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「若い頃は恋愛で嫌な思いをしたことが多かったので、それを漫画にできればと」『恋愛マトリョシカガール』の作者が明かす、恋愛自由競争に“勝てなかった”理由

文春オンライン / 2024年7月26日 16時0分

「若い頃は恋愛で嫌な思いをしたことが多かったので、それを漫画にできればと」『恋愛マトリョシカガール』の作者が明かす、恋愛自由競争に“勝てなかった”理由

美人で料理もできる美央。恋愛偏差値は高そうだが…(「やさぐれ女 美央編」より)

〈 「好きじゃないやつ妊娠させんなよ!」10年付き合った同棲彼氏を後輩に寝取られた春奈の“復讐” 〉から続く

 恋する男女の共感を呼んだ 『恋愛マトリョシカガール』 がついに完結します! 3巻に収録されているのは、「普通の女“で”いい」という30代こじらせ男子のやっかいな生態と、愛されたいけど愛されない自己肯定感が超低空飛行の女子高生のお話。

 なんで自分だけ愛されないんだろう――。

 一度でもそう思ったことのある人には必ず刺さる一冊です。

 今回は山本白湯さんのインタビューと過去話を一挙再公開します。切なくて苦くて、でもやっぱりときめく、そんな恋愛ストーリーをぜひお楽しみください。

 素顔の自分で、愛されたい――。WEBメディア「cakes」で累計660万PVを超え、ハライチ・岩井勇気さんも推薦する大人気連載 『恋愛マトリョシカガール』 。ダメ恋に傷付いても、何度でも立ち上がる女子たちの恋愛を生々しく描き出し、多くの共感を呼んでいます。作者の山本白湯さんに、報われない関係や“破滅エンド”を描く理由、“自由競争の面がある”と語るご自身の恋愛経験についてお聞きしました。(全2回の1回目/ 続きを読む )

◆◆◆

『恋マト』を描くきっかけとなった「やさぐれ女・美央」

――『恋愛マトリョシカガール』(以下、『恋マト』)は、オムニバス形式でさまざまな恋愛が描かれていますが、どの恋愛もちょっと不穏な空気を漂わせています。これは、恋愛はいいことばかりではないという「警告」なのでしょうか。

山本白湯(以下、山本) 若い頃は恋愛で嫌な思いをしたことのほうが多かったので、そういう体験を漫画にできればと思いました。

 相手に嫌なことをされてもそれを嫌だと言い返せず、「あれ?」と思うことがあっても黙って受け入れたり……。そういう嫌な思い出や、本当は言いたかったのに言えなかったことなどが形になったのが、『恋マト』を描くきっかけとなった「やさぐれ女 美央編」の主人公・美央でした。

――恋愛は自分の努力だけでうまくいくものではないので、実は「好きな人に好かれる」のって、すごく難しい部分もありますよね。

山本 そうですね。恋愛って、自分が頑張ったからといって必ずしも報われるわけではないですし、幸せになれるわけでもないと私は思っているので、私のマンガでは 「頑張ったから必ず幸せになる」というエピソードが少ないです。でも、悲しく終わらないエンドに寄せていくようには心がけています。

「破滅エンド」がしっくりくる

――「悲しく終わらないエンド」というのは、ハッピーエンドとはまた違うのですか?

山本 何をもって「ハッピーエンド」とするかというところもあるので、そこは一概には言えないです。それに、マンガでハッピーエンドにすることは簡単ですけど、実際の人生では死ぬまでハッピーエンドかどうかというのはわからないじゃないですか。死ぬ直前に大どんでん返しがあるかもしれないし。

 なので、私としては「破滅エンド」の方が現実らしいというか、しっくりきて、ついそちらに寄せてしまうので、そうならないように気をつけています。多分「破滅エンド」が好きなんでしょうね(笑)。

――いわゆる「ハッピーエンド」よりも、「破滅エンド」の方が好きというのは、恋愛で嫌な思いをされてきたことが影響していますか?

山本 単純に、自分が「破滅エンド」が好きなんだと思います。王道系の恋愛モノを普段ほとんど観ないので、「正統派のラブロマンスを描いて」と言われても描けないと思います。アクション映画など、刺激の強い内容を好んで見ています。もしかしたら、こういうところが自分の作風に影響しているかもしれません。

出し抜かれる恋愛

――作中に「クズ男」がたくさん登場しますが、これも「刺激」の一種なのでしょうか。

山本 クズ男、そんなにいますか!? 誰のことだろう、「ダメ恋女 理恵編」に出てくる「あやと」かな……(笑)。正直、私自身はあやとをそんなにクズ男とは思って描いていませんでした。恋愛は自由競争という一面もありますので……。まあこれは、私自身がこれまでずっと出し抜かれ続けてきたからそう思ってしまうのかもしれませんが……。

――出し抜かれる、ですか。あやとを出し抜くことができる女性ってどんな女性なのか、気になります。

山本 え~、それは私も気になります(笑)。どんな女性があやとを出し抜くことができるんだろう。あやとよりも一枚も二枚も上手な女性ですよね、きっと。

 あと、これは「出し抜かれる」とは少し違いますが、私は相手の好みにすべてを合わせすぎて迷走したこともあったので、あやとはそういう女性は選ばないかもしれません。自分自身のそういう弱さも、恋愛自由競争に勝てない敗因だったなと今にして思います。

『恋マト』は「恋愛マンガ」というより「ヒューマンドラマ」

――では『恋マト』には、山本さんの恋愛談が教訓として入っているのでしょうか。

山本 私が実際にしてきた数々の痛い体験談は、決して「恋愛談」とは呼べない気がするんですよね。あえていうなら、「ヒューマンドラマ」かと。「ヒューマンドラマ」などと自分で言ってしまうのは、おこがましい気がしますが……。

――確かに、『恋マト』を表現するには、「恋愛マンガ」よりも「ヒューマンドラマ」のほうがしっくりきます。うまくいくと思っていたカップルがうまくいかなかったり、嫌な人だと思っていたら実はそれほど嫌な人ではなかったりという話も、現実によくありそうなエピソードです。

山本 「嫌な人だと思っていたら実はいい人だった」というのは、私が社会人になってからそういう人にたくさん出会ったからです。

 たとえば仕事でイライラしている時とか、大きなミスをして1ミリも余裕がない時に、普段すごい嫌だと思っていた人がフォローしてくれて、実はいい人だということがわかったとか。

 友達とか恋人って、基本的に休みで機嫌のいい日にしか会わないから、いいところだけ見ることができると思うんですけど、仕事となると、そうはいかないので、そういう局面で人間の意外な一面を知ることができた経験は、いまマンガを描くのにすごく役立っていると思います。

 人間は相手によっても立場によってもいろいろな面を持っていると思うので、開けても開けても少しずつ違う自分がいるマトリョーシカみたいに、これからもいろいろな恋愛の形を描いていけたらいいなと思っています。

――単行本には、WEB連載のその後を描いた続編も「番外編」として収録されていて、これもまた「ヒューマンドラマ」を盛り上げています。

山本 そう言っていただけるとうれしいです。

 WEB連載ではついつい破滅エンドになったり、不穏な空気を前面に出してしまいそうになるんですけど、単行本で少し手を加えたり、本編では描ききれなかった別側面を描き加えたりすることで、破滅だと思っていたエンドが実はそうではなかった、というサイドストーリーになっています。WEBで連載を読んでくださった方にも新たな発見となり、楽しんでいただけるのではないかと思いますし、単行本では、ストーリーの合間にちょっとした雑談的なコメントも入れていますので、それも楽しみに見ていただけたらありがたいです。( #2 に続く)

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〈 「どんなに好きな相手でも、5年くらいで恋愛的な刺激がなくなる」 “惰性で会社に行っていた”漫画家が“ダメ恋愛”から抜け出せない人に伝えたいこと 〉へ続く

(相澤 洋美/ライフスタイル出版)

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