ファン50人が集結! 「第1回箱根そばフェス」は、“箱根そば愛”あふれるイベントだった
文春オンライン / 2024年7月2日 11時0分
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手作り感満載の「箱根そばフェス」
2024年6月18日、神奈川県海老名市の小田急海老名駅に隣接する「ロマンスカーミュージアム」内の「ビナキッチン」で「箱根そば」のファンイベント「第1回箱根そばフェス」が開催された。駅そばで同業の「しぶそば」が2022年にファンイベントを開催して話題となって以来、「箱根そば」でも是非イベントを開催して欲しいとの要望もあったという。
今回、取材し座談会に参加することができたので、どんなイベントだったのかを紹介し、どんな将来像を思い描いているのかを探ってみることにした。
今回、参加したファンは50名。参加者は駅そばファン、鉄道愛好家などに加え10代の学生、20代の女性グループや女性の単独参加者、30~40代前後のカップルなど多彩な世代が集合した。全体に若い参加者が多いことが印象的だった。
「箱根そば」は株式会社小田急レストランシステムが経営する主に小田急線沿線に42店舗を構える駅そばチェーン店である。昭和40(1965)年8月に 小田急新宿駅7番線ホームに開業した。新宿駅にある「箱根そば本陣」は1日2000人が押し寄せる人気店である。
今回のフェスのテーマは?
株式会社小田急レストランシステム取締役の清水一洋さんに話を聞くと、今回の「箱根そばフェス」のテーマは「箱根そばの未来に向けて~沿線ソウルフードのリレーション」だという。リレーションはお客様との結びつきの継続ということである。
イベント会場の「ビナキッチン」は駅前すぐ。小田急小田原線と駅を俯瞰できる好立地。18時30分に、清水一洋さんと開発・営業推進部の長谷川真也さんによる開催宣言でスタートした。代表取締役社長の深海尚さんから挨拶があり、参加者への感謝とともに、お客様の箱根そばへの愛に応えるため、これからも進化し続けるとの決意を語っていた。
しぶそばも友情出店
株式会社小田急レストランシステムが「箱根そばフェス」を行う上で大いに参考になったのが株式会社東急グルメフロントが開催した「しぶそばナイト」。実は「箱根そば」、「しぶそば」、「えきめんや」などはライバルというよりは、同じスタンスにいる友人のような関係で情報の交流も多いという。今回「しぶそば」が独自商品やコラボ商品の出張販売を行った。友情出店というわけである。
全員参加の「箱根そばクイズ」
まず「箱根そばクイズ」が行われた。出題内容はかなりカルト系。その一部を紹介する。
1.駅のホーム上にある店舗はどこ?
2.駅改札内にある店舗は何店舗?
3. 50周年記念で販売した特別メニューは何品?
4. 「やっこさん」の現在の年齢は?
相当難易度の高い出題だが、なんと11問中9問正解した達人がいたというから驚きだ。採点中、食事タイムが用意されて思い思いのメニューを楽しんでいた。
4名による決勝は、
・箱根そばもりつゆ当てクイズ(箱根そば、しぶそば、市販のもりつゆの飲み比べ)
・かき揚げ天に入っている具材3品を当てるクイズ
・キャラクタークイズ(現在と昔の「やっこさん」キャラクターで変わらなかった顔の部分はどこか当てる)
という内容で、20代男性が優勝。小田原店長とねぎの8g量り頂上対決でも勝利し、大きな拍手が送られた。
参加者の感想は「箱根そばダイスキ」が圧倒的
何名かの参加者からも今回のイベントの印象などを聞いてみたのでその一部を列記する。10代の学生さんが参加していたこと、さらに立ち食いそばの達人でgori.sh's [立ち食いそば紀行]を主宰する青木剛理さんが最前列にいたのには驚いた。
・40代男性(1人で参加)
20代の時、小田急でバイトしていて先輩に「箱根そば」を教えてもらってからずっと食べている。今は週1~2回くらい。慣れ親しんだ味で「かき揚げ天そば」が大好き。イベントに参加できてうれしい。
・20代女性(2名で参加)
「箱根そば」は大好き過ぎて、今は週5回くらい。手頃な値段でおいしいし、短時間でさっさと食べることができて幸せ。別の女性も週1くらいで利用している。駅そばは好きで、特に箱根そばは好き。
・50代女性(1人で参加)
沿線でずっと仕事している。「箱根そば」歴はもう30年。もう生活の一部。おつゆも天ぷらもおいしい。このイベントでもたくさん食べたい。本当にお世話になっている。
・40代カップル
駅そばは好きで「しぶそば」も好き。「箱根そば」は手頃だし、結構話題にもなる。イベントに参加できて嬉しい。来年の60周年イベントもできれば参加したい。
・10代の中学1年生と高校1年生の友人
小学生の頃、親に連れてきてもらって「箱根そば」を食べて好きになった。それ以来一緒に食べに行ったり、別々に食べて報告している。海老名でイベントがあると聞いたので参加してみた。そばはたくさん食べた。鉄道も好きだし参加できてラッキー。
・立ち食いそばの達人でパズル作家のgori.shさんこと青木剛理さん(1人で参加)
楽しかった。「箱根そば」のマニアックな情報から、普通は聞けないような秘密の話まで盛りだくさん。来年の60周年でも何か考えているようで今から楽しみ。
座談会「未来に向けて駅そばには何が必要か」を開催
クイズが大いに盛り上がった20時過ぎから、メインイベントの1つ座談会「未来に向けて駅そばには何が必要か」を開催した。筆者も司会進行で参加した。登壇者は次の4名。
・株式会社小田急レストランシステム箱根そば事業部長、櫻沢達也さん(箱根そば全般のかじ取りをされているキーパーソン)
・株式会社小田急レストランシステム箱根そば第一事業グループ支配人、今若直樹さん(立ち食いそばの大ファン)
・株式会社東急グルメフロント部長、浅野豊彦さん(しぶそば全般の仕事に係る達人)
・京急ロイヤルフーズ株式会社取締役、若林義明さん(あの「そばゲティ」の産みの親、えきめんやの販促企画の要)
4つのポイントを重視
「未来に向けて駅そばには何が必要か」という問いに対し、事前に協議した結果、4つのポイントを重視した。
全員とも横断的に交流があり、ざっくばらんなフリートークのような雰囲気で討論は進んだ。それぞれの項目に対し、意見交流があったので要約して掲載する。
1.フレンドリーな立ち位置(イメージ作り、愛称、キャラクターなど)
・箱根そば:櫻沢達也さん
短時間で利用される駅そばだが、「箱根そば」は今後も沿線に愛される店として、真摯に対応していくことが大切。キャラクター「やっこさん」も沿線の方に慣れ親しんでいただいて来ていると思う。小田急電鉄のキャラクター「もころん」にも登場してもらい、若い世代や広い世代にアピールして行きたい。
・しぶそば:浅野豊彦さん
「しぶそば」ではとにかく優しい「しぶそば」を目指すということで、キャラクターの「しぶくまくん」や東急電鉄のキャラ「のるるん」などをフル活用して、SNSなどでも情報発信している。最近は女性客も増えている。ゆっくり座れる店、明るく衛生的で、息抜きできるような工夫を常に考えている。
・えきめんや:若林義明さん
数年前、「そばゲティ」というメニューを開発した時、やはり、情報発信が必要だろうということで「そば親父」というキャラクターを考案し、SNSで積極的に情報発信するようにした。その結果、認知度が上がり活性化につながった。お客様とともに感動体験を共創していくことが我々の基本的な姿勢であり、フレンドリーな立ち位置は極めて重要である。
2.飽きの来ない新しい取り組み(季節メニュー、コラボメニューなど)
・箱根そば:今若直樹さん
幸いなことに、「豆腐一丁そば」やカレー味の「コロッケそば」などお客様には広く認知されており、楽しみにしているという声をよく耳にする。沿線の食材などを使った季節メニューの開発や他社とのコラボメニューなどの展開を今後とも増やして行きたい。メニュー開発はかなりの人数で行っている。
・しぶそば:浅野豊彦さん
幸いなことにコラボメニューの開発や新そば祭など、インパクトのあるメニュー提供ができている。季節メニュー開発は少数精鋭で行われており、まさに飽きのこないように心がけている。
・えきめんや:若林義明さん
沿線の店では差別化を図る意味で、絶え間なく飽きのこないようなメニュー開発を断続的に行っている。他社に比べて新メニュー開発はかなり頻度が高いかもしれない。メニュー開発は弊社でも少数精鋭で行っている。三浦市のまぐろ料理の名店「くろば亭」さんもバックアップをしてくれた。「ラウンジカレー」も上質な味で好評だった。「そばゲティ」のような異色のメニューもどんどん開発していきたい。
3.クオリティUP(バラツキの改善)
全員一致の意見として、店ごとそして時間による味の均一性などをどう進めるかは各社とも重要な案件で、普遍的な課題であり絶えず進めていく。
4.顔がみえる店(イベント、認知度アップなど)
・箱根そば:櫻沢達也さん
今回ご参加の皆様から直接ご反応やご意見を賜り多くの収穫があった。「箱根そば」は来年60周年を迎える。先人達の努力の賜物を大切にしながらこれからもより大きく育てていくという意味でも、お客様の顔が見えるイベントは大いに役立つし、私ども社内でのモチベーションも上がる。
・しぶそば:浅野豊彦さん
イベントのきっかけは「しぶそば」をもっとエモーショナルな店にしたいという社内の思いがあった。自分を磨き、仲間と力を合わせて楽しい職場を実現し自分たちの未来に向かって努力し続けるためにも、イベントで独自色を出していく。マスコミに取り上げてもらうのも重要だ。
・えきめんや:若林義明さん
顔がみえる工夫は極めて大切。そうした意味でイベントを行うことには意義がある。検討していきたい。
座談会の結論は…
座談会の結論として「駅そばはお客さんとのつながりを忘れてはいけない」ということになった。駅そばはお客さんにとってもう1人のトモダチでもある。そのつながりは何よりも大切なものである。
楽しい時間はあっという間に流れ、「箱根そばフェス」も大盛況のうちに幕を閉じた。最後に経営陣からイベントの感想を聞いたので紹介しよう。
・代表取締役社長の深海尚さん
このイベントで大勢の箱根そばファンがいるということが実感でき、そのパワーにとても感動している。箱根そばでの当社の取り組みが報われる瞬間でもある。これからも商品の品質やサービスに一層の磨きをかけ、小田急沿線のソウルフードであるとの自負を抱きながら、さらなる箱根そばの成長を図っていきたい。
・取締役営業本部長の依田秀さん
箱根そばファンにお集まりいただき本当に感謝している。大きなパワーがあると思う。商品開発など今後どう進めていくか重要だ。ブロックごとに季節メニューや新メニューを展開することも重要になるかもしれない。今日の情報を収集分析し、今後の展開に反映させていきたい。
・取締役営業支援本部長の清水一洋さん
今回のイベントの参加者の皆様から発せられる「箱そば愛」をひしひしと感じ取っている。本当にありがたいことである。2年前「しぶそばナイト」に参加して「箱根そばもイベントやります」と宣言してから、ずっとアイデアを練ってきてようやく開催することができた。キャラクターの「やっこさん」も来年は60歳。「箱根そば」も永遠に続いていく。応援をこれからもよろしくお願いします。
「箱根そばフェス」に参加して分かったこと
イベントの面白いところは、普段会話などできない経営陣と利用客が一堂に会し、雑談したりクイズなどして交流することである。そこにはマスの数字をみているだけではサルベージできない個人として参加した人達の意見があり、イキイキと「箱根そば」を応援してくれる姿を現実に目撃することができた。
昭和40年に創業し小田急沿線で徐々に増えていった「箱根そば」が立派に沿線に愛される姿がそこにあるわけで、そしてこれから100年も200年もその愛される姿を守り続けていくことになるのだと思う。手作り感満載の「箱根そばフェス」は今後も続くと思う。楽しみである。
INFORMATIONアイコン
「名代箱根そば」
https://www.odakyu-restaurant.jp/shop/hakonesoba/hakonesoba/
(坂崎 仁紀)
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