堂々と自由恋愛する男女、隠れて酒や麻薬をたのしむ人々も…イスラム教の戒律が厳しいイラン社会の、衝撃的な“ホンネと建て前”
文春オンライン / 2024年6月24日 7時0分
![堂々と自由恋愛する男女、隠れて酒や麻薬をたのしむ人々も…イスラム教の戒律が厳しいイラン社会の、衝撃的な“ホンネと建て前”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_71567_0-small.jpg)
『イランの地下世界』(若宮總 著)角川新書
たとえば日本人・日本社会の特徴をどうみるかは、日本で生まれ育ったわれわれ日本人だって、それぞれ生活環境も人生経験も違うので、考えは微妙に異なる。訪日した外国人が日本人・日本社会をどうみるかも、それぞれの見聞が異なるから、違って当たり前だ。
外国について日本人が書く“解説”も、同じだろう。記者、研究者、ビジネスマン、公務・民間の駐在経験者、あるいは旅行者など、さまざまな人々が外国について自分の知っている部分の解説を数多の書物に著してきたが、どんな立場でその国のどんな階層・タイプの人と接触してきたかで、見える風景が違う。
付き合う相手が主にエリート層なのか市井の人々なのか。都会人か地方住民か。若者か老人か。旅行者なら現地の観光業者など英語がある程度話せる層に偏ることも多い。
そんな中、本書は異色のイラン社会の解説書となっている。筆者の若宮總氏は、大学院等でイランについて学び、イラン留学の経験を持ちながら、個人としてイランに長く住み、現地で仕事につき、ほぼネイティブ並みのペルシャ語を身につけて、普通のイラン社会に溶け込んで暮らしてきた。
そんな若宮氏の描くイラン人・イラン社会は、他に類を見ない衝撃的な内容である。それは、イスラム教の戒律が厳しいイラン社会の本音と建前の使い分けを、イラン社会内部から見てきた若宮氏ならではの「ホンネのイラン」論とでも呼ぶべきものだ。
なので本書には、ありがちな「敬虔なイスラム教徒の国・イラン」の姿は出てこない。かたちだけのイスラム教徒、堂々と自由恋愛を謳歌する男女、さらには隠れて酒や麻薬を愉しむ人々などの姿が、そこにはある。しかもそれがイランでは少数派ではない普通の人々として登場するのだ。
ちなみに私自身は、イランは若い頃にほんの数回行っただけだが、当時、人々がさして周囲を気にせずに独裁政権の悪口を言うなど、アラブ世界などではあまり見かけない場面に出くわしたことが何度もあった。
そんなイランは私にとっては長い間、謎の国だったが、本書で若宮氏が掬い上げているイランの人々の本音の言葉から、彼ら独特の人生観や社会背景の深層を垣間見ることができた。
本書の凄さは、単にイラン社会の矛盾という問題に止まらず、そうしたイラン社会を形成しているイラン人の心の内部の問題点にまで迫ろうとしていることだ。
若宮氏は「イランを知るためには、まずイラン人を知る必要があるのではないか」と書いているが、本書にはそんな覚悟が滲む。
しかも、イラン人に厳しいことも書きながら、目線はイランの人々への愛に満ちている。
「イラン人に自由あれ」
一見ありがちにも見えるこのラストの文が、どれほど深い言葉か。最後まで読むとわかる。
わかみやさとし/1970年代に生まれ、10代でイランに魅せられ、大学、大学院とイランのある分野を研究。留学や仕事で長年現地に滞在した経験を持つ。本書は、イランの現状、体制の暗部を描くため、ペンネームで記された。詳細は本書解説を参照。
くろいぶんたろう/1963年、福島県生まれ。軍事ジャーナリスト。『プーチンの正体』『工作・謀略の国際政治』など著書多数。
(黒井 文太郎/週刊文春 2024年6月27日号)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
イスラエル、政権不安定化も=ユダヤ教超正統派に徴兵命令
時事通信 / 2024年6月26日 18時7分
-
ロヒンギャ文化体験イベント開催 群馬・館林で高校生が企画
共同通信 / 2024年6月16日 16時26分
-
焦点:フランスのムスリム系学校、イスラム主義締め付けで閉鎖も
ロイター / 2024年6月8日 8時8分
-
宗教教育と言語について(上) イスラム圏の教育事情 その4
Japan In-depth / 2024年5月31日 17時0分
-
中学・高校・団体向け「日本人のための“外国人と対等に渡り合えるコミュニケーション”」オンライン授業のモニター募集
PR TIMES / 2024年5月30日 10時45分
ランキング
-
1初めての刺青は「中学時代」。離婚3回、4児のシングルマザーがたどり着いた“幸せ”の境地
日刊SPA! / 2024年6月28日 8時54分
-
2「虎に翼」"振り切りキャラ"で異例ヒットの背景 王道じゃない異色の朝ドラ、なぜウケた?
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 11時0分
-
3iPhone「eSIMを使う人」だけ知っている便利機能 実はeSIMに変更する手間はほとんどかからない
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 12時0分
-
4電話口でいきなり“イタい替え歌”を歌う男。初デートでのさらなる奇行で我慢は限界に…
女子SPA! / 2024年6月28日 8時47分
-
5道路にある「謎のカメラ」一体何してる? ピカッと光る「オービス“そっくり”」だけど…何が違う? 両者の見分け方とは
くるまのニュース / 2024年6月27日 11時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)