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ラーメン屋に来た“自称グルメのヤバい客”が突然「この店のラーメンはまずい!」と連呼…そのとき、店主のプロレスラーが取った“思わぬ対応”

文春オンライン / 2024年7月17日 11時0分

ラーメン屋に来た“自称グルメのヤバい客”が突然「この店のラーメンはまずい!」と連呼…そのとき、店主のプロレスラーが取った“思わぬ対応”

写真はイメージです ©Kuri2000/イメージマート

〈 「380円のデザートを10人で分けて…」“ラーメン屋でラーメンを頼まない”ヤバい客の実態を店主のプロレスラーが赤裸々証言 〉から続く

 東京都世田谷区でラーメン屋「麺ジャラスK」の店主を務める、プロレスラーの川田利明さん。10年続く店はたった1割といわれるラーメン業界で生き残り、今年で14年目を迎える。

 そんな川田さんは「ラーメン屋は絶対にやらないほうがいい」と言うほど、苦労を味わったという。いったい彼は、ラーメン屋店主としてどれほど過酷な経験をしたのか――。ここでは、著書『 プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る 』(宝島SUGOI文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 1回目から続く )

◆◆◆

「食べログ」のラベリング効果を危惧

 ラベリング効果について勉強していく中で、なるほどなと思う反面「なんか矛盾していないか?」と感じてしまったことがある。それは、影響力の大きな「食べログ」の存在だ。ここに投稿している「自称・グルメ」の人たちの書き込みが、ラベリング効果を発揮してしまっていることを俺は危惧している。

 本来、味の感じ方……味覚なんて千差万別で、Aさんが「旨い!」と思っても、Bさんは「味が薄い」と言ったり、Cさんは「別に美味しくない」とバラバラな意見になるのが普通のことだ。100人が100人、口を揃えて「旨い!」というのは、かなり異常な状況で、それを現実のものにしてしまうのがラベリング効果のちょっと怖いところでもある。

 いろいろな人に話を聞くが、店選びに迷った時は、食べログのランキングと平均得点で決めるという。そしてもっとも重要視するのが感想の書き込みだそうだが、「自称・グルメ」の意見を本当に鵜呑みにしていいのかな?

 ちなみに、ウチの「麺ジャラスK」も頼んでいないのに勝手に食べログに掲載されているが、ある意味でネット社会の便利さが産み出す怖さもあると思う。

自称・グルメの勝手な妄想

 以前、俺は自称・グルメの人にあるお店を強く推薦されたことがある。「あそこの定食屋、行ったことあります? 店自体はボロボロで汚いんですけど、逆にそれがいい雰囲気なんですよ。何よりも絶品なのはアジフライ定食! あの身のふっくらとした感じは、絶対に毎朝、店主が市場で仕入れてきて、一匹一匹、丁寧におろしている。いや、そうに違いない! 一度、食べてみたほうがいいですよ」

 そこまで言うならと、俺はその店に行ってみた。

 昔から外食に出かけると、気になったことは遠慮なく店主や店員に質問してしまう癖があるので、さっそく定食を持ってきてくれた店のオヤジさんに「このアジって、毎日、わざわざお店でおろしているんですか?」と聞いてみた。すると、オヤジさんは「へっ?」と困惑した表情を浮かべて、こう答えた。

「おろすも何も、ウチはもう何十年も前から、冷凍食品のアジフライを買ってきて、それをここで揚げているだけだよ。下味もなんにも付けてない。だって、そのほうが味も安定するし、何よりも安く上がるじゃない。そもそも揚げたてのアツアツを食べたら、なんだって旨く感じるんじゃないの?」

 自称・グルメは勝手に妄想したことを「そうに違いない!」と信じ込み、それをあちこちで喧伝(けんでん)していただけだった。おやじさんに確認すれば、3秒でわかるのに、それすらもせずに「俺がそう感じたんだから、それが正解なんだ」という恐ろしいまでの自信。そういう人の言葉に踊らされて、ラベリング効果が形成されていくのかと思うと、ちょっと薄ら寒さすら感じてしまう。

 ウチの店でも、こんなことがあった。

大声で「この店のラーメンはすごくまずいんだよ!」

 以前、来店していただいたことがあるというサラリーマン風のお客さんが、部下を何人か連れてやって来た。そのお客さんはラーメンを人数分頼むと、厨房にまでハッキリと届くほどの大きな声で、部下に向かってこう言った。

「俺は一度、食べたことがあるからわかる。この店のラーメンはすごくまずいんだよ! まずくて有名な店だから、今日はネタとして、お前たちにも食べさせてやろうと思って連れて来てやったんだ!」

 別にね、客商売だからいろんなことを言われることには慣れてるけど、こんな至近距離で、しかも大声で「まずい」と連呼されることはさすがにめったにないことなので、よく覚えている。プロレスの試合でもここまでひどいヤジを浴びたことはないよ。俺はラーメンを作りながら「そんなにまずいと思っているものに、よくお金を出すよなあ」と思ったけれど、それでもいつもと同じように心を込めて提供した。

部下たちは「すごく旨いんですけど」

 とはいえ、さすがにここまで言われると、ひっかかるものもあるので「お待たせしました。まずいラーメンですみませんね。どうぞ召し上がってみてください」とひとこと添えて、テーブルに出したけどね。

 数秒後「どうだ、まずいだろう?」という上司に対して、ラーメンを食べた部下たちは口々に「いや、部長、すごく旨いんですけど」と言う。これには上司も「お前たちの味覚はどうかしている!」と荒れまくっていた。部下たちが忖度(そんたく)して「まずいです」と言わなくてよかったよ。

 でも、これはリアルの世界の話だから、こういう展開になったけど、ネットの世界だと一方的に発信され意見を鵜呑みにするケースが多いので、飲食店にとっては厄介です。

(川田 利明/Webオリジナル(外部転載))

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