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「年収500万円の人が年収3000万円の人に申し込んで…」「女子大生も入会している」“伝説の婚活アドバイザー”が語る、結婚したい人の根本的な勘違い

文春オンライン / 2024年6月22日 10時50分

「年収500万円の人が年収3000万円の人に申し込んで…」「女子大生も入会している」“伝説の婚活アドバイザー”が語る、結婚したい人の根本的な勘違い

婚活アドバイザーの植草美幸さん

〈 「お断りの理由で最も多いのは鼻毛だが…」婚活アドバイザーが明かす、相談所の女性が譲れなかった意外な条件〈『ザ・ノンフィクション』密着〉 〉から続く

 結婚相談所「マリーミー」の代表を務める、婚活アドバイザーの植草美幸さん。

 フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』「結婚したい彼と彼女の場合~令和の婚活漂流記2024~前編・後編」での密着でも注目された彼女に、婚活アドバイザーとなるまでの経緯、男女の結婚観の変容などについて、話を聞いた。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

“人と企業”を結ぶ仕事から“人と人”を結ぶ仕事へ

ーー婚活アドバイザーをする前は、アパレル業をされていたそうですね。

植草美幸(以下、植草) 2008年にリーマンショックが起きるまで、アパレルの事業をしていました。お店を25店舗運営しておりまして、販売員が150人から200人ぐらいいて。あとは販売員を指導する講師、デザイナー、パタンナー、生産管理などを全国のアパレル企業に派遣していました。

ーーどれくらい続けていたのですか。

植草 15年ぐらいです。リーマンショックの時に、派遣していた方たちが戻ってきちゃったんですよ。いわゆる“派遣切り”です。自分の会社の販売員さん達も余ったのですから、派遣スタッフなど置いておけないという状況だったのでしょう。25店舗あったお店も、どんどん減っていって15店舗ぐらいになって。これは完全に時代が変わってきたなと、でも何をやればいいかなと。

ーーで、結婚相談業を。

植草 それまでは人と企業を結ぶ仕事をしていたけれど、人と人を結ぶ仕事をやろうと。でも、わりと似ているようなところもあるということに気付いて。

 それと、私の母が数十年前に仲人をしていたんです。業にしていたというわけではなく、父が経営していた会社の社員の仲人を務めたんですよ。独身の社員が30人くらいいて、全員を1年間で結婚させたんです。そんな母の姿を小さい頃に見ていたから、潜在的に影響みたいなものを受けていたのでしょうね。

 それで、アパレル以外の事業を考えて、老人ホーム、保育園、結婚相談業の3つが候補として社内で挙がって。各々の事業計画を立ててみると、開業までに相当な年月がかかったり、投資金額が膨大だったりしたのですが、あるスタッフが「そういえば社長は、これまでたくさんの人の結婚のお世話をなさってますよね?」と言ったのです。

学生時代から数々のカップルを成立させてきた

ーー母親の仲介の手腕を見て、潜在的に影響みたいなものを受けていたと。それもあって、自分でもできるとも思ったところも?

植草 高校生の頃から、私もいろんな方たちをマッチングさせてきたんです。だから、私としても出来るかもしれないと。ですからアパレルと人材派遣はひとまず他のスタッフにやってもらうことにして、私だけで婚活事業をスタートさせたんです。

ーー高校生の頃からマッチング。

植草 同じ校内でカップルを成立させていました。私は理系の進学校に進んで、男の子がすごく多かったんです。でも、私には姉、兄、弟がいて、兄と弟に挟まれていたものですから、男性にまったく抵抗感とか違和感を抱いてなかったんです。だけど、一人っ子や姉妹だけで育った友達になると、なかなか男の子に声をかけられないってことが多くて。

 そういう子たちから「誰々君が好きなんだけど」なんて言われるわけですよ。私は普通に男の子たちと一緒にご飯を食べたりして仲良くしていたので、「わかった。じゃ、聞いてみるね」と答えて、その子と誰々君に「明日の何時何分に図書館で集合ね」と伝えてセッティングするんです。

ーーカップル成立の確率は、高かったのですか?

植草 大体、カップルになっていましたね。でも、さすがに高校生の頃は何十人もやったわけじゃないですから。

 社会人になっても、お世話好きは続くのです。私は若い頃からずっとアパレル業界にいたのですが、色々なセミナーや勉強会に行ったりすると、同席している人たちがいますよね。そういう人たちを、私が勝手にマッチングしちゃったりとか。若い頃に販売指導の講義を聞きに行ったら、そこに集まった人たちは結構年齢差があったんです。でも、そこでもマッチングしていました。

仲人の存在がなくなり、結婚相談業に変化が

ーーお母さん以上に、そういう才能を持っていた。

植草 どうでしょうかね。業としてそろそろ16年目に入るので、そうなると自分の直感は当然のことで、何千人・何万回のカウンセリングを続けてきて、実際に結婚するバックグラウンドが時代背景でも大きく変わるということを把握していますから。それを活かして、カウンセリングをしています。

ーー時代というと、昔は仲人の存在が当たり前でしたが、現在はそれが結婚相談業に代わったわけですよね。

植草 私がこの業界に入った頃は、もうちょっと町の仲人さんが残っていらしたんですけど、今はほとんど存在されず、人づてに縁談が持ち込まれるということもなくなったでしょうね。その代わり、結婚相談所の連盟が使うシステムで何万人という人を見たり、選んだり、選ばれたり、ができるようになっているんですね。

 要するに非常にシステマティックになっているんです。ですが、自分で申し込んだり、誰かから申し込まれるだけでアドバイスをする人がいないと、極めて一部の人しかマッチングしない。

誰かしらの手が入らないと、マッチングすら難しい時代に

ーー希望が噛み合わないからマッチングしない?

植草 たとえば30歳の女性が情報をアップしたら、50代、60代の男性からも申し込みがくるわけです。女性は望んでいないのに、男性は年齢差があってもマッチングできると思っている。

 また経済面の話になると、女性が32歳で年収500万円の場合、30歳の年収3000万円の男性に申し込んでも難しいですよね。こんなふうにご自分でいくら申し込んでも、お相手が非現実的だと成立しないんです。「申し込まれても、いい人がいない」と皆さんよくおっしゃるんですけど、それって自分が望んでいる人と当たらないということなんです。ですから、やっぱり誰かしらの手が入らないと、マッチングすら難しいです。

リーマンショックの影響で男性の申し込みが減少

ーー申し込みの男女比などで、時代を反映した変化などはありますか。

植草 私が始めた頃は、まだ男性のほうがちょっと多いかなというぐらいだったんです。ただ2008年のリーマンショックから半年ぐらい経って、2009年あたりから徐々に女性のほうが増えてきて、今は女性のほうが多いです。

ーーそれはどう見ています?

植草 やっぱり、経済ですね。リーマンショックの時って、皆さん職を失ったりとかいろいろあったわけですよ。それで自信が持てなくなった。男性が女性を養っていこうとか、子供を育てようとか、そういった自信がなくなってきたわけです。

 本来は男性1人で稼ぐ必要なんてないんだから、そんなに気負わなくてもいいんですけれども、やっぱり男性は親御さんから「男なんだから」「男だったら」と言われて育ってきているところがあると思うんです。

 それで「自分が女性よりも稼がなきゃ」といった意識があったけど、リーマンショックで自信がなくなってしまった。そのまま経済も低迷していますから、男性はそれまでのような感覚で結婚に向き合えなくなって男性の申し込みが減っていったんですね。

ーー女性の増加も、経済的な背景が。

植草 女性は安定志向なところがありますからね。でも、男性はそれを受け入れづらい時代になっていて、男性のほうが女性に求めるものが大きく変わっています。いまは男性も女性に対して、頼りがいを求めるようになったんですよね。

社内恋愛がなくなり、出会いや結婚のチャンスがなくなった

ーー「男らしさ」「男たるもの」を捨てることができて、ある意味で健全な世の中になった気がしますね。

植草 そうだと思います。やっと、本来あるべき姿になったかなと。

 先ほどもお話しましたが、やはり親御さんの影響も大きいんです。30代ぐらいの男性の親御さんだと専業主婦の時代でしたから、働いていないとその考えがお子さんにも伝わってしまいますよね。「ママの時代はね」と、いろいろおっしゃってしまう。

 本来あるべき姿になったけれど、その一方で難しくもなっているんです。男性も女性も、「夫婦で働いて、家事も育児も一緒にやろうね」という感覚なのに、そこへ親御さんが入り込んで「なんで、奥さんがご飯を作らないの?」とおっしゃるわけです。一方、女性の親御さんは「なんであなたの旦那さんは養えないの?」とおっしゃったりする。これがものすごく入り混じっていて、非常に難しいです。

ーー過渡期ですね。

植草 昭和の時代は、お見合い結婚が多かったんです。その後、自分たちで自由に恋愛するようになったことで、自分をプロデュースしなきゃいけなくなってしまったのです。今は、結婚にあたって各自が自己プロデュースする時代になりました。

 先ほどもお話しましたけれど、町の仲人さんがいなくなられただけでなく、親御さんが子供の結婚に口を出されなくなったこともあります。

 昔は、親同士が仲が良くて子供同士を紹介しあったり、ご近所の人が「お宅のお嬢さん、そろそろ年頃よね」といって親切な人が誰かを連れて来てくれたりといったことがありました。ですが、今は女性もどんどん社会進出していますし、たとえば社内で上司がそんなことを言ったら大事になりますから、昔のように親切な人はいなくなってしまいました。

ーーハラスメントになってしまうこともある。

植草 「誰々君なんかいいんじゃないの?」なんて言った日には、「パワハラじゃないですか!」「セクハラじゃないですか!」となるので社内恋愛も滅多にないわけです。当然、社内結婚もほとんどない。

 昔は会社自体が社内結婚を推進していましたから、「早く結婚すると安定するよね」ということで、親切な上司が「この人、どうなの?」とかってやってくれていたんです。それがなくなったので、出会うチャンス、結婚するチャンスもなくなってしまった。

親が子供に過干渉になる一番の問題は…

ーー親御さんの思考や価値観の背景には、何があると思いますか?

植草 日本の場合は、教育にも問題がありますね。いい学校に入れば、いい大学に入れば、一流の会社に就職できるという考えが根本にあるわけです。そのためには、「どこどこの中学や高校に入って、どこどこの大学に入りなさい」となるので、中学受験をする子は小学校4年生の3学期頃から塾に通います。そうなると、うちの子供は勉強さえしてくれればいいと。

 これがスポーツだと、野球だけやっていればいい、サッカーだけやってくれればいいとなって、お弁当を持って送り迎えみたいな、応援という過干渉になるんです。小さい時からかかわり過ぎなんですよね。

 それでいて、いい大学に向けて勉強さえしていれば「家事? それなあに?」という感じで、子供に家事もさせないわけです。何でも親がやってしまう。

ーー中学受験も激化して、そういう親と子がさらに増えていそうですね。

植草 だいぶ前から増えています。でも、やっと最近になって、男性でも料理教室に行く方が目立ってきました。ご自分でお買い物に行って、お野菜も買うし、お魚とかお肉も買うし、そういうものを買って作って安く上げる。これはコロナ禍が背景にあるんですけど、外出をしなくなったのでお料理をするようになったんです。

「恋愛をしないで結婚したい」という方が結婚相談所へやってくる

ーーこれは感覚で構わないのですが、結婚したがっている人は増えていますか?

植草 ここには「本気で結婚したい」と思っている人しかいらっしゃいませんが……結婚できない人が増えているとは思います。20代だと結婚したいと思っている人が増えているかもしれないですね。学生さんなどに聞くと、「結婚したい」「将来はできるだろう」といった回答が多くて。だけど、いったん社会に出ると「仕事が忙しい」「出会いがない」となって、そのまま40代になり、50代になっていく。

ーーその予防線を張るために、結婚相談所を利用する若い世代の方もいる。

植草 学生さんもいらっしゃいますよ。男性の場合は収入がないと入れませんが、女性ならいらっしゃいます。

ーー早い気もしますが。

植草 医学部の学生さんは、卒業され医師免許を取得されたら5年間研修されますよね。その間は激務になるわけです。大学生である間に学生同士でマッチングする方もいらっしゃるようですが、そこを逃して医師になられると、激務になり婚活も難しくなるであろうということでいらっしゃる方もいます。文系の女性でも、4年生の4月になって就職先は決まったので、次は婚活だと。そして卒業前に結婚していたいという人もいます。

 だけど、それって自分で探せないということなんですよ。恋愛していない人たち、恋愛経験が少ない人たちがものすごく増えているので、恋愛をしないで結婚したいという若い世代の方たちもいらっしゃいます。

結婚式や入籍が結婚ではない

ーー“恋愛をしないで結婚したい人たち”の結婚したい理由も、やはり「安定」になるのですか。

植草 男女共に結婚したい理由を聞くと、「子供が欲しい」と。あとは、「大人になったら結婚するんだ」という潜在意識。小さい頃からずっと親御さんを見てきて、「大人になったらお父さんとお母さんみたいになるんだ」と刷り込みがされている。

 でも、皆さんが思う「結婚」って、結婚式か入籍日などの点なのです。本当はその先にある長い長い50年60年におよぶ結婚生活が結婚なんですけど、それがわかってらっしゃらないのでなかなか難しい。

未来予想図を具現化してくれる人が結婚相手

ーー植草さんは、そこを指摘するのですか。

植草 「どんな人と結婚したいですか?」という聞き方より、「どんな結婚生活を送りたいですか?」とお聞きしています。

ーー結婚式や入籍が、結婚だと考えている人が多いと。たしかに、その後が結婚ですし、大変なわけですよね。

植草 恋愛結婚は、好きになってからお付き合いしますよね。こちらでは、結婚したいから活動するわけです。“好きだから付き合う”を飛ばした状態なので、いつぐらいに結婚したいかを、自問自答してもらう。

 この後どうやって生きていきたいか、仕事をどうしていきたいか、子供をいつぐらいに持ちたいか。そういう未来予想図を引いてもらって、手をつないで一緒にそれらを具現してくれる人が結婚相手です、と言っています。そのお相手を探し、未来予想図が合うかを二人三脚で見極めていくのが業務の中心になります。

 写真=平松市聖/文藝春秋

植草美幸
東京・青山の結婚相談所マリーミー代表
https://marrymeweb.com/

(平田 裕介)

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