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商社株上昇後の株主還元がキツい…丸紅幹部の嘆き節「次期社長は投資かバフェット氏に報いるのかで悩むことに」

文春オンライン / 2024年7月3日 6時0分

商社株上昇後の株主還元がキツい…丸紅幹部の嘆き節「次期社長は投資かバフェット氏に報いるのかで悩むことに」

“投資の神様”として知られるウォーレン・バフェット氏は商社株を大量保有 ©時事通信社

ウォーレン・バフェット氏が大量保有を進めているとわかった商社株。“バフェット後”に株価は2〜5倍に急騰した。一方、商社幹部は株主還元の激化に嘆き節を漏らしているという。月刊文藝春秋の名物連載「 丸の内コンフィデンシャル 」より抜粋して紹介します。

◆◆◆

株価上昇で嘆く丸紅

 ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは商社株を大量保有する。三井物産(堀健一社長)、三菱商事(中西勝也社長)、伊藤忠商事(岡藤正広会長CEO)、丸紅(柿木真澄社長)、住友商事(上野真吾社長CEO)と、大手5社の保有比率はそれぞれ約9%に達した。

 投資の神様の取得で商社株は上昇。「バフェット後」の株価は「前」に比べ、2〜5倍に急騰したが、ここにきて丸紅幹部から「他社に追随するのがキツイ」と、嘆き節が聞こえてきた。

 大量取得に応えるかのように、5社は株主還元で競っているからだ。配当と自社株買いを合わせた総還元額は2024年3月期に1兆9000億円に上った。特に大盤振る舞いしたのが三菱商事で、2月に5000億円を上限とする自社株買いを公表。24年3月期の総還元性向は92%に達した。

 還元は今期以降も続く。伊藤忠は25年3月期の年間配当を前期に比べて40円多い1株200円とし、1500億円の自社株買いも決めた。三井物産は26年3月期まで、3年累計の基礎営業キャッシュフローに対する総還元性向の目標を37%程度としていたが、40%に引き上げた。

 丸紅は今期、年間配当を前期比で5円多い1株90円にし、発行済み株式の2.3%に相当する3800万株を上限に、自社株買いを実施すると発表。それなりに株主に報いた形だが、「三井、三菱、伊藤忠の上位3社に対抗しようと背伸びをしている」と、証券アナリストは分析する。

 事実、ある丸紅幹部はこう社内事情を明かす。

「4400億円に上るフリーキャッシュがあるが、投資に向けるか、還元に充てるかで、社内は揉めている。アクティビストのヘッジファンド、エリオット・マネジメントに狙われている住商よりはマシだと自虐的に言っているが……」

 丸紅の柿木社長は今期が在任6年目で、来年4月に交代する可能性が高い。これまで約30年に亘り、同社社長は不良債権処理に頭を悩ませてきた。

「8年連続で赤字を出した末に売却したインドネシア石油化学合弁事業、20年に過去最大の赤字を計上する原因となった米穀物事業。巨額の損失処理をした人もいれば、後任にツケを回した人もいる。次期社長は不良債権処理ではなく、投資をするか、バフェット氏に報いるのかで、悩むことになるだろう」(同前)

 次期社長は、新たな難題を抱えることになる。

社長の赤字を庇う会長

 経団連会長の十倉雅和氏が会長を務める住友化学(岩田圭一社長)が危機的状況にある。2024年3月期の連結最終損益が、3118億円の赤字となったのだ。創業以来最悪の数字であり、岩田社長は経営戦略説明会で「危機レベルの数値」と焦りを見せた。

 同社は住友グループの白水会の御三家。経団連会長も米倉弘昌氏と十倉氏の2人を輩出した名門企業だ。自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金額は、トヨタ自動車(佐藤恒治CEO)と並び、トップの5000万円に上る。

 業績悪化の原因の一つは上場している製薬子会社・住友ファーマ(野村博社長)の業績不振だ。主力の統合失調症薬の特許が切れ、子宮内膜症治療薬など基幹商品の販売も低迷。3月期の純損益は3150億円の赤字となった。野村社長は引責辞任し、木村徹専務が社長に昇格する。

 もう一つがサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコとの合弁会社ペトロ・ラービグの業績低迷。

「05年に米倉氏が社長時代に約2兆円を投じてペトロ・ラービグを設立。十倉氏が社長時代の12年に、同社が持つ石油化学コンビナート拡張を決めた。この判断は『致命的なミス』と言われる」(同社OB)

 会見で住友化学は、収益力の強化に向け、サウジアラムコと共同チームをつくることで合意したと発表した。だが巨大プラントを立て直すには時間がかかる。

 社長の岩田氏は東大法学部卒。エネルギー、有機EL事業、情報電子化学などの業務を担当し、19年に社長に就任した。

「頭も良く、優秀だが、経営企画畑で、実際の事業をあまり経験していないのが弱点。十倉会長も似た経歴で、営業現場の声があまり届かない」(同社関係者)

 十倉氏は、岩田氏を信頼しきっているという。

「十倉氏が社長時代に岩田氏は経営企画担当の常務に引き上げられた。社長就任も十倉氏からバトンタッチされた形。それゆえ十倉氏は周囲が『岩田はダメだ』と咎めても庇う。赤字についても『悪いタイミングで(社長を)渡したから』とフォローしていた。過去最大の赤字を出しておいて、この認識では、呆れざるを得ない」(財界関係者)

 危機感が希薄な会長の下で、住友化学は経営の立て直しを迫られている。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(丸の内コンフィデンシャル「 株価上昇で嘆く丸紅、社長の赤字を庇う会長、NTT人事の裏、暗雲垂れ込めるIR 」)。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2024年7月号)

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