1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「ちゃんとくわえろ」「舐めてよ」精神科病院の看護師が、患者に“おぞましい性的暴行”…神戸・神出病院で起きた“前代未聞の虐待事件”

文春オンライン / 2024年7月11日 6時0分

「ちゃんとくわえろ」「舐めてよ」精神科病院の看護師が、患者に“おぞましい性的暴行”…神戸・神出病院で起きた“前代未聞の虐待事件”

写真はイメージです ©アフロ

 2020年3月、兵庫県神戸市西区の精神科病院「神出病院」の看護師や看護助手ら6人の男が、患者への虐待容疑で一斉に逮捕された。看護の道を志して集まった彼らは、なぜ卑劣な犯行に手を染めたのか。閉ざされた病棟ではいったい何が起きていたのか?

「暗い雰囲気だった。人も、施設も」。事件当時、病院にいた看護師たちはそう振り返る。病院は今、新体制となり、全国でも先進的な医療を手がける精神科病院に生まれ変わろうとしている。

 ここでは、事件の背景とその後に迫った神戸新聞取材班の渾身のルポルタージュ『 黴の生えた病棟で ルポ・神出病院虐待事件 』(毎日新聞出版)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)

◆◆◆

神出病院の看護助手を強制わいせつ容疑で逮捕

 神戸をイメージさせる海もなければ、ハイカラな洋風建築も、石畳もない。市の最西部に位置する西区は、台地の上にニュータウンが広がり、緑豊かな谷あいに田畑や果樹園、牧場が点在している。静かで、のどかで、犯罪発生件数も少ない。そんな一帯を管轄する兵庫県警の神戸西警察署で、署員たちは2019年夏からピリピリしていた。

 というのも、その頃から若い女性が襲われる強制わいせつ事件が相次いでいた。お盆中の8月13日午後11時頃、帰宅してきた女性が自宅マンションのエントランスに入ろうとすると、後ろから近づいてきた男に突然、顔を手で押さえつけられた。かろうじて悲鳴を上げると、男は下半身へと手を伸ばす。だが、女性はショートパンツだったことから、男は胸を触って走り去った。

 1カ月後の9月、そして11月にも、帰宅中の女性が背後から男に抱きつかれ、下着の中に手を入れられたり、尻を触られたりした。

 神戸西署が捜査を進める。すると、11月の犯行現場で不審な動きをする男を、近くの防犯カメラが捉えていた。さらに8月の事件で、犯行現場に近い建物のドアに掌紋(しょうもん、手のひらの紋)が付着していたことがわかった。

 一連の事件の容疑者として1人の男が浮上する。それが神出病院で、看護助手をしていた当時27歳の田村悠介(たむらゆうすけ、仮名)だ。

 田村には、女性の悲鳴を聞くほど興奮が高まるという性的嗜好があった。最初はスカートの中にスマートフォンを差し込んで盗撮行為を繰り返していたが、やがて物足りなくなり、女性を直接襲うようになった。神出病院で看護助手としての仕事を終えた帰りに車で駅前などに立ち寄り、ターゲットを定める。女性が人通りの少ない場所に入ったことを確認すると、スマホの録音ボタンをオンにして、後ろから歩いて尾行した。

 その年の12月、神戸西署は強制わいせつ容疑で田村を逮捕する。押収したスマホには女性の悲鳴が多数収められていた。しかし、その悲鳴よりも捜査員を驚かせたのは、それとは別に保存されていた動画の数々だった。

押収したスマホから見つかったおぞましい動画の数々

「○○君、口、口」

「早すぎる、早すぎる。もう1回」

「舌入れな」

 再生すると、はやし立てる数人の男の声がした。

 50~60代の男性2人が襟をつかまれ、キスをさせられている。2人が神出病院の入院患者であることはすぐに察しがついた。

 別の動画では、再び同じ男性がベッドに仰向けになり、陰部にジャムを塗られていた。これにもあざ笑う声が入っている。

「ちゃんと吸ってや」

「ちゃんとなめてよ」

「ここ、ちゃんとくわえろって」

 別の男性患者がその陰部をなめる様子が映っていた。

看護師らが患者を集団虐待する前代未聞の事件

 事件の端緒が女性への強制わいせつだったこともあり、神戸西署には当初、これらの動画も田村が性的目的で撮影したのではないかという見立てがあった。ただ、動画から聞こえる嘲笑の声は、明らかに複数の人物が関わっていることを示しており、わいせつ行為よりも人間の身体をもてあそぶことが目的のように思われた。

 神戸西署は県警本部の捜査1課から応援を得て、捜査態勢を強化することを決めた。わいせつ事件をはじめ、殺人、放火、強盗、誘拐、立てこもりといった凶悪犯罪を専門に扱う捜査1課の捜査員を投入し、最先端の捜査技術も駆使して指揮命令系統を一本化させる。

 看護師らが患者を集団で虐待するという前代未聞の事件捜査はこうして始まった。

60代の男性患者を長期間にわたって監禁し…

 田村はスマホに全部で約30点の動画を残していた。

 このうちの1つには、逆さまにひっくり返された重さ100キロ近い柵つきベッドの中で、長時間にわたって監禁されている60代の男性患者の姿も映っていた。男性は檻(おり)のようになったベッドの落下防止柵のすき間から

「出してーな」

「何するんや」

 と悲痛な声を上げている。

 男性は食べ物への関心が極度に強いという特有の症状があった。

 田村たちが柵のすき間からポテトチップスの袋を見せると、体をばたつかせ、顔をゆがめて必死でもがく。別のすき間からは何やら尖(とが)った紙状のものを差し込み、男性の体を何度も突っついていた。

 よく見ると、わざわざ包丁の形に作った厚紙の模型だ。男性がおびえ切った表情で体をよじって暴れると、ベッドの床板が外れ、男性の体が押しつぶされた。

 スマホに残された撮影時間から、警察は監禁時間を26分間としたが、実際には少なくとも1時間半にわたって監禁は続けられたという。田村たちはひとしきり患者をからかった後、現場を離れ、時折様子をうかがいに来るだけだった。男性を助け出したのは同じ部屋の別の患者だった。

虐待行為は手を替え品を替え続けられていた

 動画に映っていた被害者は全員で7人。いずれも男性で重度の精神疾患があり、されるがままの状態だった。

 看護師らによる虐待行為は他にも手を替え品を替え続けられていた。

・病院のトイレで患者を裸にし、椅子に座らせて顔にホースで水をかけ、嫌がると洗面器で湯をかける。

・車いすの患者の頭に粘着テープを四重に巻きつける。

・球状に丸めた粘着テープを患者の頭めがけて投げつけておびえる様子を面白がる。

・患者の頭にゴム手袋をかぶせ、嫌がって外そうとする患者の両腕を2人がかりで引っ張ってもてあそぶ。

・シリンジ(注射器)を水鉄砲のようにして患者の顔に水をかけ、悲鳴を上げて嫌がる様子を見て楽しむ。

・患者の腕を引っ張って別の患者を殴らせたり、ベッド上で患者の体に別の患者を乗せたりし、抵抗すると押さえつけたり、鼻に指を突っ込んで引っ張ったりする。

 県警は動画を解析し、右のような、

「7つの暴力行為、3つの性的虐待」

 を特定した。病院から撮影日の勤務態勢がわかる資料を提出させ、行為に関わったとみられる人物を絞り込む。起訴するか否かを判断する検察と打ち合わせをして、送検容疑を確定させた。

〈 「体を押さえ、無理やりキスを…」神戸の精神科病院で、看護師が患者に強制わいせつ→事件発覚後に病院側が取った“驚きの対応”とは 〉へ続く

(神戸新聞取材班/Webオリジナル(外部転載))

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください