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「歌い手としては、声が出なくなったら引き時かなと思いますね」大病を乗り越え、挑み続ける吉川晃司(58)の“見得の切り方” <来年還暦>

文春オンライン / 2024年7月12日 20時0分

「歌い手としては、声が出なくなったら引き時かなと思いますね」大病を乗り越え、挑み続ける吉川晃司(58)の“見得の切り方” <来年還暦>

吉川晃司さん

〈 「原作にはありません、と言われましたけど(笑)」 “武神”吉川晃司がアクションシーンに入れた「得意技」<体重15キロ増> 〉から続く

 肉体改造をして臨んだ映画『キングダム』シリーズの龐煖(ほうけん)にとどまらず、今年は映画『ドラえもん』での声優デビュー、布袋寅泰さんとの伝説のユニットCOMPLEXの復活ライブなど、精力的に活動を続ける吉川晃司さん(58)。

 狭心症や外傷性白内障を乗り越えてデビュー40周年を迎えた吉川さんに、これまでとこれからを聞いた。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

◆◆◆

「お客さんに飽きられるアクションはしない」を死守したい

──50代後半になってもなお、龐煖のようにハードな役に挑む理由を教えてください。

吉川晃司(以下、吉川) ダイヤの原石って、楽なほうではなく、大変なほうに落ちてるんですよ。得るものがたくさんある。だからです。

 僕はプロとして「お客さんに飽きられるアクションはしない」ということを死守したいと思っています。カラダを鍛え、ちょっと無理かなと思うような挑戦を続けることって、その信条を守っていくうえでも有効なんですよね。

 僕の軸は歌手ですが、僕みたいにロックンロールに憧れて育った人間って、見得を切ってナンボ、という意識で日々を過ごしているわけです。

 ですから今回、龐煖のような役をいただけたことは、自分にとって新たな挑戦ができるきっかけになって、嬉しかったですね。ちょっと無理をしても頑張ろうと思ってお受けしました。

──いくら「見得を切る」ためとはいえ、体力的・機能的衰えに抗えない場合にはどうされているのですか?

吉川 20代の頃は自分が不死身だと思っていたこともありましたが、最近はまわりに迷惑がかかったり、己の本分を発揮できなくなったりする危険性のある行動は、徐々に避けるようになりました。

 たとえば一時期やっていた流鏑馬は、落馬すると確実に骨折するので、さすがにもうやっていませんし、同じ理由でバイクのウイリーもやめました。

「そこに吉川晃司が必要か」という目線

──今年は『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)』で声優にも初挑戦されました。これも「ダイヤの原石探し」のひとつですか?

吉川 お話をいただいたときは、僕自身も驚きました。僕でいいのかなとも思いましたが、やらせていただいて、新しい経験値を積むことができました。

 ただ、「吉川晃司のせいで、ドラえもんが台無しだ」と思われてしまうのは、本当につらいことなので「やらせていただくけど、あんまりうまくなかったら他の人に代えてください」と何度もお願いして、お受けしました。

 ある意味、この歳になっても恥をかかせていただけるというのは、すごくありがたいですよね。

 まったく知らない世界をのぞいたり、畑違いのことにチャレンジしたりすることは、人としての経験値もあげてくれます。今後も機会をいただけることがあれば、カラダに無理のない範囲で、いろんな挑戦をしていきたいと思っています。

──新しいことに挑戦するときに、大事にされていることはありますか?

吉川 人気作品だからとか、話題性があるからではなく、「そこに吉川晃司が必要か」という目線は入れるようにしています。

 今回、オファーを受けたのは、孤高の一匹狼的な趙の総大将・龐煖のなかに感じたロックスピリット(反骨精神)に自分と共通するものを感じたからということもあります。

 ロックは体制側ではないマイノリティな思想で、『キングダム』で言うといわば体制の中にいる秦国の武将たちにはないものです。僕自身もたとえるなら「朱に交わったら黒くなる」龐煖のようであり続けたいと、ずっと思っています。

若い頃より強くなったロックスピリット

──若い頃と比べ、ロックスピリットが薄れたり、守りに入ったりするようなことはないのでしょうか。

吉川 ないですね。むしろ、ロックスピリットは強くなっているように感じます。

 多分、僕は意固地なんですよ。偏屈といったらいいかな(笑)。

 見得を切りながら、しなやかに生きていきたいと思ってはいても、それってすごくバランスが難しいんですよね。見得を切り続けると偏屈に偏っていき、「ああはなりたくないな」と思ってきた扱いにくい爺さんに近づいている気もします。気をつけないと(笑)。

──『キングダム 大将軍の帰還』での大沢たかおさんと吉川さんの一騎打ちは、「扱いにくい爺さん」どころか、お互いに背負ってきたものの大きさや重さを感じる、大迫力のシーンとなっていました。

吉川 若いうちにかっこいいだろう、これが素敵なんだ、と思っていたことって、今とはまったく違いますよね。

 若い頃には決して出せなかった人生の重みが、今は逆に出せるようになったかなと思います。

 日本人はいまだに「若いことが美しい」みたいな風潮がありますが、「若い」って結局、「愚か」と同義語ですからね。「ピチピチさがいいだけで、味わいもへったくれもあったもんじゃない」という言い方だってできるわけですよ。

 だから僕は、本当に面白いのは、50歳を過ぎてからだと思っています。なんて、負け惜しみも多少入っているかもしれませんが(笑)。

10歳以上年下の現役キックボクサーとトレーニング

──ご自分に限界を感じることは、まだなさそうですね。

吉川 そうですね。サッカー選手の三浦(知良)くんがまだ50歳くらいだった時に、「高校時代から練習量は全く変えていない」と教えてくれたんですよ。それを聞いて、「よし、俺も」と思いまして、それ以来、若い頃よりきついトレーニングをしていますが、今のところまだ全部クリアできています。

 あんまり言うと無理してるように聞こえるかもしれませんが、2021年に狭心症の手術をしてからは心臓の調子もすこぶるよくなって、息も上がらなくなりました。

 いま、現役のキックボクサーと一緒にトレーニングしているんですけど、彼は彼で、僕に負けたら立つ瀬がないと思うとやる気がみなぎるそうです。

 彼は46歳で、格闘技の選手としてはかなり高齢です。いろんな意味でケツに火がついている彼と、年齢に抗い続ける僕が一緒にトレーニングをすることが、今のところ非常にいい作用を生み出しているので、しばらくは続けてみようかと。

5月のCOMPLEXライブでは「痛みなんて全部忘れてました」

──今年でデビュー40周年を迎えます。ふりかえってみて、いかがですか?

吉川 僕が一番軸にしているのは歌手活動です。これまで、コンサートツアーに来てくださるみなさんに元気になっていただく、笑顔で帰っていただくことを、自分の役目と信じてやってきました。

 観客の力が集まると、ステージの上ではできそうもないことができたりもします。

 5月に「令和6年能登半島地震」の復興支援を目的とした東京ドーム・COMPLEXチャリティーライブをしたんですけど、結構怪我だらけだったんですよ。でもライブ中は脳から何かが出てきて、痛みなんて全部忘れてました。これって、お客さんがくれる力なんですよね。

 そうやって応援してくださるみなさんがいることをありがたいと思い、パワーをいただきながら、これからも怯まず力まず、しなやかに生きていきたいです。

引き時だけは間違えないようにしたい

──吉川さんが目指す10年後20年後のビジョンは。

吉川 引き時は大事だと思うんで、それだけ間違えないようにしたいと思います。歌い手としては、声が出なくなったら引き時かなと思いますね。

 男って一番引き時が大事じゃないですか。龐煖もそうですが、男ってどこか死に場所を求めて生きているようなところがあると思うんですよ。かっこいい言い方をするとハードボイルドみたいな。

 だけど矛盾してるようだけど、死に場所って結局、それが生きる場所でもあると思うんです。「役者は舞台で倒れたら本望だ」ってよく聞きますけど、そんなことされたら客は迷惑ですよね。老害じゃねえか、おまえって。そこは気をつけたいと思っています。

──来年8月には60歳を迎えます。何か考えておられるのでしょうか。

吉川 赤いちゃんちゃんこを着て、これまでお世話になった人に感謝の意も込めた「還暦作戦」ができるといいなと思っているのですが、今はこれ以上言えません。来年発表していきますので、楽しみにお待ちいただければと思います。

きっかわ こうじ 1965年広島県生まれ。1984年に映画『すかんぴんウォーク』と同主題歌「モニカ」でデビュー。以後、独自のスタイルでロックアーティストとしての地位を確立する。1988年にギターリスト布袋寅泰氏と結成したユニット COMPLEXは2024年5月には13年ぶりに復活ライブを開催した。

 近年は俳優としても活躍、主な出演作に映画『チーム・バチスタの栄光』『るろうに剣心』『キングダム』シリーズ、ドラマ『天地人』『舞いあがれ!』『ACMA:GAME アクマゲーム』など。

(相澤 洋美/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル)

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