1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「ゼッタイによい」「大好き」という層は多くないのに都知事選で圧勝した小池百合子さん(71)の“一番の問題点”について

文春オンライン / 2024年7月8日 17時0分

「ゼッタイによい」「大好き」という層は多くないのに都知事選で圧勝した小池百合子さん(71)の“一番の問題点”について

©時事通信

〈 「2位じゃダメなんですか」のはずが3位に…15年ぶりにフラグ回収した蓮舫さん(56)は、どこで失敗してしまったのか? 〉から続く

 盤石の戦いを終えた小池百合子さんの一番の問題点は、今回特に明確でしたが「いまの都知事(のやってきた政策)は支持しているが、別に小池百合子は支持していない」という点です。

 言い方を変えれば、役職と人物とが有権者の評価からは切り離されていて、政策に満足はしているけど、小池百合子さんが良いとは思わない、という都民が2割ぐらいいて、その人たちが概ね小池百合子さんに投票しているのです。「まあいいか」ってやつでしょうか。

あまり愛されない小池百合子さん。それでも蓮舫さんよりは…

 いわば、現状にそれほど不満のない都民が現状維持票として小池百合子さんに仕方なく投票したのであって、どの調査を見ても「小池百合子さんが絶対に良い」「小池百合子さんが大好き」という層はそう多くありません(それでも蓮舫さんよりは愛されています)。

 裏を返すと、小池百合子さんが都知事選において都民から揺るぎない票数を得て圧勝しても、その小池さんを支える党である都民ファーストに関して言えば、小池さんとの関わりを相応に前面に出しているにもかかわらずたいして強くないのです。政党としての都民ファースト支持率は、今回投票箱まで来た都民有権者のわずか2%です。もっと来いよ。

 ある意味で「まあ小池百合子でいいや」というのが無党派を含めた1,153万人都民有権者の総意であって、なんか気に入らないことも起きるけど大過なく8年やってきたから再選でいいぞということなのかもしれません。

 小池百合子さんの都政対策においては、概ね都民は満足しており、たくさんの人口を抱える都市のガバナーとしては世間的にも穏やかな支持率を得ています。特に防災など都市機能のレガシーや子育て・教育政策、障害者支援などに加えて、特筆されるべきは全年代でコロナ対策の良さを都民は挙げています。

 これは小池百合子さん本人の手腕もあるのかもしれませんが、国のコロナ対策とは別に速やかに休業補償の枠組みを打ち出し、対策アドバイザーに大曲貴夫さんを抜擢して感染抑制には「新規感染1日100人未満に」と早期から具体的なプランを着地させ、これらを都民ファースト、公明党、自由民主党の都議会与党が無難に捌いていったからではないかと思います。

 小池さんの都政運営のスタイルは「アタクシはよく分からないけど、お前ら良きにはからえ」と適切な現場と議会に丸投げできていたから成果が出てるんじゃないでしょうか。

 なお、都民からすると東京オリンピックは無かったことになっています。

 びっくりするほど、誰も何も言わん。

 つまり「政治家としての小池百合子」はそこまで評価されていないが「都知事としての政策の評価」は割と高いので、小池さんは消極的だが幅広い層の都民の支持を受けて、無事に3選したということになるのです。

当初“泡沫候補”として軽視されていた石丸伸二さん、かく戦えり

 今回、泡沫かなと思って当初は軽視されていた石丸伸二さんが無党派を中心に強く伸び、特に争点として「政治不信」に反応する無党派ほど強く有意に石丸伸二さんに投票する傾向があったようです。

 圧倒的な知名度を誇る蓮舫さんを打ち破って、若い人(特に男性)から支持を得て、ジャイアントキリングした石丸伸二さんに注目は集まりますが、実は2014年都知事選でも田母神俊雄さんが若い人(特に男性)から人気を得て4位(約61万票を獲得)に入っているわけで、東京都知事選というのは「既存政党ではない、非自民の誰か」に投票する割合が一定数いる、と見た方が適切だろうと思います。

 もっとも、安芸高田市長を不評で一期でぶん投げ、現役首長として過激なことをYouTubeで喋ってたらドトール鳥羽創業者らが支援に回り、藤川晋之助さんのような強烈な選挙のプロが連れて来られて後ろに立ったので個人献金も集まって瞬間風速的に浮上しましたという感じです。事前の5,000万選挙資金の扱いや、本人の割と支離滅裂な政治主張が飽きられてしまうと、石丸新党が仮に出来上がっても量産型みんなの党みたいなのが出来上がるだけで長くは続かないのではないでしょうか。

 それでも、石丸伸二さんが20代30代男女を中心に幅広く支持を集めた背景には、前述「政治不信」を強く憂慮する、政治にまずまず関心のある有権者が既存政党への不信感をバックに石丸さんを応援した経緯があることです。その点では、先にも書きました通り蓮舫さんは改革する政治家というよりは改革される側の既存政党の人なのであって、実績はともかく言ってることは石丸さんに共感するという有権者が出るのも当然です。

 ただ、特に多摩地区や全年代層の女性からは石丸伸二さん自身は不人気で、途中から知名度が上がるごとに得票加速度が失速する傾向が顕著になりました。いろんな意味で、石丸さんからすれば人気のギリギリピークのところで投票日になったので、まあまあの票差で2位になれた、というのが実態ではないかと思います。

 そして、今回なぜか日本維新の会の東京では、石丸新党を応援するよという地方議員が現れ、揉め事を起こしていました。維新の風に乗って選挙に勝てた人たちが、維新の風が止んだら石丸新党に流れたさそうにしているのは人間の侘び寂びを感じずにはいられません。

 選挙期間中に出演したYouTubeチャンネルでは、石丸さんは「(国政進出)しない」意向を明言していましたが、開票速報では国政進出ありきで広島1区に出るぞ的な話をしていました。なんでそこで嘘をつく必要があるのか、よく分かりません。

 しかし古巣のはずの安芸高田市は広島3区であり、奇しくも同日選となった安芸高田市長選では反石丸伸二さんを掲げる藤本悦志さんが6,746票と5割近い差をつけて勝ってしまったため、俺たちの岸田文雄がご出馬される広島1区ではとても勝ち目はないんじゃないのかとも思います。

都議選は自民党勝利と言える内容だったのか

 28日の告示で9か所の選挙戦がスタートしたのですが、当初、自民党が9か所中8か所も候補を立ててしまい、3か所で都民ファーストと1議席を巡って争い共倒れの恐れが懸念されておりました。

 蓋を開けてみれば、苦戦が予想された板橋区では快勝するなど、府中市ふくめて自民は2勝しました。最低限許される勝ち鞍で終わったのではないかと思います。

 ただ、より大構造である都知事選での蓮舫さんが惨敗したため、せっかく立憲と共産で棲み分けたはずの都議補選は立憲1勝2敗、共産は0勝4敗に終わってしまいました。特に、告示直後の調査では優勢と見られた南多摩や中野、板橋、北ではおのおの都民ファーストや自民党候補者にまくられて敗北し、楽勝とされた足立区でも自民党候補相手に辛勝するなど、蓮舫さんの大苦戦・3位転落の余波で都議補選も苦労した印象です。

 同じ小池百合子さんを支える立場であった都民ファーストと自民党との間での候補者調整が上手くいかなかったことで、中野や北などでは危うく共倒れが懸念されていました。ただ、それを上回る野党陣営の自滅で取れる議席を落としたという点では、立憲民主党執行部や都連は責任問題になるのではないかとも思います。

 なにぶん、もっと立憲や共産の支持者が投票箱に来ると予想されていたため、蓋を開けてみたら、全体で見て野党陣営は期待得票数の15%以上も実際の得票数を落としていました。選挙当日が酷暑だったので高齢者主体の野党陣営は投票箱にまでたどり着けなかったのではないかと煽る向きもありますが、蓮舫さんに対する幻滅が、不要不急の都議補選の立憲・共産候補の足を引っ張った形になったのは間違いありません。

で、今後どうするのよ

 実際、政治とカネの問題を重視しない人は7割弱が小池百合子さんに投票したとみられる一方、政治とカネの問題は重要だとした人は小池さんに4割ほどしか投票していません。評価のむつかしいところですが、私は国民は政治の刷新を求めていて、国民の信頼に足る政治家を応援したいと考える気持ちが強いんだろうと解釈しています。

 ただ、小池百合子さん自身が、清和政策研究会のようなパーティー券を派閥ぐるみでごまかして政治資金にしていたような悪質な活動に直接加担したわけではありません。

 そういう自民党の問題議員である清和政策研究会の五人衆・萩生田光一さんがたまたま自民党都連会長であり、党内処分で役職停止となったにもかかわらず、他に適任もいないのでなんとなく都連会長に留任し、野党陣営による「萩生田百合子」のネガティブキャンペーンが一部奏功し、政治とカネの問題に関心のある無党派が小池さんから離れた、というのが実際ではないかと思います。

 これらの人たちがそのまま蓮舫さんに投票意向先を変えるかと思いきや、よく分からないけど石丸伸二さんというのが出てきたのでそっちに投票する人が出たか、蓮舫さんが嫌いだから投票箱に行かなかったという選択をした都民がおのおの5%ぐらいいたのではないか、と感じます。

 まだ東京各30小選挙区に分け直した地盤調査までは集計が終わっていませんが、おそらくは、小池百合子さんの勝利があったのだとしても、あくまで「都知事」小池百合子への信任なのであって、それを応援した自民党の支持にはなり得ない、ということも踏まえて、都民・国民の生活を考え、信頼回復のために何ができるのか考えないといけない状況であることには変わっていないと言えましょう。

 特に、俺たちの岸田文雄政権に対する投票箱まで来た都民からの支持率は、概ね23%から27%のあいだぐらいで、数字を見ている私からすれば「おっ、思ったより高かったな」とは感じるものの低空飛行であることに変わりはありません。そして、岸田文雄さんを支持しない層でも小池さんには35%ほど票を投じています。都民は自民党と小池百合子さんをあまり一体視していない、ただし、政治とカネの問題についてはいまだにかなり怒っていて、これがある限り都民が自民党候補を積極的に選ぶことは考えにくい状況ではあるのでしょう。

 他方、立憲民主党も、ある意味で賞味期限が切れそうな蓮舫さんをついに担ぎ出して都知事選に挑んでみたものの、そのまま3位転落になったことに関してはちゃんと総括しないといけないのではないかとも思います。同時に、都議補選もあれだけ偉そうなことを陣営が言っておいて立憲が1勝2敗、共産が4敗と、蓮舫さん低迷のあおりを喰って一緒に壊滅しているので注意が必要です。

ゆめゆめ都知事に飽きて大きな舞台で、とお考えにならぬよう…

 やはり、蓮舫さん擁立の時期や選挙の際の座組の組み方に問題はなかったのか再点検しないといけないと思いますし、この枠組みでは立憲と共産による「市民と野党の共闘」の路線が必ずしも都市型選挙と合致するものではなかったという反省は必要でしょう。

 もちろん、都市部の小選挙区では立憲ほか野党陣営は地滑り的勝利を起こすことを期待するからこそ、この方針でいくのだと結論付けることもあるかもしれませんが、ただ、今回立憲幹部も「なぜこれで勝てなかったのか分からない」と嘆いているのを見ると、確かにそういう手法で勝ち続けてきた蓮舫さんや周辺からすると反省のしようも無いのだろうなあと思わないでもありません…。

 まあ、いろんな意味でそのまま頑張ったらいつか道が拓けますよ、頑張ってね、それじゃあ僕はこの辺で、という感じになってしまうのではないかと思います。

 そんなわけで、改めて小池百合子さん都知事当選、おめでとうございます。これが都知事としてのラストランになるのか分かりませんが、小池百合子さん次の4年もいい感じでお願いします。

 もちろん、任期満了まできちんと都知事として務め上げ、その小池さんの後継者も見繕ってからの悠然たる花道を歩かれることを期待していていいんですよね。

 ゆめゆめ、そろそろ都知事も飽きたからより大きな舞台で頑張ろうかしらホホホなんてお考えにならぬよう、どうか喉やお身体にも充分に留意され、私たち都民のために働いてくださることを祈っております。

◆◆◆

街頭演説では多くの聴衆を集めていながら3位に沈んだ蓮舫氏の敗因とは…。 【続きを読む】「2位じゃダメなんですか」のはずが3位に…15年ぶりにフラグ回収した蓮舫(56)さんは、どこで失敗してしまったのか?

(山本 一郎)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください