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「NewJeans」に込められた“ニッポン人が知らない意味”とは?〈現地評論家が解説〉《“史上最速”の東京ドーム公演に9万人が熱狂》

文春オンライン / 2024年7月13日 17時0分

「NewJeans」に込められた“ニッポン人が知らない意味”とは?〈現地評論家が解説〉《“史上最速”の東京ドーム公演に9万人が熱狂》

NewJeans。左から、ダニエル、ヘイン、ヘリン、ミンジ、ハニ(NewJeansのインスタグラムより)

〈 SPEED、SMAP、宇多田ヒカル…韓国の音楽評論家が解説する、「NewJeans」から感じ取れる“日本の音楽シーン”とは 〉から続く

 6月26日、27日に行った東京ドーム公演で、9万人を熱狂させた5人組ガールズグループのNewJeans。デビューから1年11か月という、海外アーティストによる東京ドーム公演実施の最速記録を打ち立てた。日本でこれだけの熱狂を巻き起こしている理由とは、一体何なのか。韓国の大衆音楽評論家ファン・ソノプ氏が読み解く。

 5人のメンバーが他のガールズグループとは一線を画す存在であるワケ、そして、「NewJeans」というグループ名が意味するものとは?(全2回の後編/ はじめから読む )

翻訳=金敬哲

◆ ◆ ◆

 NewJeansのすべてのコンセプトをプロデュースするのは、K-POP界の「ミダスの手」(※ギリシャ神話に登場するミダス王が、手に触れたものを全て黄金に変える力を神から授かったということからのたとえ)とも呼ばれるほどの敏腕プロデューサー、ミン・ヒジン氏。

デビュー曲をいきなり全世界に公開した

 楽曲制作を多数の作曲家に頼るのではなく、音楽プロデューサー・250(イオゴン)氏を中心とした少数精鋭のチームに一任する形をとったのも、ミン氏の決定だった。プロモーションを一切することなく、いきなりデビュー曲「Attention」のMVを全世界に公開するという大胆な戦略にも出た。

 NewJeansのコンセプトや曲の方向性などがミン・ヒジン氏の感覚に全面的に依拠しているという点は、徹底的に分業化された現在のK-POPシステムとは一線を画している。「少女時代」などが所属する老舗芸能事務所・SMエンターテインメントのイ・スマンプロデューサーや、「KARA」を生み出したDSPのイ・ホヨンプロデューサーのような、卓越している制作者1人によって統括された、ある意味で昔ながらのK-POPのように思える。

 NewJeansに対する大衆の熱狂は「脱K-POPの公式で作り出した新しいK-POP」が生んだものだろう。韓国でも既存のK-POPファンを超えて全世代を網羅するような絶大な人気を博しているNewJeansだが、日本でも同じく、社会的現象になりつつあるようだ。

■日常にある“自然さ”を追求するメンバーの魅力

 NewJeansはガールズグループの系譜から見ても特別な場所に置かれる。「あこがれの女性」「疑似恋愛の対象」といった側面が強かった第1~2世代グループや、ガールクラッシュという自分を表現する力強さをもったサウンドが中心となった第3~4世代とはまた別のアイデンティティを持っている。

 自然さと率直さ。これをベースに作られた音楽や、メンバー5人の素朴な姿は、これまでのK-POPグループと比べると、まったく新鮮なものとして映る。

5人のメンバーの特徴は…

 ミン・ヒジン氏が最初にNewJeansのメンバーに選んだほどのオーラを持ち、日本語が最も堪能な最年長のミンジ。愛らしいビジュアルながら、楽曲テーマに合わせて変化に富んだキャラクターを見せてくれるハニ。

 オーストラリア人の父と韓国人の母をもち、華やかなビジュアルとともに多彩な声のトーンで音楽に力を加えるダニエル、猫のような特徴的な瞳で、韓国では「天上アイドル」とまで呼ばれるヘリン、170cmの長身で、長い手足から生み出される優れたダンスラインと、魅惑的な歌声を持つヘイン。ひとりひとりを見れば個性あふれるメンバーだが、何よりも重視されるのは「チーム」としての姿だ。

 特別に目立つ「センター」のメンバーが決まっているのではなく、あくまで自然に、雰囲気が似ている少女たちが集まって舞台を楽しむ。その姿からは、「ガールズグループ」というジェンダーの領域から抜け出し、「新しいK-POP」を表現しようとする意図がうかがえる。

■「K-POPというシステム」を超える存在へ

 彼女らがもう1つ証明しているのは、日本進出においてもはや日本人のメンバーが必須ではないという事実だ。

 K-POPアーティストの育成トレーニングは、ダンスや歌だけにとどまらない。練習生が学校を辞めてレッスンに励むケースも多いため、学業や人間性を育む指導も重要視されている。グループの発足時点から世界をターゲットにしてプロデュースが進められるので、語学も必須だ。NewJeansのメンバーも、日本語を習得し、日本のテレビ番組への露出やトーク場面を増やしている。しかし、NewJeansが日本進出でたしかな結果を残した理由は、それだけではない。 

 ミン・ヒジンというプロデューサーの唯一無二のセンス。ある一部の世代ではなく、すべての世代にアピールできるほどの存在感とアイデンティティを持ったメンバーたち。現実とのつながりを決して手放さないノスタルジックな音楽と映像、各国の文化的背景に対する理解をもとに、徹底してその情緒に訴えかけるような戦略……。

 これらが重なりあうことで、NewJeansは既存のK-POPシステムのさらに向こう側のグループへと着実に成長しているのだ。

「NewJeans」というグループ名に込められた意味

 グループ名の「NewJeans」とは“いつ着ても飽きない、毎日求められる、ジーンズのような時代のアイコンになる”、“New Genes(新しい遺伝子になる)”という意味が込められている。そこには、単なるアイドルグループではなく、“普遍的な大衆文化そのもの”を目指すという、たしかな覚悟と野心がみえる。

 NewJeansという歴史は、まだ始まったばかりだ。

(ファン・ソノプ,金 敬哲)

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