《アイルトン・セナ没後30年》「足は誰よりも遅かった」「超人的な姿は浮かばない」中嶋悟、木内健雄、古舘伊知郎が語る“意外な真実”
文春オンライン / 2024年7月27日 6時0分
![《アイルトン・セナ没後30年》「足は誰よりも遅かった」「超人的な姿は浮かばない」中嶋悟、木内健雄、古舘伊知郎が語る“意外な真実”](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_71632_0-small.jpg)
アイルトン・セナ ©Sipa USA時事通信フォト
アイルトン・セナが没後30年を迎えた。セナのチームメイトだった元F1ドライバーの中嶋悟氏、ホンダのエンジニアとしてセナを担当した木内健雄氏、F1実況中継で人気を博したアナウンサーの古舘伊知郎氏が語り合った。
◆◆◆
古舘 お久しぶりです。おふたりともお元気そうで、懐かしいなあ。中嶋さんはレーシングチームを作って、今もレースを続けているんですよね?
中嶋 そう。チームの監督として、今もサーキットにいる。サーキットの音を聞いてるだけで楽しいよ。木内さんは今もホンダにいるの?
木内 いえ、ホンダは7年前に定年退職しました。今は電子計測器の専門商社でEVや自動運転技術の開発に関わっています。
中嶋 古舘さんは真面目な仕事をしているよね。まさかあの古舘さんが報道番組のキャスターになるとは思わなかったよ。
古舘 自分でもびっくりです(笑)。色々なことが大きく変わりましたよね。セナが亡くなってから、もう30年になるんですか……。
〈アイルトン・セナ。世界のF1ブームを牽引した伝説のドライバーの死から、今年で30年が経った。1984年からF1に参戦し、41度の優勝、3度のワールドチャンピオンに輝いた。日本でも「音速の貴公子」の愛称で親しまれ社会現象となったが、94年5月1日、イタリアのイモラサーキットで首位を走行中、コンクリートバリアに高速で衝突し、34歳の若さで命を落とした。
しかしその人気は死後も変わらず、母国ブラジルでは、「ブラジルで最も偉大なスポーツ選手」にサッカーのペレを押さえて選ばれた。さらに、ネットフリックスでは、彼の半生を描いたドラマが年内に配信予定だという。〉
中嶋 30年も経つのに、セナに関するインタビューは毎年のように受けてる気がする。何回特集するんだって思うけど、それだけ、彼の人気を実感するよね。
古舘 中嶋さんはロータス・ホンダでセナのチームメイトですからね。木内さんも、ホンダのエンジニアとしてセナの担当をされていました。ホンダを離れた今もセナについて語る機会は多いですか。
木内 そうですね。インタビューはこれまでも受けてきましたけど、彼を思い出す時、僕はファンが思うようなかっこいい姿や超人的な姿は浮かばないんですよ。
古舘 そうなんですか?
木内 まず、第一印象がよくなかった。僕は87年のベルギーGPが初めてのF1の現場だったのですが、ガレージに行くと、セナが工具の入った赤いツールボックスの上にでんと座っているんですよ。サングラスをかけて偉そうにしていてね。メカニックにとって工具は大事な仕事道具だから、「許せん!」と思ったのが最初の印象でした。
中嶋 でもセナは、自分のマシンのサイド・ポンツーン(車体の側面)に座られると怒るんだよ(笑)。
意外に足は遅かった?
木内 そう。レース以外では抜けているところの多いヤツで、身体能力も決して高くはありませんでした。ある日の休憩中、マシン用のスピード計測装置を使って、チームのみんなで駆けっこの速さを測って遊んでいたんです。ドライバーなら足も速いのかと思って、「セナも走ってみろよ」って走らせたら、誰よりも遅かった。本人は本気だけど、誰もが「本気で走ってるの!?」と驚くくらい。
古舘 ライバルのアラン・プロストは首が太かったし、ナイジェル・マンセルも筋骨隆々。一方のセナは線が細くて、レース後に疲労から立ち上がれない姿も見られました。
抜けているところといえば、セナと中嶋さんが87年のモナコGP後のパーティーにカジュアルなジャケット姿で参加してしまったというエピソードは、中嶋さんから聞いて今でもよく覚えています。
中嶋 そうそう。セナが初めてモナコGPを制した時で、社交界の錚々たる顔ぶれが揃ってた。当然みんなタキシード姿なんだけど、セナは優勝できると思っていなくて、普通のジャケットで来ちゃった。チャンピオンなのに、「こういう服で行くのは失礼だったかな」なんて呟くくらいに目立っちゃったんだよね。
古舘 当時のF1は特に、「ヨーロッパ文化」という色合いが強かったですからね。
◆
本記事の全文「 没後30年 アイルトン・セナよ、永遠に 」は、「文藝春秋 電子版」に掲載されています。https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h8150
本編(9000字) では、愛称「音速の貴公子」が生まれた舞台裏、中嶋悟氏が「セナ足」を認めないワケなどについて、さらに3人が語り合います。
〈 「恋人のバゲットに丁寧に丁寧にバターを塗って…」古舘伊知郎が目撃したアイルトン・セナの素顔《没後30年》 〉へ続く
(中嶋 悟,木内 健雄,古舘 伊知郎/文藝春秋 2024年7月号)
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