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「事件性はなく、自殺である」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”で、警察が虚偽の疑い…“伝説の取調官”が指摘する大塚署のありえない捜査

文春オンライン / 2024年7月10日 6時0分

「事件性はなく、自殺である」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”で、警察が虚偽の疑い…“伝説の取調官”が指摘する大塚署のありえない捜査

木原誠二前官房副長官 ©文藝春秋

〈 「あの子は自殺するような子じゃない」木原誠二氏妻の元夫“怪死事件”遺族が悲痛告白…“伝説の取調官”が感じた被害者家族の無念 〉から続く

 2006年4月10日、都内の閑静な住宅街でひとつの「事件」が起こった。その日、不審死を遂げた安田種雄さん(享年28)は、木原誠二前官房副長官の妻X子さんの元夫である。事件当時、X子さんは「私が寝ている間に、隣の部屋で夫が死んでいました」と供述したという。通称「木原事件」と呼ばれるこの“怪死事件”を巡り、1人の元刑事が週刊文春に実名告発をした。

「はっきり言うが、これは殺人事件だよ」

 木原事件の再捜査でX子さんの取調べを担当した佐藤氏は、なぜそう断言するのか。警察の捜査に、どのような問題や憤りを感じているのか──。ここでは、佐藤氏が「捜査秘録」を綴った『 ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録 』(文藝春秋)より一部を抜粋して紹介する。(全6回の6回目/ 5回目から続く )

◆◆◆

種雄さんの父親からの110番通報の伝達

 事件の伝達状況は次のようなものだった。

 2006年4月9日、22時00分頃に種雄さんが死亡する事件が発生した。

 翌日の午前4時00分頃、種雄さんの父親が110番通報を行う。110番通報は必ず警視庁の通信指令本部に送られる。この場合は重要事案である「変死事案」として入電した。その後、通信指令本部が行うのは、大塚署の宿直に指令を出し、捜査一課の宿直にも同報を入れることだ。

 ——ここまでは「変死事案」の対処ルールに則った流れだ。都内で発生した「変死事案」については、それが病死であっても自殺であっても、通信指令本部から同報として必ず捜査一課の宿直に報告されるのである。

 変死事案の指令を受けた大塚署の刑事課の宿直員は、その後、事件発生現場に臨場する。大塚署の署員によって「事件性の有無」「状況」「捜査一課への臨場要請」などを捜査一課に対し、連絡しなければならないことになっているからだ。

 つまり、種雄さんの父親からの110番通報の内容は、4月10日時点で大塚署だけではなく捜査一課も認知していた、ということになる。

 それからの流れは次の通りだ。

 大塚署の宿直員は臨場を終えた後、事案の詳細を書類にまとめ、「死体観察」の詳細を捜査一課に宛ててファックスで送る。さらに、事案について「事件性あり・なし」といった判断を行い、捜査一課と鑑識課(検視官含む)による臨場の必要性の有無を判断して報告しなければならない。

 だが、ここで疑問が生じる。

大塚署はなぜ――浮かんでくる複数の疑問

 種雄さんの「変死事案」はすでに繰り返し指摘してきた通り、どう考えても「自殺」と断定できるようなものではなかった。

 種雄さんの遺体にはナイフで頭上から胸元に向かって刺されたと思われる傷があり、死因は失血死だ。しかも、ナイフは仰向けに倒れていた種雄さんの右膝のあたりに置かれていたのである。

 なぜ、大塚署の宿直員はそのような「現場」を見たにもかかわらず、捜査一課に対して臨場要請を行わなかったのだろうか。

 なぜ、大塚署の宿直員はこの事案を「事件性はなく、自殺である」などと、虚偽ともいえるような報告をしたのか。

 なぜ、当時の捜査員や宿直責任者は正確な状況を捜査一課に報告せず、臨場要請をしなかったのか。

 なぜ、捜査一課の宿直員は大塚署から送られてきた「死体観察メモ」を見て疑問を感じなかったのか。

 複数の疑問が浮かんでくる。

 大塚署の宿直員は「現場」を見て事件性があると考えたにもかかわらず、種雄さんの父親や捜査一課に対しては、「事件性はない」と虚偽の事実を報告していたのではないか——こうしたことが、そこからは窺える。

「事件」にすることを面倒だと考えたのではないか

 大塚署の初動捜査が抱えている大きな問題は、2006年から2023年まで、事件が紆余曲折するに至った理由に直結している。

 その後、4月11日に検察庁から「立件票」と「鑑定処分許可状」が交付され、種雄さんの「司法解剖」が行われている。結果は極めて他殺の可能性が疑われる「不詳の死」であり、これは「事件性がある」ということを意味する。

 通常、司法解剖前に署の捜査員が事件性の有無、他殺・自殺の判断をすることはあり得ない。それでも大塚署の捜査員が「事件性なし」との報告を行ったのは、覚醒剤を使用していた種雄さんやその家族の社会的地位を低いものと捉え、これを「事件」にすることを面倒だと考えたからなのではないか、と俺は推察している。

 実際、後にこの事件を掘り起こした女性刑事も、

「これは本当に、よく自殺で処理しましたよね」

 と、言っていた。

「これは面倒くさかったんだよ、当時の奴らは」

「ああ、そうですねえ。私もそう思います」

「普通、一課に連絡するだろ?」

「私もそう思います」

 彼女と俺はこういうやり取りを交わしていた。

(佐藤 誠/週刊文春出版部)

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