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「防塵マスク越しでも鼻に突き刺さるとんでもない激臭」ゴミ屋敷をキレイにする上で避けられない「謎の液体の入ったペットボトル」の正体

文春オンライン / 2024年7月3日 11時0分

「防塵マスク越しでも鼻に突き刺さるとんでもない激臭」ゴミ屋敷をキレイにする上で避けられない「謎の液体の入ったペットボトル」の正体

ゴミ屋敷にあふれた「謎のペットボトル」の正体とは…? 写真はイメージ ©getty

「防塵マスク越しでも鼻に突き刺さるとんでもない激臭。アンモニア臭に苦味を混ぜたような臭い」。ゴミ屋敷に置かれた、謎の液体の入ったペットボトル。異臭を発する、謎のペットボトルの正体とは…? 12年間ごみ清掃員として働いたお笑い芸人・柴田賢佑氏による『 ごみ屋敷ワンダーランド ~清掃員が出会ったワケあり住人たち~ 』(白夜書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)

◆◆◆

僕史上最大の尿ペ屋敷を片づけた時の話

 皆様は「尿ペ」と呼ばれる現代の謎をご存知だろうか。

「ションぺ」と呼ぶ業者もいるが、うちでは「尿ペ」と呼んでいる。

 尿ペとは、読んで字の如く、……と言っていいのかわからないが、尿が入っているペットボトルのことを指す。

 これは僕史上最大の尿ペ屋敷を片づけた時の話。

 前日に、社員から珍しく、「明日は完全防備でお願いします」と連絡が来た。

 怖い。うちの会社は僕のリアクションが好きらしく、前日にスケジュールを教えず、当日サプライズ的に現場を発表することが多々あるのだ。そんな社員が事前に教えてくれるなんて、よほどの案件なのか。緊張が走った。

 当日、現場までの行きのトラック内でも「覚悟しておいてください」と言われた。

 ははぁん。ここまで言うとは、さては逆だな。逆サプライズだ! ヤバイと思わせておいての、蓋を開けたら大したことないみたいな話だなとピンと来た。

 現場に到着すると、トラックの周りにいる五人全員が、防護服にゴム手袋、防塵マスク、長靴を装着していた。

 ……ははぁん。

「本当にヤバイんだな」と納得した。冗談にできないほどか。

破裂寸前のリビング

 現場の前で、依頼して来た不動産屋と思しき人物と話している社員。

 完全防備を終えて現場に向かう一同に、不動産屋らしき人物が、「よろしくっす!」とニコニコ明るく話しかけてきた。

 少しラフだが、こういう一言が意外に嬉しいものだ。

 今回の現場は、アパートの一階の1LDK。ただし、十畳のリビングだけ作業するとのこと。玄関、廊下もごみが積もっていて入れないため、リビングの窓から入って作業することになった。一階だからできる戦法だ。

 建物の横を通って庭に出る。庭からリビングの窓を見て愕然とした。部屋の中のごみで押されて、カーテンが窓にピタピタに貼りついている。横から見ると、窓が膨らんでいるのがわかる。透明の箱の中で、今にも破裂しそうな風船状態になっていた。窓ガラスはいつ割れてもおかしくない。

 鍵は開いているとのことで、スライドさせようとするが、まったく開かない。窓を外すことになった。ごみが雪崩を起こすことを予想して、全員三歩ほど下がる。

 社員が窓を上に持ち上げ、後ろに引いて外した。

 後衛にいた僕は、「すぐ逃げて! 窓外したらすぐ逃げて!」と心の中で叫ぶ。

 ……。

 あれ? 雪崩が起きない。ごみがピタッと窓際で固まっている。

 これは、相当年月が経っている証だ。ごみが何層にも、地層のように積み上がっている。時間が経てば経つほど、ごみの状態は劣化し臭いもキツくなる。固まっているということはそれが確定した証拠。

「雪崩ろよ……」と、全員も固まった。

 そして、その層となったごみの中にちりばめられて挟まっている、ある物が目に入った。作業員全員が瞬時に理解し、ごみの山に背を向け天を仰ぐ。

 そう、「尿ペ」だ。

 尿ペが、たっぷりレーズンパンのレーズンくらいの割合でちりばめられている。これにはさすがに、冗談好きの社員も口をつぐんでいる。

 しかし、もう蓋は開いてしまったのだ。やるしかない。

 ごみの方に振り向き、屈伸を一つして作業開始。

弧を描いてほとばしる尿

 頭の上まで積もっているごみを上から崩していく。

 ベースは弁当がら。その中にエロ本、酒瓶、服、生ごみ、尿ペが定期的に出てくる。ごみ屋敷の総合商社となっていた。最強レベルのごみ屋敷だ。

 底知れないごみ屋敷を前にひるんでいたが、こっちも完全防備で戦う準備はできている。全員がペースを上げる。

 と、社員が尿ペを持ち上げた瞬間、日光で劣化したペットボトルの蓋が砕けた。

「あっ!!!」

 ペースを上げていたのが仇となって、振り上げた手を止められない。そのままペットボトルに入っていた尿が飛び出し、弧を描いてその社員を包んだ。

 全員が彼を見つめる。

 野球漫画で敵にホームランを打たれた瞬間の、チームメイト全員の「あっ」顔のどアップのコマを想像してほしい。次の見開きページには、弧を描いた尿を浴びる社員の姿だ。

「大丈夫ですか?」と言う間もなく、防塵マスク越しでも鼻に突き刺さるとんでもない激臭。アンモニア臭に苦味を混ぜたような臭い。

 頭から浴びた社員が慌てて防護服を脱ごうとしている。うちで使っている防護服は、防塵性は高いが、防水性はそこまでない。防護服の下は自前の服なので、染み込んだら終わりだ。

〈 《闇が深い》ゴミ屋敷から出てきた「尿入りペットボトル」は500本…ヤバい現場を作った「まさかの人物」の正体 〉へ続く

(柴田 賢佑(六六三六)/Webオリジナル(外部転載))

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