〈150メートルのレールをのせて住宅街を走る〉貨物列車“表彰もの”の添乗記と「予想外の副産物」
文春オンライン / 2024年7月18日 6時0分
![〈150メートルのレールをのせて住宅街を走る〉貨物列車“表彰もの”の添乗記と「予想外の副産物」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_71810_0-small.jpg)
いただいた感謝状 ©文藝春秋
本サイトで連載、単行本になった 『貨物列車で行こう!』 が、日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)から感謝状をいただくことになった。「日々現業機関の社員が貨物列車の安全運行を支えていることを多くの読者に広めた」ことが理由だという。
社員以外は滅多に乗ることが出来ない貨物列車に乗せていただいただけでなく、貨物駅や車両所といった、これまた社員以外はほとんど立ち入ることができない場所に案内していただくなど、一方的にお世話になったのはこちら。なのに感謝状までいただくとは、恐縮するばかりである。
そして6月27日、著者の長田昭二さんと担当編集者の2人が、渋谷区千駄ヶ谷にあるJR貨物本社を訪ね、代表取締役社長の犬飼新さんから感謝状を受け取った。
賞状とあわせて“ありがたすぎる副賞”が…
これだけでもありがたいことなのに、何と副賞まであるという。これを聞いて長田さんの眼が妖しく光った。彼は部屋に入ったときから気が付いていたのだ。テーブルの上にあるものを。
「貨物列車を引っ張る電気機関車のNゲージ模型です。先頭の機関車の形式は現在の主力であるEH500、愛称は“ECO-POWER金太郎”です」と広報室長の中村愛さんがにっこり。
透明なアクリルのケースに入った模型は、細部まで精巧に作られていて、マニアでなくても、すごいものであることがわかる。長田さんの頬がゆるむ。長田宅の書棚には、長田さんが敬愛してやまない漫画家の東海林さだおさんの特製どんぶりが大切に飾られているが、この模型は、間違いなくその横に鎮座することであろう。
「カーブにくると自然と曲がる」貨物列車の知られざる輸送はまだまだあって…
贈呈式のあとは、かつて飯田橋駅近くにあった貨物駅「飯田町駅」の跡地にある、JR貨物が運営するオフィスビル「アイガーデンテラス」のイタリアンレストラン(ピッツエリア ピアット)での懇親会となった。
ここには、真貝康一会長や新旧広報室のみなさん、さらに取材当時、現場にいて取材に協力していただいた社員の方も駆けつけてくださった。
懇親の席では、「こんどはここを見てください」、「こんなに面白い路線もありますよ」と、夢のような企画をいくつもいただいた。
中でも、隅田川機関区区長の根来健人さんからは、こんな提案が。
「レールの輸送を見ませんか。150メートルある鉄道のレールが貨物列車で運ばれるようすは、信じられないくらい面白いですよ。何しろ、カーブにくるとレールが自然と曲がって、カーブを過ぎると元に戻るのですから」
鉄のレールが自然に曲がるだと?
普通は25メートルで作られる鉄道のレールだが、近年は騒音防止などのため、150メートルの長尺レールも作られている。作っているのは、あの“日本製鉄九州製鉄所”。日本でいちばん古い製鉄所だ。ここで作られたレールは工場から専用の貨車を使い、貨物列車で日本各地へと運ばれる。
「ちょうど本にも出てきた新金線を通ってレールが運ばれることがありますので、その時はぜひどうぞ」
新金線といえば、長田さんが住宅街をさまよい歩いた、あの路線。あんなところを150メートルものレールが通るのか。
「絶対行きます!」
長田さんは間髪を入れずそう答えていた。
かくして、『貨物列車で行こう!』の取材は、線路があるかぎり、どこまでも続くことになった。
「もう、こうなったら次回作は『貨物列車、全部乗った!』でいいんじゃないですか」
たっぷりのイタリアワインで出来上がった、じつに気持ちの良い夜であった。
(構成・担当編集者)
(「ノンフィクション」出版部/ノンフィクション出版)
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