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「美しすぎる髪が原因で陰口を叩かれたことも…」日本人が知らない「髪専門パーツモデル」の“お仕事事情”

文春オンライン / 2024年8月18日 11時10分

「美しすぎる髪が原因で陰口を叩かれたことも…」日本人が知らない「髪専門パーツモデル」の“お仕事事情”

髪の毛専門のパーツモデルとして活躍する宇佐見坂うさりさんに話を聞いた ©橋本篤/文藝春秋

「1回も染めたこともないし、黒髪ロング以外の経験がないんです」――待ち合わせのときは、その“美しい髪”が目印になることも。髪専門のパーツモデルとして活躍する、宇佐見坂うさりさんのインタビューをお届け。知られざるそのお仕事内容とは? そして彼女の美髪が招いた「あるトラブル」とは…?(全2回の1回目/ 後編を読む )

◆◆◆

「市販のシャンプーはほぼ使ったことがない」

──髪の毛のパーツモデルさんには初めてお会いしました。珍しいですよね。

宇佐見坂うさり(以下、宇佐見坂) そうですね。確かに、普通のモデルに比べて人口が少ないと思います。以前は大手のパーツモデル専門事務所もありましたが、そういった事務所も近年廃業したり、さらに減ってしまったイメージがあります。

──意外とギャラが安いらしい、と聞いたことがあります。

宇佐見坂 あまり知られていないんですが、パーツモデルって、時給制であることが多いんです。なので、それだけで生活するのは結構難しくて。ほぼ皆さん兼業なんじゃないかなと思います。それでも手のモデルさんは例えばアクセサリーから食品、医薬品まで結構お仕事の幅があるんですけど、私のような髪のパーツモデルは仕事も限定されてしまうので。

──シャンプーのCMとかですか?

宇佐見坂 はい。シャンプーやトリートメントといったヘアケア用品のCMが中心です。あと私は美容雑誌さんなどにおすすめケア商品の紹介や美容コラムを書いて原稿料をいただいたりもしています。

──昔からずっとロングヘアだったそうですね。

宇佐見坂 そうです。生まれてこのかた黒髪ロングです(笑)。2、3歳からずっとかな。1回も染めたこともないし、黒髪ロング以外の経験がなくて。

──一度も変えたいとは思わなかったんですか?

宇佐見坂 なかったですね。祖母も母も髪の毛がとてもきれいで、代々続く黒髪ロング家系だったのもあって。特に疑問も持たず、母たちに言われるがままに伸ばしていました。周りの人からも長い髪を褒められることが多かったので、切る必要を感じなかったのも大きかったです。

──小さいころから髪をずっと褒められていたんですか?

宇佐見坂 そうかもしれません。人より伸びるのが早く、3歳ですでに腰まで伸びていたこともあって、物心ついたころから、いつも髪が話題になりがちでした。「すごく髪がきれいな子がいる」と学校内で噂になっていたり、旅先で出会う人にも言われたり。生まれてこのかた髪だけは、褒められなかったことがない、というくらいです。

 学生の頃って、何かと悩むことが沢山あると思うのですが、私にとって「みんなに必ず評価してもらえる」髪が、自分の心を支えてくれていたんだろうな、と思うこともあります。

──髪がご自身のアイデンティティなんですね。

宇佐見坂 そうとも言えますね。「髪が本体」と言っていいくらいです。友人と待ち合わせしても、みんな私の髪を目印にしているので、帽子をかぶって見えなくしちゃったら気づかれないこともあるくらいなので(笑)。アイデンティティなんだと思います。

──当時からヘアケアにこだわっていたんですか?

宇佐見坂 母が美容師やサロン経営者の友達が多かったので、幼いころからサロンで直接買ったシャンプーやトリートメントを使っていました。生まれてからずっとそういう環境で育ったので、いわゆる市販のシャンプーはほぼ使ったことがなかったです。

──すごい子ども……!

宇佐見坂 特殊な環境ですよね(笑)。今はサロン専売のものもネットで買えるように流通も変わってきていますし、普通に雑貨屋さんなどでヘアケア用品買ったりもしています。それもあって、家に何本あるんだろう、というくらい、沢山のシャンプーやトリートメントがお風呂場に並んでいます(笑)。私が理系出身なこともあって、いろいろと実験するのも好きで、買ったトリートメントの成分表示を見て「この成分足したらどうなるかな」と思ったら、自分で薬品を買って調合して試すこともあります。

モデルになるきっかけは「友人の一言」

──ご自身で調合までするんですね! そもそもパーツモデルになった経緯はなんだったんですか?

宇佐見坂 元々子供のころから勧められていたのはあったんですけど、私の地元にはそういった事務所がなくて。決め手になったのは、上京して入った大学の友人から「髪のパーツモデルやったら良いと思うよ」って言われて。いいね、とその場のノリで携帯で事務所を検索して、そのまま大学の学食で応募書類用写真を撮って送ったんです。それから入所、CM出演と、トントン拍子に決まった感じです。

──よくある、髪の毛を手でかきあげてファサーッとやるやつですよね。

宇佐見坂 シャンプーのCMでよく見るシーンですね。そうです。

──髪のサラサラ具合を表現するためには、髪の重さも必要なんでしょうか。

宇佐見坂 そうですね。適度な重さや、髪一本一本のツヤ感も大切です。あと髪だけではなく、背筋などの筋肉や、腕の関節の柔らかさ等も必要になります。実はあの動作は髪が体にあたらないように思いっきり背中をそらす必要があって、結構大変な動きだったりもするんです。

──知らなかった……!

宇佐見坂 CMでは手や背中もよく映るので、背中が太っているかどうかもシビアにみられます。喉元の髪の毛を映すのに、二重アゴになっていたらダメ、とか、結構厳しいんです。

──画像修正できないんですか?

宇佐見坂 不可能ではないと思うのですが、動画だと結構難しい、と現場では伺いました。なので、二重アゴにならないように、下を向くときは首の根元からぐっと下を向くなど、ちょっとだけ特殊な動きも必要になったりします。腕や背中などにも同じようなちょっと特殊な技術があって、そういうテクニック等は勉強しました。

 趣味で3Dモデリングの勉強をしていたので、関節の動きやライティングを実際にモデリングソフトで試したりして、「ここからライトが当たると反射ってこう見えるんだ」とか、検証して身に付けたりもしました。

──理系っぽい……! ちなみに大学では何を専攻していたんですか?

宇佐見坂 一応、植物化学です。植物学や生化学が中心ですが、有機化学や微生物学等も学んでいました。髪が好きだったので、当時はこれらの学問を生かして、化粧品会社でヘアケア用品に関わりたいと思っていたこともありました。

就活のときは「でっかいメロンパンぐらいのお団子」を作った

──就活の時は、髪はどうしていたんですか?

宇佐見坂 しっかり固めて、でっかいお団子みたいな感じにしていました。当時も腰下くらいまで髪があったので、とにかく体積が大きくて。普通の女性は文字通りお団子、くらいの大きさなのに、私のはでっかいメロンパンぐらい(笑)。

──就活は男性も女性も画一的な服装が求められますよね。苦労しそう……。

宇佐見坂 結構大変でした。とても長い髪は良くも悪くも目立つので、お団子にまとめましょう、とマナー講師にも言われましたので、常にしっかりまとめていました。大人になって髪の毛がとても長いと、実は一般的、社会的な目ってあんまり良くないんだなと実感したのもこの頃です。

 それまでは「長くてきれい」なら褒められてCMなどの仕事になる、という環境にいたので。「きれいなロングだね」と言われるのって、だいたい胸元の長さぐらいまでらしくて。それより長いと「ちょっと異質」「気持ち悪い」という印象を抱かれることが、悲しいですが多いみたいです。

「きれい」と「きれいじゃない」の差ってすごくシビアなんだなと実感しました。特に清潔好きな方からの目は厳しいです。

──髪が原因で悪く言われることもあるんですか?

宇佐見坂 悲しいですが、たまにあります。友人からも髪のことで「異常だよ」「長すぎ」などと陰で言われていたことがあって……。私のような、腰やお尻まであるという長さの髪型を「スーパーロングヘア」というんですが、この髪型の何がマイナス印象になるのか、その時にちょっと周囲に聞いてみたことがありました。

 周囲の何人かに聞いてみたら、長すぎる髪は「だらしない感じがする」「清潔感がない」って言うんです。

──なるほど……。

宇佐見坂 でもそれって、なんとなくわかる気がして。たとえば「清潔感」ですが、髪の毛自体がホコリをどうしても纏いますし、そういう意味ではもともと清潔という概念から真逆のところに位置しているというのもわかる。たとえば飲食店で、髪をまとめてない店員さんにちょっと嫌だなと思ったり、みんな一度はあると思うんです。「だらしない」についても、毛先のばらついた、ぼさぼさの髪をただ伸ばしている姿を見て、見た目がちょっと嫌だな、と思ってしまう気持ちもわかる。

 それなら、どうすればスーパーロングを受け入れてもらえるのかと、モデルをやりながらずっと考えていて。一旦行き着いた結論としては、まず、私自身がTPOをわきまえた髪型をして、スーパーロングへの不快さを少しでも取り除くこと。次に、人一倍、髪の美しさに気を遣って、だれにも「汚い」とか「だらしない」と思われないくらい常にピカピカ、サラサラと誰もが「キレイ」って思うくらい、美しく髪を伸ばし続けよう、と。特に美しさについては、スーパーロングの印象を少しでも良い方向へ持っていけるように、という思いでケアを続けている部分もあります。

──かっこいいです。

宇佐見坂 とんでもないです。この2点だけしっかりできたらもう十分努力できていると思うので、あとは、何か言われたからといって、私自身があんまり深く考えなくてもいいかな、という。

──強い……! 陰口を言う人は、うらやましくて言っている部分もあると思います。

宇佐見坂 それについてですが、実は陰口を言っていたという友達からも、直接「実は髪のことで陰口言っていた。ごめん」とカミングアウトされたことがあって。その子はくせ毛の子だったのですが、「うらやましくて言っちゃったんだ」と言っていました。

 ただ、そのことがきっかけで、自分だけじゃなく、人の髪のケアにも目が向くようになりました。普段は使わないケア用品を試してみて「これよかったよ」と勧めてみたり。陰口言われて落ち込むよりも、その原因について全力でサポートしたいという気持ちになりましたね。

〈 《グラビアあり》「花粉や黄砂やホコリ、すべてが天敵です」“美しい髪専門モデル”が明かす同性から嫉妬されるほど「美しい髪の作り方」 〉へ続く

(市岡 ひかり)

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