「クビとって飛ばしてやる!」木原誠二氏が妻の元夫“怪死事件”捜査に激怒→取調べ中止に…“伝説の取調官”が明かす《木原事件》の内情
文春オンライン / 2024年7月7日 11時0分
![「クビとって飛ばしてやる!」木原誠二氏が妻の元夫“怪死事件”捜査に激怒→取調べ中止に…“伝説の取調官”が明かす《木原事件》の内情](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_71886_0-small.jpg)
木原誠二前官房副長官 ©文藝春秋
〈 「あの女は鬼畜です」「夜中に電話で『刺しちゃった』と…」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”に新証言…“伝説の取調官”が掴んだ驚きの事実とは 〉から続く
2006年4月10日、都内の閑静な住宅街でひとつの「事件」が起こった。その日、不審死を遂げた安田種雄さん(享年28)は、木原誠二前官房副長官の妻X子さんの元夫である。事件当時、X子さんは「私が寝ている間に、隣の部屋で夫が死んでいました」と供述したという。通称「木原事件」と呼ばれるこの“怪死事件”を巡り、1人の元刑事が週刊文春に実名告発をした。
「はっきり言うが、これは殺人事件だよ」
木原事件の再捜査でX子さんの取調べを担当した佐藤氏は、なぜそう断言するのか。捜査を進めるなかで、どんな情報を掴んでいたのか──。ここでは、佐藤氏が「捜査秘録」を綴った『 ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録 』(文藝春秋)より一部を抜粋して紹介する。(全4回の4回目/ 3回目 から続く)
◆◆◆
「国会の召集日までに取調べを終わらせろ」
木原氏については、政治家としての力を行使して捜査を止めたという疑惑を「週刊文春」が報じている。実際のところがどうだったのか、俺には知る由もない。ただ、捜査中の木原氏については、こんなことがあった。俺が書けるのはその事実だけだ。
2018年10月に始まったX子の取調べは、もともと約2週間が期限だと言われていた。具体的には10月9日から24日まで。その間にX子から何らかの重要な供述を取ることが求められていた。
その理由は、木原氏が「国会の召集日までに取調べを終わらせろ」と捜査幹部に話していたからだと聞いている。
「国会が始まれば、妻の取調べの間、子供の面倒を見る人間がいない」
と、いうわけだった。
取調べでは、X子はそれを終えると警視庁本部からタクシーに乗って自宅に帰った。帰宅の際に木原氏と落ち合い、タクシーの車内で言葉を交わすことがあった。
捜査員はその際のドライブレコーダーの映像を回収して分析していた。あるとき、俺はその捜査員に、
「誠ちゃん。ちょっとこっちに来て、見てみ」
と、声をかけられた。
「俺が手を回しておいたから」
再生された20分以上の動画では、タクシーの後部座席に座った木原氏が、X子の手を握って言葉を投げかけていた。
「大丈夫だよ。俺が何とかするから」
「……」
「俺が手を回しておいたから心配すんな。刑事の話には乗るなよ。これは絶対言っちゃダメだぞ。それは罠なんだから」
この会話を見たとき、俺は「だよな」と思った。
なぜなら、もうX子は簡単には喋らないと思ったからだ。調べに対して「これを言ってはダメだ」と手を回されてしまえば、かなり厳しい状況になるからだ。
さらに頭を抱えたのは、木原氏が続けたこんな言葉だった。
「国会が始まれば捜査なんて終わる。刑事の問いかけには黙っておけ」
するとX子が「刑事さんが(木原氏のことを)『東大出のボンボンは脇が甘い』とか言ってたよ」と返事をした。木原氏はこう気色ばんだ。
「そんなもん、クビとって飛ばしてやる!」
この映像を見ながら、俺は思わず「おお、やってみろ。ボンボン」と吐き捨てたい気持ちに駆られていた。
大きな違和感
そうは言っても、国会が閉会する12月10日になれば、捜査が再開されるだろうと俺は考えていた。ところが、その目論見は外れることになった。
国会が始まる直前の10月下旬のことだ。
俺は当時の管理官から、はっきりとこう告げられたのだ。
「明日で取調べは終わりだ」
12年前の事件で物証が乏しいことは最初から分かっていた。だが、X子の調べが佳境を迎え、これから供述を揃えて証拠を探そうという矢先に捜査の中止が告げられたことには、大きな違和感が残った。
俺は捜査一課で100件近くの調べをやってきた。これだけ流れができていたのにもかかわらず、捜査が中止になるなんて経験は初めてだった。
(佐藤 誠/週刊文春出版部)
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