「鈴木大地の方が人望もありました…」年俸格安&史上最年少40歳の今江敏晃監督が、まさかの交流戦初優勝を成し遂げた理由
文春オンライン / 2024年6月21日 11時0分
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楽天の今江敏晃監督 ©時事通信社
楽天がプロ野球参戦20年目にして、交流戦で初優勝を果たした。
今江敏晃(40)が監督になって1年目だが、交流戦開幕時点では18勝26敗。西武の松井稼頭央監督が事実上の更迭になった時は、次は今江の番だろうと囁かれていた。
しかし、交流戦が終わってみれば13勝5敗の快進撃で借金も完済。楽天では野村克也監督や星野仙一監督といった名将もなし得なかった快挙を史上最年少で達成した。
交流戦最終戦の6月16日、楽天は本拠地で広島に勝つと、同率首位で並んでいたソフトバンクの試合をロッカールームでコーチ陣とともに見ていた。
ソフトバンクの敗戦で交流戦優勝が決まると「やっと笑える」と周囲を和ませながら、「選手を褒めてやってほしい」と“兄貴分”らしいコメントを残した。
「『持っている』星の下に生まれた人間なのだと思います」
今江監督がロッテから楽天にやってきたのは、プロ野球参入から10年後の2015年。球団創設20年、交流戦も始まって20年、今江監督が楽天へ来て10年という節目の年に初優勝を飾ったことになる。
ロッテ時代の「選手・今江」を知るコーチは、2005年と2010年に日本シリーズMVPを獲得したことを引き合いに、今江監督の勝負強さをこう語る。
「出場することすら難しい日本シリーズの舞台に立って、そこへコンディションをピークに合わせることは至難の業。今江はそれを2度もやっている。いわゆる『持っている』星の下に生まれた人間なのだと思います。監督になっても、ノムさんや星野さんができなかった交流戦初優勝ですから。今江の勝負強さを改めて実感しました」
そう言われると、昨オフに監督に就任したことも今江監督の持つ星の強さだったのかもしれない。
昨年の開幕時点では、2軍の打撃コーチだった。5月に1軍のコーチに昇格して不振だった打線を立て直すと、石井一久前監督の辞任を受けて、40歳にして監督の座に就いた。40歳での監督就任は12球団最年少で、本人も「イメージしていたプランからは相当ジャンプアップしました」と驚いていた。
さる球界関係者が証言する。
「これまでも楽天の監督ではデーブ(大久保博元氏)、平石(洋介氏=現西武コーチ)、三木(肇氏=現楽天2軍監督)など意外な人選がありました。それでも強いコネがあったり、知名度は低くても指導力を見込まれたりとそれなりの根拠はありました。ただ、今江監督に関してはタイミングとしか言いようがない。選手と年齢が近くいい関係を保ってはいましたが、最大の理由は年俸が安くて済むからというのが本当のところでしょう。それで交流戦優勝ですから本当にコスパがいい人選になりました(笑)」
今江監督の今季の年俸は4000万円と推定されているが、実際は3000万円程度ではないかという人もいる。巨人の阿部慎之助監督は1億5000万円と言われているので、4分の1から5分の1ということになる。親会社の楽天が携帯電話事業の不振で経営難に陥る中で、コストカットを余儀なくされた球団事情も今江監督誕生の遠因になった。
ここへきて一気に評価が高まってはいるものの、選手時代から決してリーダーとしての評価は高くなかった。2012年にロッテでキャプテンに指名されたが、伊東勤監督に交代した翌年にはお役御免となっている。
「鈴木大地の方が人望もありましたから」
前出のロッテ時代のコーチはこう回顧する。
「今江はもともと主将タイプではありません。しっかりルーティンをこなして試合に臨む準備ぶりはさすがPL出身といったところですが、他の選手を引っ張るキャプテンシーという意味では物足りないものがありました。14年から主将になった鈴木大地の方が人望もありましたから」
それでも交流戦初優勝の裏には、不調の浅村栄斗を4番から下ろして、鈴木大地を据えた“非情采配”の影響もあった。鈴木は本来4番タイプではないが、後続にチャンスをお膳立てする役目を託した策は、今江監督のロッテ時代の恩師・ボビー・バレンタイン流だ。今江監督は「ボビー・チルドレン」の中心人物の1人だ。
6月21日のリーグ戦再開時点で、楽天は勝率5割のパ・リーグ4位。
今江監督は「交流戦って小さな頂ですけども、しっかりシーズンが終わる頃に大きな頂の景色を皆さんにお見せできるように、またリセットして目の前の試合を戦っていきたい」と今季のチームスローガンの「いただき!」を交えて展望を語った。
誰にも期待されていなかったことも含めて、今江監督率いる楽天には不気味な印象が漂っている。台風の目になる可能性はいかほどか。
(木嶋 昇)
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