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「2位じゃダメなんですか」のはずが3位に…15年ぶりにフラグ回収した蓮舫さん(56)は、どこで失敗してしまったのか?

文春オンライン / 2024年7月8日 17時0分

「2位じゃダメなんですか」のはずが3位に…15年ぶりにフラグ回収した蓮舫さん(56)は、どこで失敗してしまったのか?

©時事通信

 「一人の政治家を有権者が選ぶ」という意味では日本最大の選挙区になっている東京都都知事選。蓋を開けてみたら無難に現職・小池百合子さん勝利でゼロ打ちでした。小池百合子さん、都知事当選おめでとうございます。また、すべての候補者、陣営の皆さま、また選管や警視庁、都庁・各自治体の皆さまも諸事ご対応賜りまして、ありがとうございます。お疲れさまでした。

 2位じゃダメなんですかの蓮舫さんが石丸伸二さんにまくられて3位転落という15年ごしの伏線回収もありました。ネットでも街角でも蓮舫さんを応援していた支持者の皆さんは、いまどんな気持ちなんでしょうか。

石丸伸二さんに勤労層無党派を奪われしんどい選挙戦に

 あまりに共産党に寄り過ぎて志位じゃダメなんですかって話なのかもしれませんが、自治体別の得票数で見ると小金井市、東大和市、清瀬市、日ノ出町、檜原村など東京都下の高齢化に悩む地域と島嶼部で2位蓮舫でした。まさに「昔の名前で出ています」的な高齢者に愛される蓮舫さんであります。

 逆に言えば、立憲や共産が支持層として恃む世田谷区や渋谷区、杉並区、武蔵野市などでも圧倒的に石丸さんに無党派を奪われて3位転落というのは想定していなかった事態です。

 都知事選6月20日の告示のはるか前、5月27日になぜか出馬表明してしまった元立憲民主党の蓮舫さん。国民からの風を受けて大きく羽ばたくかと思いきや……、蓮舫さんを実質的に担いだ日本共産党や有識者の会の皆さんの大型街頭演説攻勢、やらなきゃいいのに他陣営への演説妨害など、これだけの大型選挙に出馬した著名政治家であるはずの蓮舫さんの人気度は失墜してしまいます。

 もちろん、演説妨害などは蓮舫陣営がオフィシャルに仕掛けたものとは思いませんが、しかし蓮舫さんが公約を発表する前から共産党がフライングで蓮舫公約を標榜したビラを勝手に配ったり、都知事選とは無関係な共産党神奈川が蓮舫さんの写真付きで献金・寄付を求めたりと、まあ滅茶苦茶でした。

 かたや、安芸高田市長から転出して謎の都知事選立候補を敢行した石丸伸二さんが、選挙中盤から20代、30代の無党派層男性を中心に浸透して猛追。本来ならば、蓮舫さんががっつり確保しなければならなかった勤労層無党派を石丸さんに奪われてしまい、なかなかしんどい選挙戦になったのではないかとも思います。

 最終的には、現職知事として無難に失言なく選挙戦を大過なく終えれば勝てる戦いと割り切った小池百合子さんが、別に入れんでも良さそうな公務を選挙期間中に目いっぱい詰めるなどして都民有権者のエールに応え、小池さんが計291万8015票(得票率42.8%)という結果となり逃げ切り勝ちであります。前回より票数を減らしたとイチャモンもついてますが、まあ今回は勝てばいいんですよ、勝てば。

蓮舫さんはなぜここまで女性に人気が無かったか

 今回、蓮舫さん陣営の選挙対策にいくつか大きなミスがあったようにも感じられますが、告示前の情勢調査以降、一貫して蓮舫さんの問題となっていたのは「50代以下の女性からの圧倒的な不人気」にあります。有権者女性のおおむね4割以上の票を固めた小池さんに対し、蓮舫さんは2割弱の女性票しか集めることができず、逆に本来は改革派として絶対に欲しかった若者票を石丸さんに奪われての3位転落というのは切ないものです。

 もともと、小池百合子さんも女性都知事ですし、女性の進出・活躍を訴えることで躍進を遂げてきた蓮舫さんとその支持者にとっては、やりにくい相手であったことは間違いありません。「輝く女性である蓮舫さんが、男性社会の世の中を変え、女性有権者の自立と社会進出を後押しする」というジェンダー論的な男女対立を演出することができれば、蓮舫さんにとって非常に有効な社会を変えるメッセージにできたはずなのですが……。

 また、旧民主党時代の蓮舫さんによる事業仕分けと、そこでの名言「2位じゃダメなんですか」がいまだ有権者にとって鮮烈なイメージとして残ってしまっていました。もちろん、意味としては蓮舫さんは良いことを言っているのですが、有権者からすると相手を名指しで、指を突き付け批判する蓮舫さんの人物像を嫌悪している面があります。いわば、寛容ではない雰囲気が、有権者には感じ取れたのでしょう。

 結果として、告示後の情勢調査では、本来ならば蓮舫さんが万雷の拍手と共に蓮舫支持票になるはずだった無党派層・支持政党なしの都民有権者を、男性でほぼ2倍、女性で3倍以上小池さんに奪われてしまうという結論になったのです。

 他方、蓮舫さんの今回の都知事選で岩盤支持を示した層は、70代以上の男女でした。これは蓮舫さんが立憲民主党を離党し無所属として立候補するにあたり、立憲と共産党とで担いだことの余波とも見られますが、実は立憲支持、共産支持であるはずの女性有権者が、ほぼ4割、小池百合子さんに流れていってしまっています。

 あろうことか、立憲や共産支持層の女性のなんと4割が、小池百合子さんに投票してしまったのは、さすがにびっくりでして…。政党支持してくれている有権者の4割も相手陣営に流れるって、相当な不人気ですよ、これは。さすがにこれでは、蓮舫さんが勝てるはずがないのです。また、別の定例調査では、東京都での立憲支持層は約16%、共産党は8%から9%ほどと見られます。しかし、今回投票所にやってきた立憲支持層は10%、共産は4%と、かなりの立憲共産支持層が蓮舫さんに投票しないどころかそもそも投票所に来ませんでした。

 つまり、立憲や共産の党本部の偉い人からすれば、蓮舫さんこそ勝てる候補と見込んで、英断を促し都知事選に担ぎ出してみたら、本来味方の支持者であるはずの立憲・共産の両支持層がぐっすり寝てしまい、投票所にすら来なかったことになります。

 選挙期間中、あまりにもパネル調査の結果が悪かったのを知った立憲民主党の幹部の人たちが何度も電話をかけてこられまして、これはどうしたらいいのか、困っているという話をされましたが、時すでに遅し。私に言われてもねえ…。

蓮舫さんが繰り返した、大規模な街頭演説に意味はあったか

 結論から言えば、すでに蓮舫さんを支持している人がターミナル駅にガバッと集まって5,000人、1万人集めて街頭演説をしても、いまどこに投票しようか決めていないとか、迷っているとかいう有権者はほとんどそういう大規模な街頭演説には来ませんでした。

 今回の選挙でも「こんなに街頭演説では盛り上がったのに」とか「手ごたえはあったのにこの得票なはずがない」などの声も多数聞かれますが、基本的に、あなたがたが欲しい無党派層有権者はネットで政治のことを調べないし、ニュースをテレビで観ないし、街頭で候補者の演説を大混雑の中で汗かきながら見ないのです。

 蓮舫さんが喉から手が出るほど欲しかったはずの無党派層、若者からの支持・投票を得るには、大規模演説は効率が悪く、自己満足のようなものになってしまったのでしょう。

 結局、選挙期間外である立憲の参議院議員時代に、蓮舫さんはどれだけ都民と向き合って東京都内の駅前でミニ街頭や演説、集会を積み重ねてきましたか、って話になります。

 17年まで民進党代表を務め、知名度を生かして立憲の中では抜群の強さと影響力を持っているのですが、実際に投票するのは過半が「あんまり政治に興味がない人」なのです。そういう人たちが、この人に投票したいと思えるのかどうかの一番重要なファクターは「自分たちの近くにいる人なのか」「生活を良くしてくれるか」に他なりません。知名度ももちろん大事なのですが、その人に投票するストーリー、理由が重要なのです。

 知名度だけで言えば、確実に都民の間で劣る石丸伸二さんに抜かれて蓮舫さんが3位になるはずがないじゃないですか。

 今回、ネットパネルでは各社争点別のクロスを展開していますが、複数調査の数字を合計して傾向値を出すと、都の有権者のほぼ全年代の男女7割以上が蓮舫さんを「古い政党政治の候補者」と見ている可能性があります。まあ、実際その通りではあるんですけど。

 なので、蓮舫さんの訴える改革は、一般的な都民から見るならば、蓮舫さんが古い政治を改革をするのではなく、有権者からは「蓮舫さんは改革される側」と見られていることになります。いわば、街頭で蓮舫さんが頑張って「政治を変える」と力説していたとしても、有権者のかなりの割合が「お前が変われや」と思っているのでしょう。

 そして、おそらく蓮舫さんの選対を仕切った東京5区の立憲幹事長代理・手塚仁雄さんは、共産党との共闘を視野に入れるため、れいわ新選組には応援を実質的に求めず、連合東京とは実質的に手を切ってしまいました。よって、連合東京と国民民主党は、都民ファーストと一緒に小池百合子さんの応援に回ってしまい、オール東京どころかオール左翼になってしまったのは大変でした。

 蓮舫さんや著名な応援弁士による反自民・非小池という左派定番のアジるような批判的な街頭演説にせよ、フライングで配った蓮舫さんの公約にせよ、どれも古き良き野党しぐさであり、有権者にとっては自分の一票を託したいと思えるものではなかったのかもしれません。

都知事選の本当の争点は何だったのか

 結局のところ、今回の都知事選は事前の調査でも出口調査でも有権者の意向は「年金・社会保障」と「景気・雇用」がワンツーであり、次いで「防災・安全対策」「政治不信・カネの問題」「教育・子育て」「都市計画・渋滞、満員電車問題」、そして「少子化対策」「治安・生活安全」と、東京固有の問題が並んでいます。

 単独回答では経済がトップですが、都知事はお前ら都民の給料や年金を直接左右するような政策を実施できませんから、実質的には雇用(労働環境)や防災、社会保障と子育て教育あたりが政策面での争点となり主戦場となります。

外苑前再開発を都民は本当に問題視していたのか?

 調査にもよりますが、蓮舫選対がメディア対応も含めて争点に掲げた「外苑再開発」は、どの調査でも都民有権者にとっては割とどうでもいい話題に位置付けられ、主張の正当性はともかく少なくとも蓮舫さんの票にはつながらなかったと見られます。蓮舫さんや支持する市民の皆さまがこだわる「ジェンダー問題」も、都民にとってはあまり重要な問題とは位置付けられていないようです。

 告示前の立憲本部などの各政党の調査では、有権者に「外苑前再開発について、問題と感じるか」というパネル調査をやっていたようで、そこで6割近い都民から「問題だ」と回答を得たので、自信を持ってこの問題を争点に入れたと見られます。

 しかしながら、この手の争点の質問は落とし穴があり、質問を受ける側は「こういう話があるが、問題と思うか」と訊かれれば、割と素直に「問題だ」と回答するのです。これは、憲法改正だろうがコロナ対策だろうがモリカケだろうが「問題か?」と訊かれれば、だいたいの有権者が「それは問題だ」と応えるのと一緒です。

 ただ、そういう争点が「投票のきっかけになるか」「その争点に対する態度で投票先を決めるか」と言われると、他に大事な問題があったり、政治家に対するもっと総体的なイメージを抱いていたりすると、まったく無視されます。つまり、問題かどうかでの反応と、それが投票に繋がる問題なのかは別問題なのです。社会調査のむつかしいところは、メディアによる議題設定能力を過大評価することが往々にしてある、ということです。

 結果的に、高齢者対策や、雇用問題、防災、待機児童ほか子育て支援など、東京が優先して取り組むべき問題については、なんだかんだ現職知事である小池百合子さんが一通り全部手がけてしまっています。蓮舫さんからすれば、これらの重要な分野での具体的なマニフェストを提示することができなかったのでしょう。

 明確な政策を公約として蓮舫さんが打ち出せなかったため「いまの都政をより良くしてほしい」と考えている有権者からすると、小池百合子さんよりも蓮舫さんのほうが良さそう、と思うことができなかったのではないかとも思います。

◆◆◆

小池百合子都知事の選挙戦が盤石だったのはなぜか、そして都知事が抱える問題点とは…。 【続きを読む】「ゼッタイによい」「大好き」という層は多くないのに都知事選で圧勝した小池百合子(71)さんの“一番の問題点”について

〈 「ゼッタイによい」「大好き」という層は多くないのに都知事選で圧勝した小池百合子さん(71)の“一番の問題点”について 〉へ続く

(山本 一郎)

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