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「最近、岸田総理の政策決定がトップダウンに感じる」自民“若手ホープ”小林鷹之氏が語る〈政治不信の肌感覚〉

文春オンライン / 2024年7月15日 6時0分

「最近、岸田総理の政策決定がトップダウンに感じる」自民“若手ホープ”小林鷹之氏が語る〈政治不信の肌感覚〉

小林鷹之氏 ©時事通信社

岸田政権、ひいては自民党の支持率が低迷する中、党内の若手はどのように政権や自民党の未来を考えているのか。自民党の中でも「若手のホープ」と目される小林鷹之衆院議員に、評論家の宮崎哲弥氏と政治ジャーナリストの青山和弘氏が迫った。

◆◆◆

「岸田政権はやるべきことはやってきている」

 青山 小林さんが初当選したのは2012年。これまでの政治家人生で、自民党がこんなに低迷したのは初めてではないですか。現状を率直にどう受け止めていますか。

 小林 岸田政権は相応に、やるべきことは一つひとつやってきていると思っています。防衛力の抜本強化に踏み切った国家安全保障戦略の改定にはじまり、原発の再稼働発言や、最近では4月訪米時の議会演説は現地でも非常に評価が高かった。国際社会でのリーダーシップは発揮しています。ただ、支持率が非常に低下しているのは、地元で駅頭に立った時の肌感覚と同じです。「厳しい声」を通り越して、政治に対する無関心や、冷ややかな視線すら感じるようになりました。

 宮崎 こういう形で政治不信が高まっていくのは危険な兆候です。なぜここまで支持率が低迷してしまったのか、分析されていますか?

 小林 やはり政治資金の問題と、その対応が大きな要因だと思います。ただ、それに加えて最近、岸田文雄総理の政策決定のあり方がトップダウンに感じることがある。それも一つのリーダーシップの在り方だと思いますが、「党内調整が足りていない」と報道されることで、国民の皆さんが批判的に見ているのかもしれないと思います。

 青山 報道のせいではなくて、実際に党内調整は足りていませんよ。たとえば5月31日の政治資金を巡る公明・維新の党首との合意にしても、自民党議員の多くは知らされておらず、麻生太郎副総裁や茂木敏充幹事長も反対したまま決断された。派閥の解消にしても、もう少し党内で相談して話をつけてから実行するのが当然じゃないですか。

 小林 総理の視点では、別の景色が見えているのかもしれません。政策でも政局でも、一つひとつはよく決断されたなと思うんですが、その決定によってどんな国家運営を目指すのかまでは、国民に伝わり切っていないのが問題ですね。

 宮崎 私も総理自身に支持率がこれほど落ち込むほどの失政はなかった、と思います。問題は党の側でね。けれど「なぜこの政策が採られるのか」、政策決定過程についての説明が不十分。宏池会系の出身だから調整型とも目されていたけど、フタを開けてみると説明も調整もしない。

 小林 議院内閣制ですから、政府と自民党が何度もキャッチボールをしながら政策を作っていくのがあるべき姿。仮に今のやり方がそれと乖離しているのなら、調整していく必要があると思います。

グチャッとした政治資金の議論

 宮崎 政治資金の問題では、私は「支出のチェックと使途の制限」こそが肝だといってきたのですが、今回の政治資金規正法の改正はどう見ていますか?

 小林 国民が納得するかと言えば道半ばだと思います。まずは改正法を遵守し、不断の見直しを続けていかなければなりません。

 政治資金についてあえてザックリ言うと、私も「出口」にあたる使途は可能な限り透明性を向上させ、公開していくべきだと考えています。ただ「入口」である収入面は、過度に規制することは危惧しています。国民の政治参加を担保し、健全な民主主義を維持する観点で、もう少し冷静に考えるべきだと思います。

 青山 そもそも、派閥の裏金作りは「いつ」「誰が」「何のため」に始めたか、未だに実態が解明されていません。これで「道半ば」と言われても納得しようもないと思いますが。

 小林 そこは多くの国民の皆さんが不満に感じていると思います。実態の解明は、私自身も当の本人ではないので分からないところはありますが、一人ひとりの議員が自分なりのやり方で、説明責任を果たすことに尽きると思います。

 今回の政治資金の議論は、個人的に思うところがあって、これはそもそも派閥の問題ではなく、政治資金のあり方そのものの問題なんです。そのあたりが、自民党の中で議論がグチャッとなってしまった。派閥の解消自体は否定しませんが、複数の政策集団があることで、権力が分散され、健全な組織構造が保たれてきたことは確かです。

若手が大人しいのはなぜ?

 青山 小林さんは、派閥の役割もあったと考えているわけですね。

 小林 行き過ぎた悪弊はなくしたほうがいいですが、派閥に代わるガバナンスを議論することなく、解消ありきになってしまったことで、大きな課題が残ってしまいました。

 宮崎 それなのに、派閥に代わる新たな権力の分散と健全な内部統制の仕組みを作ろうという若手の動きもない。若い世代の声がシュリンクしてしまっているかにみえるのは、まさしく「派閥の締め付け」の悪弊だと思います。私は小林さんのような40代の議員のこれからの動きに期待しているんです。

 小林 確かに最近、自民党の中堅、若手が若干大人しいんじゃないかと言われることは増えました。

 青山 いや、若干どころじゃないですよ。「若手は何やってるんだ」という怒りの声すら聞こえてきます。

 小林 今は危機的な状況ですから、一人ひとりが、政権与党という巨大組織をどうしていくか真剣に考えています。だからこそ、言動が慎重になる面もある。私は党内の会議で自分の思うことは全てぶつけてきたつもりですが、やたらめったら外で声を上げればいいというものでもない。ただ、有権者からの信頼がなければ、政策を前に進める力が弱ってしまう。国際情勢が刻一刻と変化している中で、政治資金問題一色でいいのか、ジレンマもあります。

 青山 最近、若手議員は地元で「自民党を飛び出せ」と言われるそうです。そういう考えはないですか?

 小林 全く考えないですね。私が政界入りを決意したのは2009年に自民党が下野した直後です。自民党の立党宣言や野党時代に作った綱領が私の政治理念と合致していて、どん底だった自民党を立て直す一つの歯車になりたいという思いで飛び込みました。苦しい状況だからと言って、飛び出す気にはなりません。

 青山 今後の理想的な自民党像についてはどう考えていますか?

 小林 自民党の特徴は侃々諤々(かんかんがくがく)と議論を尽くし、決定したらみんなが従うことです。これは今後も続けなくてはいけません。もうひとつは健全な競争です。これまで、様々な議員が切磋琢磨して、次のリーダーを生み出してきました。私は自民党以外が国家運営をしたら、日本は倒れると思っている。常に政権与党を担い、自民党総裁は総理大臣を兼ね、海外のトップリーダーと対峙しなくてはならない。そういう人材を育てるため、修羅場をくぐらせる環境を作ることが課題だと思っています。

(本稿は2024年6月18日に「 文藝春秋 電子版 」で配信された オンライン番組 を再構成したものです)

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 小林鷹之×宮崎哲弥×青山和弘「総裁選に出ますか?」 」)。

(小林 鷹之,宮崎 哲弥,青山 和弘/文藝春秋 2024年8月号)

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