「お前は完全に病気だ。異常だ!」夫から「セックス狂」と拒絶された“女性弁護士の哀しみ
文春オンライン / 2024年6月24日 11時0分
女性弁護士・ヴェラはなぜ夫に拒絶されたのか…? 写真はイメージ ©getty
「お前は完全に病気だ。異常だ! 俺がいつでもできて、ヤリたがる若者だとでも思ってるのか?」
なぜ夫婦カンケイは難しいのか? ここでは結婚20年目の夫から、夫婦の営みを拒絶された女性弁護士のエピソードを紹介。スウェーデン発、国際的ベストセラーの翻訳版『 不倫の心理学 』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)
◆◆◆
夫に拒絶された日
リビングからキッチンへ向かってガウンを整えながら、ヴェラは自分の体を完全にコントロールできていない気がした。悲しみにくれ酔っ払っている。酒を飲み始めた時の気分はアルコールで増幅されるといつもヴェラは言う。幸せならさらなる満足感と喜びにつながるし、怒りや失望も増幅される。
土曜日の夜、ヴェラと夫のマルクスは夕食をとったところだった。すべて順調で、家族が揃い、ペッパーステーキのパセリバター添えとローストポテトを食べた。長女が美味しいサラダを作り、夫婦はワイン1本をシェアした。
ヴェラはストックホルム中心部に事務所を構える大手法律事務所のパートナー弁護士だ。車道には新車が2台、食費は充分、まとまった休暇も取れる快適な暮らしだ。土曜日の夜はその夜のように過ごすか、友人夫婦とカップル同士でワインセラーからマルクスが選ぶ高価なウイスキーかワイン片手にディナーを楽しむことが多い。料理はたいてい夫の役目だ。凝った料理を作り、土曜日の朝には早くもマリネや煮込みの準備を始めたりする。ヴェラは料理にはあまり興味がないが、食欲は旺盛だ。
夕食後、子供たちはスマホを片手にそれぞれの部屋に向かった。夫はソファに座り、ヴェラは引越してきた10年以上前にリフォームすべきだったバスルームに入っていく。タイルや洗面台はおそらく70年代のものだろう。でも今では自慢の空間となっているキッチンの改装を優先した。彼らにとってはリフォームされた立派なキッチンの方が格上で、バスルームはあるもので充分だと思ったのだ。
ヴェラは黒のジーンズと濃紺のTシャツを脱ぎ、新品の下着だけを身につける。美しい下着が大好きなのだ。厚手の白いガウンを羽織り、バスルームを出るとはにかんだ笑顔で夫のもとへと歩き出す。ワインのおかげでいつもより少し大胆だ。スキンシップをとりたいと態度で示そうとする。結婚した夫婦がセックスをしなくなるとか、性生活がつまらなくなり、どちらもセックスを望まなくなるなどの言説を彼女は受け入れるつもりはない。それっぽいムードを作り出すことはさほど難しいことではない。情熱とセックスアピール、セクシーな下着と遊び心はヴェラそのものなのだ。
誘うような笑みを浮かべてソファに滑り込み、夫に近寄る。願わくば自分が求めているのと同じくらい、夫からも求められたい。ガウンのベルトを軽く外し、胸を露わにする。興奮し、いたずらっぽい気分になる。胸元の開いたガウンの奥に隠されたところを見てもらいたい。夫の太ももに軽く手を置く。しっかりと、そして優しく。
「きれいだよ、ヴェラ。君が欲しい」それが夫から聞きたい言葉だ。寝室へこっそり入り、ドアに鍵をかけ、自分たちだけの時間を過ごしたい。子供たちは自室でスマホに夢中になっていて何も気づかないだろう。彼らももう大きい。自分のことは自分でできる。
ことが終わったら夫婦でソファに戻り、土曜日の映画の続きを見る。満たされた幸せな結婚生活を送る。20年目の今も互いを求め合っていると確信する。それが望みだ。
だが、そうはならない。
それどころかヴェラが目の当たりにするのは太ももに手を置いた瞬間、リラックスしてテレビを見ていた夫が一瞬にして豹変する姿だ。たじろいだ夫は声を荒らげて言う。
「いったい何をするんだ?」
険悪な雰囲気ではなかった。その日は昼間からくすぶっている問題など何もなく、すべては順調だった。ヴェラが理解できないまま夫は続ける。
「お前は完全に病気だ。異常だ! 俺がいつでもできて、ヤリたがる若者だとでも思ってるのか?」
息つく暇もなく言い切った。
「医者にみてもらえ、ヴェラ」そう付け加えると、ヴェラの手を乱暴につかんで押しのけた。
聞くに耐えなかったが、言いたいことは伝わった。自分は“病的で異常”なほど“飽くことのない性欲の持ち主”。それが夫の考えだ。しかも今回、夫はただほのめかすだけでなく、さらに踏み込んで、妻を求めていないと伝えてきた。いつもしたがるのは何か問題があるのだと。もちろんいつもではない──だが、夫に対して度々感じているのは、夫はヴェラがしたいことに興味がないということだ。
ヴェラは身体的にも精神的にも不安定になる。安全な場所にいると思っていたのに、その安全が突然恐怖に取って代わられた時のように。夫の機嫌の悪さがゼロから100になるのは今回が初めてではない。これがいつもの反応で、すぐに怒りをあらわにする。
厳しい言葉を浴びせ、暴言を吐き、電光石火のごとく感情が浮き沈みする。その結果、ヴェラは常に身構えるようになってしまったのだが、それも今は何の役にも立たず、いきなり平手打ちを食らったような気分になっていた。付き合い始めの頃は腹を立てていた。悲しくなり、話し合って理解したかった。だが、年月が経つにつれてあまり気にしなくなった。話し合って解決しようとしても大抵は無意味だからだ。
何も言えず、黙り込むしかない。涙が流れ、とっさに振り返ってバスルームの方へ向かった。どこへ向かえばいいのかわからないかのように、足取りがおぼつかなかった。
夫婦の関係が「終わった日」
バランスは失われ、すべては台無しだった。
夫はもっと酷い態度をとったこともあったが、今回は何かが違う気がする。いつもよりきつい。夫の怒鳴り声が子供たちに聞こえるほどだったこともわかっている。子供たちも何を意味する言葉だったか理解しているだろう。それでも誰も部屋からは出てこない。もちろん、聞かなかったことにした方がいい。父親が母親をセックス狂だと非難した時、何を言えばいいのだろう。
どんなパートナーシップにも、すべてを変えてしまう瞬間がある。関係性が深まり、親密さが増す瞬間もある。愛が深まり“永遠に2人”という気持ちが強まる時もあれば、関係が少しずつ蝕まれ、愛が徐々に消えていくこともある。そして、愛情が打ち砕かれる瞬間がある。その夜はそんな瞬間だった。
絶え間ない苦痛はすでに何年も続いていた。自尊心を傷つけられ、嘲笑され、見下されもした。その晩、取り返しがつかないほどあまりにも多くのものが壊された。この瞬間が夫婦関係の行方を永遠に変えることとなった。
〈 「ダメだ。セックスはナシ。これで満足しろ」夫に拒絶された女性弁護士が「浮気専用出会い系サイト」に手をだした理由 〉へ続く
(アンジェラ・アオラ,安達 七佳/Webオリジナル(外部転載))
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