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「富士山が…」国立市マンション、異例の解体はなぜ? 「積水ハウス」社長&副会長を直撃!

文春オンライン / 2024年7月1日 7時0分

「富士山が…」国立市マンション、異例の解体はなぜ? 「積水ハウス」社長&副会長を直撃!

解体のお知らせ

「確かに国立市の住民の方々は景観に対する意識が断トツに高く、住宅販売でも相当気を遣う。ですが用地取得も順調だと聞いていたし、建築許可も下りていたのに、まさかこのタイミングで取り壊しとは」

 積水ハウスのある営業幹部はこう驚く。

◆◆◆

「史上初ではないか」と語る異例の事態

 6月11日、積水ハウスが東京都国立市の分譲マンション「グランドメゾン国立富士見通り」の突然の事業中止を発表した。10階建てで総戸数18、販売価格は7000万円から8000万円台。すでにほぼ完成し、来月の引き渡しを待つだけだったが、「景観などについて検討が十分ではなかった」として解体するという。

 不動産コンサルタントの長嶋修氏も「引き渡す間際に解体するのはマンション史上初ではないか」と語る異例の事態。問題となったのは富士山の眺望だ。

 問題のマンションは国立駅から南西に伸びる「富士見通り」沿いの約800メートルの地点にある。富士見通りは文字通り富士山の眺望で知られ、「撮影しに来るマニアも多い」(近隣住民)。国立市に在住歴のある詩人の故・草野心平も、富士見通りの風景を詩の一節に残している。

〈道路の真正面にまっぱだかの富士がガッと見える〉

 記者が実際に富士見通りから富士山の方向を見てみると、ちょうど問題のマンションが“まっぱだか”のはずの富士山を半分隠すように立ち塞がっていた。

 だが、着工前に積水ハウスが開催した住民説明会の参加者はこう語る。

「眺望権についても議論になりましたが、積水の担当者は聞く耳を持たない感じでした」

遅きに失した“英断”

 積水ハウスといえば、売上高は3兆円を超える業界2位のハウスメーカー。なぜこんな騒動になってしまったのか。同社の堀内容介副会長を直撃した。

――事業中止の経緯を。

「竣工前から会社宛てに(反対の)お手紙をたくさん頂いていた。SNSでも批判があり、あのマンションが建つことに納得されていない方がいるのはずっと知っていました。積水ハウスとしてこれは本当にいいのかと、自主的に判断したということです」

――最終決断は社長が?

「もちろん社長も私も(この件を)知っていますけど、事業の規模的に担当役員(の決裁事項)ですよ」

 では、社長はどう答えるのか。仲井嘉浩社長を直撃すると、

「HPで開示している以上のことは申し上げられないので……」

 と、何とも歯切れが悪い。

 じつは仲井社長は6年前、積水ハウスが偽の地主にマンション用地代を支払った「地面師事件」を発端に当時の和田勇会長がクーデターで会社を追い出された際、52歳の若さで社長に担ぎ出された人物。そこで、こう聞いてみた。

――6年前の内紛から会社の意識が変わった?

「ガバナンス改革は当然、永遠の課題ですので、順次進めております、はい」

――そのことと今回の件は関係ある?

「いや、まったく関係ありません」

 改めて同社の広報に尋ねると、

「マンション事業部を中心に事業が進みましたが、こと遠景で富士山を見たときの影響は十分に検討されていないことがわかりました。(社内で反対論が特に大きくなったのは)5月、6月。(強く反対したのは)主に法務部です。本社各部や役員も交え合議で決定しました。地域に影響を与える建物を残せないという判断、これに尽きます」

 前出の長嶋氏が語る。

「今回は大きな会社だから中止にできたとも言えます。建設費や解体費に加え、民法上、売買契約を解除する際には売主が買主に手付金の倍額を支払う必要がある。土地の価値も相当下がるので、会社としては数十億円単位の損害となるでしょう」

 遅きに失した“英断”。その代償は大きかった。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年6月27日号)

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