなってくれないと、ミッションがコンプリートされないところにある。これでは売り時を失ってしまうのだ。

相続税を節税し、マンションを引き継いだとしても

 たとえば1億円で買ったタワマン。相続評価では簿価よりも安く評価される。土地は路線価評価、建物は固定資産税評価で計算されるため、相続時には簿価のおおよそ6割程度まで評価額は下がる。簿価との差額分4000万円の相続税率分だけ相続税を節税できるというのがポイントだ。さらに購入に際して評価額以上のローンを組んでいれば、評価額はローン分が控除されてゼロになり、実質相続税を払わなくて済む。こんなにうまい話はない。

 だが、相続が起こってこのマンションを引き継いだ子供たちの未来はどうなるだろう。相続後にマンション相場が2割下がってしまうと、節税できた分なんて吹っ飛んでしまうのだ。2割下がったとしても売却して借入金を返済できれば良いが、ローン返済ができなくなるケースも考えられる。いったい何のための相続対策だったのか、子供たちに暗く厳しい未来を残すことになるのである。

 子供たちが楽できるように考えて決断した対策が彼らの未来を苦しめる。何とも皮肉な結果であるが、これからの未来は、この失敗してしまった相続対策の犠牲となる「相続難民」が続出しそうである。こうしたピンチに陥った場合、最も有効なのはやはり現金を持っていることなのである。現金は相続時に額面通りの評価となってしまい、なんだか損をしたような気分になるが、実はそこが間違いなのだ。

「大きなテコは、自分の身を滅ぼす刃に替わる」

 いくら相続税の税率が高くとも、額面以上に税金をとられることはない。不動産は、一見すると低い評価額になることから、不動産にしておいた方が得のように思える。だが、そのように考える人は、なぜ不動産だと現金よりも低く評価してくれるのかに、考えが及んでいないのである。

 不動産は市況商品なのである。この先地価が上がるかもしれないが下がるかもしれない。だから下がった場合に備えて低く評価しているのである。土地とはいえ、天変地異が起こるかもしれない。現金は手にもって逃げることができるが不動産は動かすことができないのだ。建物にいたっては経年劣化する。劣化してしまう資産を現状での高い評価をつける訳にはまいらない。だから圧縮率も高いのだ。

 特に策を弄しすぎて身の丈に余る借入金を背負う。これが一番危険だ。借入金は事業をさらに推進、拡大するエンジンとしては極めて有効に機能するが、ただ節税するためだけに使うテコであるならば、大きなテコは、自分の身を滅ぼす刃に替わることを肝に銘じるべきであろう。

 無理したツケは必ず戻ってくる。節税不動産の未来は相続難民の時代の到来を意味しているのかもしれない。

(牧野 知弘)

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