1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

売上2兆円、ドン・キホーテ創業者が「日本経済を決定的にダメにした」と断言する“A級戦犯”とは?

文春オンライン / 2024年6月26日 6時0分

売上2兆円、ドン・キホーテ創業者が「日本経済を決定的にダメにした」と断言する“A級戦犯”とは?

©時事通信社

 34期連続で増収増益を成し遂げ、売上2兆円のドン・キホーテ。無一文から日本を代表する創業経営者へ――そんな大成功の裏には「運」の存在があった。

 ここでは、ドン・キホーテ創業者・安田隆夫氏の新刊『 運 』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。安田氏は「運には2種類ある」と提唱する。個人にまつわる「個運」、そして会社や組織にまつわる「集団運」。この2つを徹底的に磨き上げることで現在の地位を確立したという。カリスマ経営者が生涯をかけて学んだ、人生とビジネスにおける「勝利の法則」とは?(全2回の1回目/ 続き を読む)

◆◆◆

 私はこれまで、「戦略や戦術を語る前に、まずは戦闘モードを全開にせよ」と、口を酸っぱくして現場に、戦う姿勢の重要性を唱えてきた(いまだに唱え続けている)。

 私が嫌いなのは、戦略や戦術をごちゃごちゃ言うわりに、実際には戦闘をしないタイプの人間である。こういう輩が社内で幅をきかせるようになるのを、私は何よりも恐れている。そうなれば個運はもちろん、「集団運」を一気に落としかねないからだ。

 戦闘モードを全開せずに運を落とした、「他山の石」とすべき事例はいくらでもある。

日本家電メーカーの凋落

 例えば、日本の家電メーカーや半導体メーカーだ。かつて日本の家電製品は、安さと品質の良さで世界市場を席捲した。また1980年代後半、日本の半導体は世界シェア1位の座にあった。ところが、今やどちらも往時の勢いは見る影もない。この数十年で中韓台(中国・韓国・台湾)の新興メーカーにあっさりと追い抜かれ、完全に逆転されたのは、皆さんもよくご存じの通りである。

 その凋落の要因は色々と指摘されるだろうが、最大の要因は、日本のメーカーが「世界一流」の座に安住して、「戦わないサラリーマン集団」に落ちぶれてしまったことにあるのではないか。繰り返すが、戦う姿勢を堅持しなければ運は落ちる。日本の家電・半導体メーカーは、中韓台メーカーの旺盛なファイティングスピリッツの前に、あえなく惨敗を喫したわけである。

日本と中韓台の経営の違い

 もちろん、中韓台メーカーで働く人たちに比べ、日本のメーカーの従業員たちの能力が劣っていたわけでも、ヤル気がなかったわけでも、慢心していたわけでも決してないだろう。これはひとえに、トップの経営気質と姿勢の問題だ。先ほども述べたように、将が勇敢でなければ、強力な部隊をつくることは出来ない。

 では、日本と中韓台の経営では、どのような違いがあったのか。端的に言えば、トップに立つのが守り最優先のサラリーマン社長なのか、攻め重視の創業経営者なのかということだ。

 現代の日本の大企業では、前者のタイプのサラリーマン社長が大半ではないだろうか。彼らは組織の中で業務をそつなくこなし、大きなミスをすることもなく、順調に出世の階段をのぼってきた。そうして社長の座についた時、彼らが真っ先に考えるのは、自らの任期中は余計なことをせず、平穏無事に乗り切ろうということではないだろうか。すなわち「守る」経営だ。

会社経営の論理が根本的に異なる

 一方の中韓台の会社には、一代でのし上がった創業経営者がいまだ健在である。そうした会社では、経営にオーナーシップが生きているので、中長期的視点から逆照射し、今やるべきことを考える。会社の未来を思えばこそ、現状維持には留まらず、果敢に「攻める」経営を行うのだ。

 オーナーシップの希薄なサラリーマン社長と、自らの命を賭けた創業経営者とでは、会社経営の論理と戦略が根本的に異なっている。いずれにせよ中韓台メーカーの多くは、このオーナーシップ経営が機能していたから、ここまでの大きな成長を遂げることが出来たのだろう。

 ちなみにオーナーシップファンド(創業家経営による企業を集めたファンド)は、他の一般的な投資ファンド等に比べて、明らかにパフォーマンスが高いとされている。こうした事実も、オーナーシップの強さを裏づけるエビデンスとして挙げられよう。

 もっとも私は、サラリーマン社長そのものを否定しているわけではない。あくまで守り優先の保守的気質を問題にしているだけだ。オーナー経営が永遠に続くわけがないのだから、オーナーシップをきちんと継承し、未来を見据えた攻めの経営ができる経営者であれば、サラリーマン出身でも全然構わない。実際に、まだ少数派ではあるが、わが国にもそうした経営者はちゃんと存在している。

29歳、背水の陣で起業

 私は29歳の時、小さな18坪の雑貨店「泥棒市場」を開いた。当時の私は何の特技も取り柄も伝手もない、文字通りの徒手空拳だった。それまで貯めていたありったけのカネを突っ込んで、いわば背水の陣で、素人商法のディスカウント店を始めたわけである。

 思えばあの頃の私は、「とにかく金儲けをして、のし上がって偉くなるんだ」という一心のみで、何一つとして恵まれているものはなかった。しかし今から考えれば、そこには「恵まれない幸せ」というものが確実にあったように思う。

 何も恵まれていなかったからこそ、逆に何の制約もなく自由自在に、運の三大条件──「攻め」と「挑戦」と「楽観主義」を思い切り追求して実践し、結果としてその果実を、あり余るくらい享受することができた。

“恵まれない幸せ”と“1%の悲劇”

 具体的に言えば、とにかく独自の個性を光らせて、埋没することのない目立つ店にすることに全力を注げた。間違いなくこれが、私のビジネス運を切り開いた第一歩である。

 それに対して、下手に恵まれているとこうはいかない。中でも私がよく引き合いに出すのは、「1%の悲劇」というやつである。

 どういうことかというと、たとえば家が裕福だったり、学校の勉強がよくできたり、野球やサッカーといったスポーツに秀でるなど、上位1%くらいに入る人たちは、逆にその栄光に引きずられて、幸運を掴めない。さらには運を落とすケースがままある。これを私は、「1%の悲劇」と称しているのだ。

日本経済を決定的にダメにしたA級戦犯

 恵まれているがゆえに、往々にして彼らは守勢、すなわち自らのプライドを守るためにチャレンジャーになるのを避けがちになる。だから運がやって来ない。リスクをとることに後ろ向きなキャリア官僚は、この「1%の悲劇」の典型例ではないかと私は思っている。

 もっともその恵まれ方は、決して突き抜けたものではない。たとえば中学や高校で、たかが上位1%の学校秀才など、社会に出れば凡人もいいところだ。実際にそこそこの大企業や官公庁なら、そうした社員・職員が、それこそ掃いて捨てるほどいるだろう。

 しかし彼らが、かつての上位1%にこだわり、そのプライドを後生大事にして守りに入っている限り、運の女神は決して微笑んではくれない。実際にこの種のサラリーマン集団が、近年の日本経済を決定的にダメにしてきたA級戦犯ではなかったかとさえ、私には思えるのである。

〈 あいりん地区、新宿・職安通りに進出…ドン・キホーテ創業者が明かした「ちょっと怖いエリア」にも出店する理由 〉へ続く

(安田 隆夫)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください