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“意外なスポーツ”が危険因子になることも…専門医が教える「認知症予防」5つのポイント

文春オンライン / 2024年6月28日 6時0分

“意外なスポーツ”が危険因子になることも…専門医が教える「認知症予防」5つのポイント

※写真はイメージです ©moonmoon/イメージマート

〈 認知症の新薬「レカネマブ」効果・副作用、治療にかかる費用は? 専門医が徹底解説! 〉から続く

 2023年12月から保険適用になった、新規アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」。その実力は――。ここでは、慶応義塾大学医学部特任教授・伊東大介氏の新刊 『認知症医療革命』(扶桑社新書) を一部抜粋して紹介する。

 アルツハイマー病を予防するための“5つのポイント”とは?(全2回の2回目/ 最初から読む )

◆◆◆

 レカネマブなど抗アミロイド療法が登場し、早期発見、早期治療によるアルツハイマー病の、治療または予防の道筋が見えてきました。

 しかし高価な薬に頼らず、アルツハイマー病を予防することができるなら、それに越したことはありません。

 最近の研究から、アルツハイマー病など認知症の予防につながる適切な対処法があることが明らかになってきました。実際、欧米の先進国では、ライフスタイルの変化により、ここ20年で、認知症の有病率(特定の病気にかかっている患者の比率)の減少を示すデータが出ています。つまり、認知症の予防もある程度は可能なのです。介入可能なリスクを減らすことで、認知症の40%は予防可能であると指摘する論文もあります。

明らかになった“危険因子”

 これまでの研究成果から、一生の各段階で、どんな危険因子が認知症の発症に関係があるのかが明らかになっています。

子ども時代の危険因子:教育程度の低さ

中年期の危険因子:難聴、高血圧、頭部外傷、アルコール摂取過多、肥満

高齢期:喫煙、うつ病、社会的孤立、運動不足、大気汚染、糖尿病

 一生の各段階で、これら危険因子を避けることが大事です。それでは、どんなライフスタイルが認知症の予防につながるのでしょうか。以下、みなさんに今すぐ取り組んでいただきたい認知症予防策をご紹介したいと思います。

認知症予防策1 生活習慣病を予防・治療する

 アルツハイマー病や脳血管性認知症は喫煙、肥満、糖尿病や高血圧などから引き起こされる病気、すなわち生活習慣病との関連が強いことがわかっています。

 生活習慣病は脳の血管を傷めます。脳の血管が傷めば、脳血管性認知症を発症するリスクが高まるのは言うまでもありません。アルツハイマー病も同じです。脳の血管が傷めばアミロイドβ(※)が排出されにくくなり、その結果、脳に蓄積し、アルツハイマー病の発症リスクが高まるのです。

※ アルツハイマー病を引き起こす原因物質のひとつ

 生活習慣病の予防や治療は、確実に認知症の予防につながります。特に、中年期からの高血圧、肥満の治療は重要です。もちろん禁煙の必要は説明するまでもありません。

 一方、高齢者では過度な血圧の治療は、脳の血のめぐりを悪くするため、かえって認知機能が下がってしまう恐れもありますので、主治医との十分な相談が必要です。

認知症予防策2 適度な運動

 数ある認知症予防策の中で、最もはっきりした科学的根拠を持っているのが適度な運動です。体と脳は別と思われるかもしれませんが、そもそも体を動かせるのは脳が機能しているからにほかなりません。運動をして体を動かすことは、脳を刺激する最適な方法なのです。

 腰や関節など、体を支え、動かす器官である運動器に疾患(腰痛、変形性関節症など)があると生活の幅が狭まります。さらに認知症を発症すると多くの場合、急激に症状が進行してしまいます。

 運動が認知症予防に効果的といっても高齢者の場合、整形外科的な疾患や呼吸循環器の疾患により十分な運動ができない人もいらっしゃいます。そこで私は、厚生労働省が運営する健康情報サイト「e‐ヘルスネット」の「 糖尿病を改善するための運動 」を参考に、下記のような運動をおすすめしています。

運動種目: ウォーキング(早歩き)、ジョギング、水泳など全身を動かす有酸素運動。

運動頻度:できれば毎日。少なくとも週に3回以上。

運動時間:1回当たり20~60分。

 高齢者の場合は、万歩計で1日5000から9000歩を目安にしてください。きちんと栄養を取った上で、筋肉づくりなどの運動習慣を身につけ、体のメンテナンスを行ってください。

認知症予防策3 楽しい知的活動

 認知症予防策として有効な楽しい知的活動とは、具体的にはゲーム(カードゲーム、チェス、将棋、麻雀、ビデオゲーム)、手芸、楽器演奏、SNS発信などです。

 読書やテレビ視聴のような受動的な楽しみより、創作活動やSNS発信のような能動的な知的活動がおすすめです。

認知症予防策4 他人との交流

 社会的孤立は、認知症の発症リスクとして知られています。他者との交流は生活に豊かさをもたらすだけでなく、脳を強く刺激します。ボランティア活動やカラオケがおすすめです。人間は社会的動物といわれますが、多くの人とのつながりを持つことは認知症予防にも有効です。

認知症予防策5 頭部外傷を避ける

 頭部外傷が認知症の強いリスクになることが近年の研究で示されています。頭部外傷による衝撃が、タウを放出させ、その蓄積を促進しているのではないかと考えられています。タウは神経細胞の中に溜まって神経細胞を傷つけ、さまざまな認知障害をもたらすとされるタンパク質です。

 2015年、アメリカサッカー協会は、10歳以下の子どものヘディングを禁止しました。ヘディングは、頭に直接ボールを当ててパスしたりシュートしたりするプレーです。アメリカではこのほか、11~13歳の子どもは練習中のヘディング回数を制限されるなど、慎重な対応が進められています。

 イギリスでは11歳以下のヘディング練習を禁じています。日本でも小学2年生以下は風船や新聞を丸めたボールを使う、3、4年生は通常より軽いボールで練習する、5年生以上は通常のサッカーボールを使う場合には、回数を制限することなどが推奨されています。

 軽微な頭部外傷をくり返し受けた後、数年から数十年を経て、慢性的な抑うつ(気分が落ち込んだり、憂うつな気持ちがあったりする症状)、記憶障害、認知症、運動失調などが表れる症状を慢性外傷性脳症といい、古くはボクサー認知症としても知られています。最近ではアメリカの国技であるアメリカンフットボールでも起こりうるとして社会問題になっています。1回の衝撃の程度は軽くてもくり返されることで、将来の脳障害のリスクが上がります。頭部外傷のくり返しには注意が必要です。

(伊東 大介/Webオリジナル(外部転載))

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