「妊婦風俗嬢」が私に明かした本音と涙の理由

文春オンライン / 2018年1月14日 21時0分

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「わたしだって、本当はこんなことしたくないですよ……」

 28歳のリカ(仮名、以下同)は、取材の最中に突然そう口にすると、ポロポロと涙をこぼした。黒髪の清楚な顔立ちの彼女が着るインナーの腹部は、そこだけが目立ってぽっこりと膨らんでいる。

 妊娠7カ月の彼女は、1カ月前から都内の風俗店で働き始めた妊婦の風俗嬢だ。在籍する店は“妊婦”と、出産間もない“母乳ママ”を専門に扱っているデリヘルで、本番行為こそないが、それ以外のほとんどの性的サービスが行われている。

「この仕事への罪悪感はありますか?」

「戦場から風俗まで」というキャッチフレーズで国際紛争、大規模自然災害、殺人事件、風俗業界の取材を行ってきた私は、これまで20年以上、毎週1人の割合で風俗嬢の取材を続けている。リカへの取材もそのひとつで、店側には宣伝になるというメリットがあるからこそ実現したインタビューだった。

 聞き手である私が「この仕事への罪悪感はありますか?」との質問を投げかけたとき、これが初めての風俗勤務だという彼女の涙腺は決壊した。涙をぬぐいながらリカは続ける。

「でも、こうでもしないと、生活できないんですよ。うちの夫はまだ若いし、彼の給料だけじゃやっていけないし……」

 会社勤めの夫は3歳年下。入社年度が浅いこともあり、月給は手取りで20万円に届かず、派遣社員として販売員の仕事をしていたリカとの共稼ぎで、なんとか生活をやりくりしていたのだという。

「私も妊娠4カ月くらいまでは職場に隠して働いてました。だけどだんだんお腹が目立つようになってきたので、派遣会社に報告したんですね。そうしたら次の契約を打ち切られてしまったんです」

 それから妊娠していても働ける仕事を探したが、容易には見つからない。このままでは生活が破たんしてしまうと焦るリカに対して、ゆいいつ門戸が開かれていたのが、風俗店での仕事だったのだ。

「まさか自分が風俗の仕事をするなんて、これまで一度も考えたことはありませんでした。でも、背に腹は代えられないじゃないですか。迷いに迷ったすえ、知り合いに風俗をやってる子がいたんで、彼女に相談して、どうやってやればいいのかアドバイスを受けながら始めました」

 その知人が教えてくれたのは、「とにかくおカネのための仕事だと割り切って、なにも考えないこと」だった。

「あと、お客さんからいろいろ聞かれても、『あはは、よくわかんないです~』って、馬鹿な子のふりをして、とぼけろとも言われました。それで、夫にはチャットレディの仕事が見つかったと嘘をついて、働き始めたんです。電話で話をする仕事だから、勤務中は携帯がつながらないと説明できるし……」

 とはいえ、この仕事を始めるまでの男性経験は夫を含めて3人で、すべて付き合った相手だというリカにとって、見も知らぬ相手との性的なかかわりは、苦痛以外の何物でもなかったようだ。

「私ってすごく恥ずかしがりなんですね。だから見知らぬ相手の前で服を脱ぐだけでも、かなりの思い切りが必要でした。でも、仕事だからと自分に言い聞かせて耐えました。ただ、もう一つ辛いことがあって……」

 そこで彼女は、先の涙を流した質問についてみずから触れた。

「もう、夫に対する罪悪感がすごいんです。それに関しては、仕事をしてるあいだじゅう感じてますね」

 そんなリカだが、彼女が働く店のホームページでは、顔にモザイクをかけた下着姿の写真の脇に次のような文字が躍る。

〈☆完全業界未経験☆ 清楚なルックスで礼儀正しい正統派美人の新人妊婦【リカ】さんが入店しました! 細身のボディにDカップ! これはもう我慢できません。超スレンダーなボディに出るところもきっちり出たグラマラスさを兼ね備えたこれぞパーフェクトボディの妊婦さん! そして超綺麗な顔立ちに可愛さも兼ね備えてます!〉

 また、同店では働く女性にブログ日記の掲載を推奨しており、リカは某日にはこのような文章を書いている。

〈やほー、リカです。コスプレはどうなの? って聞かれたんだけどね。好奇心あるのでもちろんできますよー。自分でそーゆーの持ってないからやらないけど。常識範囲内で持ってきてくれたら、お腹が入れば着ますよ(笑)。体型って重要だからね。次回出勤予定は×月×日12:00~で、前日までの予約で出勤します〉

 ちなみに妊婦専門風俗店のプレイ料金は、入会金や指名料とは別に平均して60分で1万5000円から2万円、90分で2万5000円から3万円となっており、女性の取り分は基本的にその半分となる。

 風俗での仕事をいつまで続けるつもりか尋ねた私に対して、リカは言った。

「この仕事は出産費用とか、必要なおカネが貯まったらすぐに辞めるつもりです。出産後にまたやろうっていうのは、さすがにないと思います。やっぱり昼の普通の仕事がしたいですから……」

まったくの“素人”が働くようになった

 じつはリカのように、ほかに選択肢がないからと、風俗店で働く妊婦は少なくない。妊婦が在籍する風俗店があることに驚かれる方も多いと思うが、その種の店は実在するだけでなく、ここ数年はとくに店舗数を増やしている。それとともに、働く女性たちの数も格段に多くなったという実感がある。

 また、熟女・人妻を専門にした風俗店にくらべ、妊婦・母乳ママを売り物にしている風俗店は、在籍する女性の年齢が総じて若い。ホームページを見てみると、18歳から25歳までの女性が数多く働いていることがわかる。

 さらに妊婦風俗嬢といえば、以前は妊娠前に風俗経験のある女性の“復帰”がほとんどだったのだが、最近はリカのように、まったくの“素人”が働くようになっている。リカと同じ店に在籍していた19歳のアリサも、そうした“素人”のひとりだった。

「私と夫は親の反対を押し切って結婚しちゃったんですね。だから、両方とも実家に頼ることができないんです。もともと私は飲食店で働いてたんですけど、妊娠して仕事ができなくなって辞めました。それで妊娠していてもできる仕事を探そうとしましたけど、ほとんどないんですよ。ゆいいつ知り合いの紹介で、歩合制の営業の仕事があってやってみたんですけど、身重の体で移動だけでも辛いし、ぜんぜん契約が取れなくて、疲労で倒れちゃいました。

 それで1カ月くらい悩んだ末に、夫に内緒でこの仕事を始めたんです。お客さんから乱暴に扱われたりとか、本番を要求されたり、もう、毎日が嫌で嫌でたまらないんですけど、出産費用が貯まるまでの我慢だって自分に言い聞かせながら続けてます」

 リカにしろアリサにしろ、その背景には、妊娠期間中も働かなければ経済的にやっていけないという切実な事情がある。さらにいえば、妊娠した女性が働くための受け皿が社会に整っていないことも、そのことを後押ししている。次回は彼女たちが働く妊婦専門風俗店の実態について、詳らかにしていきたい。

(「 なぜ『妊婦風俗嬢』はここ数年で急増したのか 」に続く)

(小野 一光)

文春オンライン

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