開業医の既得権が財政を蝕んでいる。医師の受診不要の「リフィル処方箋」を活用せよ
文春オンライン / 2024年7月3日 6時0分
![開業医の既得権が財政を蝕んでいる。医師の受診不要の「リフィル処方箋」を活用せよ](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_71298_0-small.jpg)
岸田首相 ©時事通信社
「リフィル処方箋のさらなる普及・拡大について、総理から御指示もいただきました。しかし、その後調べてみますと、2021年末に行った医師を対象とした調査では言葉自体を知らないと答えた医師が何と43%に上るそうです。その後、少しは改善されているかと思いますが、実際に私の周辺にも、医師がその内容をよく知らないことを理由としてリフィル処方箋の発行を断られたという人が複数おります」
6月6日、岸田文雄首相が出席した「デジタル行財政改革会議」でそう訴えたのは、中室牧子慶応義塾大学教授だ。リフィル処方箋とは、医師の診断を受けずとも一定期間、使うことのできる処方箋のことで、2022年の診療報酬改定で導入された。4月22日のデジタル行財政改革会議でも、岸田首相が「リフィル処方の普及策を具体化してください」と武見敬三厚労大臣に指示を出した。つまり“首相肝いり”の重要政策でもあるのだ。
国民医療費が兆円規模で削減できる
〈リフィルが日本の医療を変える。大きな既得権を打破できる。そして社会構造を変える〉
「文藝春秋」7月号でリフィル処方箋普及の意義について綴ったのは「憂国グループ2040」。学者やエコノミストのほか官僚も加わり、日本の社会や経済問題について研究を重ねてきた有志のグループである。
ではリフィルが普及すれば、どんなメリットがあるのか。
憂国グループ2040がリフィルの活用に最適だと指摘したひとつは花粉症だ。
〈花粉症のように、毎年同じ時期に、同じ原因で、同じ症状が出るのであれば、患者自身の判断で同じ薬を服用すれば事足りる。命にかかわることもないし、改めて薬のことが知りたければ薬局で話を聞けば十分だ。医師の判断を聞くまでもない〉
〈診療所に薬をもらいに行くだけの受診行動が変われば、無駄な受診が減り、時間の節約になる〉
花粉症だけではない。痛風など、一回、医師の診断を受ければ、あとは薬をもらうだけの受診で済むような病気はすべてリフィルが適用になる。そして話は家計にとどまらない、このリフィルが普及すれば、右肩上がりを続け、いまや約48兆円にのぼる国民医療費の削減にもつながるのだ。
〈毎月、診療所に通って痛風の薬をもらっているメンバーは、薬代のほかに、診療所で毎月約4000円の医療費を払っている。自己負担は1200円だ。年間だと医療費約5万円、自己負担は1万5000円となる。これを仮に年2回の通院で済ませることが出来れば、年間8000円、自己負担は2400円に抑えられる。家計にとっても大きい。そして国民全体で行われれば国民医療費は兆円規模で削減される〉
普及すると誰が困るのか
良いことづくめのように思えるリフィル処方箋だが、現在、処方箋全体に占める割合はわずか0.05%だ。憂国グループ2040も〈そんな制度、現時点では存在していないのと同じである〉と指摘する。なぜ普及していないのか。
〈(花粉症や痛風の)患者が、通常訪れるのは近くの診療所(クリニック)だ。もしリフィルが普及すれば、薬をもらいにくるだけの患者は減ることになる。その結果、診療所の医師にとっては、(中略)手間のかからない楽な患者が減ることによって収入が減ってしまう。経営問題になるのだ。我々は、このデメリットが診療所にとって大きく、医師が普及を拒んでいるのではないかと推測している〉
医療機関がリフィル処方箋を使わなくとも法的な問題はなく、現実にリフィルを拒む運動をしている医療団体もある。医療団体の反対によってリフィル処方箋が普及していないのであれば、医師の収入という既得権によって患者の利益が阻害されている格好だ。
憂国グループ2040は、開業医の利益を代表すると言われる日本医師会に対しても苦言を呈する。
〈日本医師会は、前会長だった中川俊男氏が、安易にリフィルの導入を認めたことで会員の総スカンを食って退任に追い込まれたという報道もあるくらいだから、抵抗勢力なのだろう〉
そうした中で、今後は、患者の側こそが変わる必要がある。一人ひとりが「リフィルをお願いします」と希望するようになれば、医療機関側の対応も変わり、普及率は上がっていくだろう。
憂国グループ2040がリフィル処方箋推進の意義や、開業医の問題点を指摘した「 開業医の既得権を打破せよ 」は「文藝春秋」7月号及び「 文藝春秋 電子版 」に掲載されている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年7月号)
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