「お断りの理由で最も多いのは鼻毛だが…」婚活アドバイザーが明かす、相談所の女性が譲れなかった意外な条件〈『ザ・ノンフィクション』密着〉
文春オンライン / 2024年6月22日 10時50分
婚活アドバイザーの植草美幸さん
結婚相談所「マリーミー」の代表を務める、婚活アドバイザーの植草美幸さん。
フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』「結婚したい彼と彼女の場合~令和の婚活漂流記2024~前編・後編」での密着でも注目された彼女に、会員へのアドバイス内容、結婚を望むものの結婚が難しい人たちの特徴などについて、話を聞いた。(全2回の1回目/ 続き を読む)
◆◆◆
育ち、仕事、学歴など、総合的に見てアドバイス
ーー相談に来られる方々のどこを見て、どうアドバイスします?
植草美幸(以下、植草) すべてです。点では見られない。恋愛じゃなくて、結婚ですから。恋愛なら「どんなタイプが好き?」で終わるんです。「かわいい子がいい」「イケメンがいい」「話が面白い人がいい」という、そういう部分的なところで済むんですよ。でも、結婚は夫婦での長い長い生活があるわけですから、総合的なところがマッチしないと難しい。その方のバックグラウンド、ここが一番大きいです。
入会されているから、ご本人たちの年齢、身長、体重、血液型、職業、年収、出身地、現在住んでいる場所、趣味、PR文などや、親御さんの状況等がデータとしてあるわけです。そこから、その方たちのバックグラウンドを聞き出します。どういうお育ちなのか、親御さんがどんな仕事をしていらして、ご本人がどんな学歴で、どんなお仕事で、年収がどのぐらいで、どんな生活をなさっているのか。そういった総合的なところを見ます。
ーーそこをヒアリングして、植草さんが「こちらでどうですか?」と。
植草 そうです。あとは、ご自分でシステムを使って申し込むこともしていただきます。それだけ成立が難しいのです。
容姿の問題で一番大きいのは清潔感
ーー生まれと育ちが近ければ、考え方や価値観も近づくわけですから、最初からそこを狙えばいいと思うのですが、そう簡単にはいかないと。
植草 文化が近いことが重要ですね。さらに、現在進行形の文化も似通っている人が一番いいんです。ただ、そこに容姿の条件がくっついてしまってる。あと、親御さんですね。
本人同士がいいなと思って、仮交際を経て真剣交際へ進むんです。その真剣交際に入る前に、私が「ちょっと待って。この方と真剣交際に入りたいとおっしゃっているけれども、学歴が違いすぎません?」とか「親御さんは喜んでくださるかしら」といった話をするわけです。そこで「あ、親には話してませんでした」みたいになると、親御さんが反対するケースもあります。私がこういう話をすると「お母さんと言ってることが一緒」なんて言われますけど。
ーーそこをクリアしても、今度は容姿の問題が出てくる。
植草 顔もそうですけど、体格や話し方とか。一番大きいのは、清潔感です。そこも千差万別で、「声が高すぎるから嫌」という人もいますからね。
その方の条件にピッタリの相手がいて、「こんな素晴らしい人、もう私は見つけられないわよ。この方と進めましょう。相手の方は真剣交際に行きたいっておっしゃってくださってますよ」と言ったんですけど、「年収も他の方たちよりも倍ぐらいで申し分ないんですけど、声が高くてダメなんです」と。
ーー“年収は高く、声は低い”が良かった。それは女性ですか。
植草 女性です。「なんで声が高い方がお嫌いなの?」と聞いたら、「前に付き合ってた彼氏の声が高くて嫌だった」とか。過去の出来事が原因になっていたんですね。
二次元の世界に囚われすぎて現実を見られない方も
ーー結婚や結婚相手に対する理想が高すぎるという話も聞きますが。
植草 アニメやドラマを見て、現実の世界とごちゃごちゃになっている方が40代以降で一定数いらっしゃいますね。「アレに出てくる、誰々って人が好きで」とおっしゃいます。
ーーそれ、どうにもできないじゃないですか。
植草 だから、「地上に降りてきて!」っていつも言うんです。「雲の上にいないで、地上に降りて。地上の世界を見てみて。電車に乗ってみて。右に座っている男性、何を着てる? 前に座っている男性は、どんな顔をしていて、どんな体型か見てみて」と話します。
でも、ちっとも見ないんです。電車でもどこでも、スマホを見ちゃっているので。スマホに集中しているせいで五感が鈍くなって、人間というものがどんなものだったか把握できなくなっているんです。
ーー大変ですね。
植草 だから、「会社の人たちもよく見てね」とも言うんです。電車と違って、会社だったら対面して仕事をしなきゃいけませんから、どうしたって目に入るじゃないですか。「会社の人が50代でも、おじさんとは思わないで。あなたと同じで、年相応の方じゃないですか」といったことを具体的かつ理論的に、伝えていくんです。
プライドを傷つけずにお断りの理由を伝えるには…
女性は「おじさん」ってよくおっしゃいます。ご自分が40歳だとしますよね。それで45歳の男性と会いますよね。すると、ご自分の40歳はどこかへ行っちゃって、「すっごいおじさんでした」と言ってしまう。
男性もそうですよ。「すっごいおばさんが出てきた」とか。その都度、私が「それ失礼ですよ。そんなあなたは何歳ですか?」って返しますけど。
ーー断られた理由を伝えるのも難しそうですね。
植草 「お相手は、こういうお気持ちなのよ」とか、「こういったことを求めてます」というのは言い続けなきゃいけないですよね。だって、ピッタリはまるのは相手あってのことじゃないですか。相手が求めるものはこういうことだと言い続けて、そこで気づきを持ってもらうしかないんです。
みなさん、お見合いをしていてもフラれていくわけですから。何回も、何十回も会っていくんです。最高で200回ぐらい、お見合いしている方もいます。そのなかで、お断りの理由を告げて、気付いてもらって、次に向かうんです。
だけど、「臭かったそうです」「歯が汚かったそうです」「感じが悪かったそうです」とストレートに伝えるとプライドが傷つくだけなので、そこは上手に伝えています。
ーーそのあたり、言い換えできますか。
植草 「これはダメ」と叩きつけるだけだと、シュンとなっちゃって、自信も喪失するし、気分も良くないですよね。だから褒めを入れたり、アドバイスをしたり、その繰り返しです。
「若く見えている」と思っているだけではダメ
ーーお断りの理由で最も多いのは。
植草 鼻毛。「束で出てました。7本」など、お見合いをした女性に言われます。
ーーさすがに束で出されたら、黙ってはいられないですね。そういう方を変えることは難しい?
植草 教えれば、あっという間に変わります。「もったいないな。服を変えれば、違うのに」ということも多いですし。あとは、清潔感を出してあげれば、ずいぶん変わります。
皆さん、今はツルツルのお肌が大好き。感覚までバーチャルになっちゃっているから。鼻毛以外にも、ヒゲの剃り残しがあったとか、眉毛が繋がっていたとかも、気にされますよ。
ーー身だしなみに気をつけている会員の方は多いのでしょうか。
植草 自分が若く見えていると勘違いしてしまっている30代、40代の方はいますね。でも、これは周囲がそうさせちゃうんですよ。女性が同じ職場でずっと長く働いていると、後輩しかいなくなって、若い男性たちが「先輩、若いですよ」なんて言ってしまったりするので、勘違いしてしまう。
若く見えていると思っているだけではダメで、本当に若く見せないと。30代、40代になって結婚するということは、並大抵の努力では難しいわけです。だけど、ここに来たら奇跡のようにすぐ結婚できると思っている方もいらっしゃるので。会社では仕事ができればうまくいくことが多いけれど、婚活はそうじゃない。
男性の場合、婚活のためにダイエットや薄毛治療に励む
ーーそういう方にも植草さんがアドバイスを。
植草 私が担当するコースを選ぶ方は、切実な思いを抱えている状態なので、会った瞬間に「私のどこを直せばいいですか?」とご自身から聞いてこられます。そこで「じゃあ、メイクをレッスンをしましょうか」「お洋服をもうちょっと明るい色にしましょうか」となるんですね。外見以外でも、話し方が単調だったり、きつく聞こえるようだったら、「すこし語尾を上げて話してみませんか」と言って直してもらう。
マリーミーは美容室もあり、メイク指導をする先生もいますので、何回もレッスンして、それで自分でもできるようになってもらえばいいんです
ーー男性の場合もメイクやヘアスタイルは大事ですか。
植草 30代ぐらいの方は、髪の毛が薄くなってくると早いうちにAGAのクリニックに行かれますね。「やっぱり髪が薄くなってきたのも問題だと思う」なんて、お見合いがうまくいかないことの原因が髪の毛にもあるとご自身で気付かれたりして。
なかには、「クリニックに通っている間はちゃんと生えてこないから、きちんと生え揃うまでお見合いは止めます」と言う方もいます。
体の大きな人は、軒並みダイエットされますね。100キロ超えの方もいらっしゃいますけど、適正体重まで減量してくださる方もいます。
以前に170センチで102キロの方がおられて、「こちらにいらっしゃる前に、結婚相談所で活動されていましたか?」と聞いたら、「はい、3カ所で活動していました」とおっしゃるわけですよ。
100キロ超えなんて見ればわかるし、それが婚活にマイナスなことはすぐにわかるわけですが、これまでお世話になっていた相談所さんでは、どうして教えてあげなかったのかと感じ、気の毒にも思います。だから「痩せましょう。70キロになれば、お見合いできます」と背中を押しました。
団塊ジュニア世代が抱える問題は「子供」
ーー団塊ジュニアの会員は増えていますか? 49歳から52歳あたりですから、昭和の結婚観、家庭観が染み付いている一方で、それらの崩壊も目にしている。過渡期にいるけど、若くもないから戸惑っているといいますか。ある意味、植草さんにとって強敵の世代では。
植草 たしかに難しいですが、お見合い相手を見つけられるかに関しては、まず外見を直してしまえば半分は何とかなるんです。残りの問題は、子供なんですね。たとえば、53歳の男性で「子供が2人ほしい」となると、女性の年齢に制限が出てきますから。団塊ジュニアは、ここが大変なんです。
ーー50歳を過ぎても子供を望む。
植草 年齢的に制限があるから「20代から30代なかばまでの女性が希望です」などとおっしゃるんですよ。55歳の人が。それって、非現実的じゃないですか。希望する年齢の女性の親御さんより、男性のほうが年上の場合があるわけです。だから、それを理解してもらうのが大変ですね。
婚活アドバイザーは“お母さん以上”の存在
ーー子供の問題を外して、年齢の制限も上げれば、50歳の男性でも可能性はあるものですか。たとえば、希望する女性の年齢を40歳にするとか。
植草 50歳の男性でももちろん可能性はあります。これまで何人も成婚されています。おっしゃるように、50歳の男性が40歳の女性を希望するなら大丈夫です。でも、男性の年収次第ですね。資産がどれくらいあるかも重要になりますし。また50歳の男性が年齢以外に求めるものにもよります。女性の年収にまでこだわったり、きれいな人がいいとか、いろいろな希望が出てくると一気に難しくなってきます。
ーーお話を伺っていて、改めて大変そうだなと。「私、お母さんじゃないんだけど」と思ってしまうことってないですか?
植草 「お母さんじゃないんだけど」なんて思っていたら、この仕事はできないです。だって、お母様が結婚させてあげられない場合にこちらにいらっしゃるのですから、ある意味お母様以上に親身になることも必要です。私は、目の前にいる会員さんをまず大好きになります。お客さんだなんて思っていたら親身になれないですよ。言いたいことも言えなくなってしまいます。
よく会員さんが「お母さんも言ってくれなかった」とおっしゃってくれるんです。「こういったことは、お母さんも教えてくれなかった。ありがとうございます」「母がこれを言ってくれていれば私は20代で結婚できてました」なんて言ってくださいます。
写真=平松市聖/文藝春秋
〈 「年収500万円の人が年収3000万円の人に申し込んで…」「女子大生も入会している」“伝説の婚活アドバイザー”が語る、結婚したい人の根本的な勘違い 〉へ続く
(平田 裕介)
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