1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「家に帰ればカードがあるんです」行き先は上野→富山… “お金のないお客”を乗せてしまった「タクシードライバーのその後」――2024年5月の読まれた記事2位

文春オンライン / 2024年6月28日 17時0分

「家に帰ればカードがあるんです」行き先は上野→富山… “お金のないお客”を乗せてしまった「タクシードライバーのその後」――2024年5月の読まれた記事2位

上野から富山まで乗せてほしいお客の正体とは…? 写真はイメージ ©getty

2024年5月、文春オンラインで反響の大きかった記事5本を発表します。第2位はこちら!(初公開日 2024年5月12日)。

*  *  *

「今は金の持ち合わせはないんだけど、家に帰ればカードがあるんです。だから富山まで行ってほしいんだけど」…上野で長距離運転を頼まれたタクシードライバーの遠山氏。

 果たして、そのお客は本当にお金を払ってくれるお客だったのか? それともただの不正乗車だったのか? 1日300km走行、タクシードライバーの悪戦苦闘の日々を描いた内田正治氏の著書『 タクシードライバーぐるぐる日記――朝7時から都内を周回中、営収5万円まで帰庫できません 』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 前編 を読む)

◆◆◆

行き先は上野→富山。気になるタクシー代金は…

 遠山さんは「もう自分が騙されてもいいと思ったね。そのときは全部自腹の覚悟の男気だったよ」と言う。これもどこまで本音だかわからない。終わったあとになればなんとでもいえる。

 タクシーの燃料はLPガスであり、燃料補給ができるスタンドは限られている。

 富山ほどの遠方だと補給なしでは帰れない。遠山さんは、会社に定期的に現在地と燃料の残量を伝え、LPガススタンドの場所を案内してもらいながら走行した。

 8時間に及ぶ走行で富山に到着。立派な門構えの邸宅だったという。

「あの家を見たとき、これは支払いも間違いないなと確信したね」

 遠山さんは笑いながら語ってくれた。

 それでも家から戻ってきたお客がカードを渡してくれたときには心の底からほっとしたという。

 料金は約20万円、往復走行距離は約800キロだった。

 そのお客からは、「私のことを信用してこんな遠くまで送ってくれて、本当にありがとう」と感謝されただけではなく、家から持ってきたたくさんの土産までもらったという。

富山は本当に遠かった

「富山は本当に遠かったよ。お客を乗せて目的地に向かっているときはまだよかったけど、特に一人で帰ってくるときがまあ長いのなんの。見覚えのある表示板が現れたときは、やっと帰ってくることができたと、ほっとしたよ。でもやっぱりお客を信じようという男気、これが大切だよね」

 宇都宮までしか行ったことのない私に、富山まで到達した遠山さんはそう自慢げに語ってくれたのだった。

(内田 正治/Webオリジナル(外部転載))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください