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同じ少年を好きになった仲良し双子姉妹、初めての恋の結末は…? まばゆさにあふれたタイの青春映画

文春オンライン / 2024年6月28日 17時0分

同じ少年を好きになった仲良し双子姉妹、初めての恋の結末は…? まばゆさにあふれたタイの青春映画

タイ東北部ののどかな町ナコーンパノムを舞台に、双子のひと夏の恋と成長が描かれる ©2023 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved / ReallyLikeFilms

 いま、タイの若手監督と、その作品を手掛けるレーベル“GDH”が熱い。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(17年)など、世界の注目を集める映画を制作しており、本作もその一本となる。

 また、この作品のプロデューサーはモキュメンタリー・ホラーの『女神の継承』(21年)のバンジョン・ピサンタナクーン監督。とはいっても今作はまったくホラーとは縁遠い内容だ。

祖母の元に身を寄せる中学生の双子姉妹

『ふたごのユーとミー』は、瑞々しい青春映画である。観終わって久々にクラクラしてしまうほど、可愛らしいまばゆさにあふれた作品だ。タイの田舎という、木々も風も湖もすべて、爽やかさで透徹している自然のなかに、双子の少女がやってくる。

 時代は2000年問題に揺れる時期で、彼女たちはユーとミー。一卵性双生児でずっと仲良く暮らしてきた中学生の姉妹。違いはミーの頬に薄いほくろがあるくらいだ。

 二人は食べ放題を一人分の料金で入れ替わって二人で楽しんだり、ユーの数学の再試を、得意科目であるミーがすり替わって受けたり、お互いの人生を分け合うように生きてきた。

 しかし父の借金で両親が不仲となり、二人は祖母の元に身を寄せることになった。そこで一人の少年への初恋を巡って、初めて二人は心がすれ違うようになってしまう。

とにかくティティヤーの演技が素晴らしい

 監督は双子姉妹のワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット。主演のユーとミーを一人二役で演じるのは、新人俳優ティティヤー・ジラポーンシン。彼女はピサンタナクーン監督が、知人のインスタで見かけて抜擢した期待の新星だ。

 とにかくティティヤーの演技が素晴らしい。もちろん映画技術の、双子が同じ画面にいる違和感がない映像技術も発達しているが、ティティヤーは双子の微妙に異なる性格を、微細に演じ分けている。

 ユーは健康的で明るく、ミーの方が心の成長が早く客観性を持っているように見える。

 お互いに気遣いをしつつも、初恋を巡って初めてぎくしゃくする、双子の思春期の戸惑いがとても自然体なのだ。

成長のモチーフとして初潮も描く

 双子の女性監督ということもあり、ひとつのモチーフとして経血が登場するので、男性観客はドキッとするかもしれない。だが同じように成長しても、どこか大人びたミーの方が早く初潮がきている、というのは双子にとっておそらくとても印象深い事柄なのだ。

 初潮は体つき以外にも心の発達とも密接に関わっている。途中、ユーは「どうしてミーの方がモテるんだろう」と不思議がる。

 ティティヤーは同じ顔立ちと体つきなのに、ミーを演じる時は男の子が目で追ってしまうような、落ち着きをもった少女としての魅力を放つ。確かに同世代の男の子にとって、大人びたミーのほうが異性として意識させる、謎めいた雰囲気がある。

演出の粘りも相当なもの

 それにしても双子がいる場面の演出がとても精緻だ。

 ミーまたはユーとしてティティヤーの顔が映っているとき、横に顔が見えないダミーの少女を置いて、それを反対からも撮るのを繰り返したかと思うと、監督たちの演出の粘りも相当なものだ。

 ぜひもう一度観て、映像の技術面も確認したい。

『ふたごのユーとミー
INTRODUCTION
 本作が長編映画デビューとなる監督、ワンウェーウ・ホンウィワットとウェーウワン・ホンウィワット。彼女らもまた、この物語の主人公たち同様の一卵性双生児の姉妹だ。
 双子の監督ユニットが、双子を題材にした作品を扱うことは、長い映画史の中でも非常に稀有な例であると言える。
 対して、主人公のユーとミーを演じるのは、新星ティティヤー・ジラポーンシン、ただひとり。演技経験ゼロから始めて、見事に一人二役を演じきった。

STORY
 中学生のユーとミーは一卵性双生児の姉妹。生まれた時からどんなことでも一緒にシェアして、乗り越えてきた。絶対的信頼関係で結ばれたふたり。
 しかし、色白でハーフの素敵な男の子、同級生のマークが彼女たちの前に現れると、今までとは違った時間が流れはじめる。シェアすることのできない“初恋”という感情に揺れるユーとミー。彼女たちの恋と成長の夏がくる。

STAFF & CAST
監督:ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット/出演:ティティヤー・ジラポーンシン、アンソニー・ブイサレート/2023年/タイ/122分/配給:リアリーライクフィルムズ/6月28日公開

(真魚 八重子/週刊文春CINEMA 2024夏号)

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