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「虹はなぜ七色なの?」「あなたはどう思う?」…幼子が返した“あまりに美しい回答”とは

文春オンライン / 2024年7月22日 6時0分

「虹はなぜ七色なの?」「あなたはどう思う?」…幼子が返した“あまりに美しい回答”とは

写真はイメージ ©AFLO

〈 グーグルが断言する、効果の出せるチームとそうでないチームの「たった一つの違い」とは 〉から続く

 生成AIと呼ばれる人工知能がビジネスシーンでも用いられるなど本格的に突入したAI時代。そんな新しい時代を生き抜く子供たちに求められるのが「自己肯定感」だ。20世紀の「躾けていい子にする」子育て法はもはや通用せず、これからはAIにとって代わられない「個性を発揮する」子に育てること。そこで求められるのは「子供の気持ちに寄り添い、その言動にイラつかない子育て役」…まさに祖父母だ。

 祖父母がAI時代を生き抜く孫たちにすべきことを示した『 孫のトリセツ 』(扶桑社)より一部抜粋して紹介します。(全3回の3回目/ 最初 から読む)

家族の話は「いいね」か「わかる」で受ける

 それでは、心理的安全性を確保する対話術その1、「相手が話し始めたとき、いきなり否定しない」について。コツは簡単、家族の話は、「いいね」か「わかる」で受けると覚悟を決めればいい。

 相手が無邪気に言ったこと、ポジティブな気持ちで言ったことが、たとえ「ふざけんな」と思うことであっても、気持ちだけは受け止めてあげたい。なぜなら、無邪気に言ったことを否定されると、ヒトは話すことをやめ、発想力に蓋をするからだ。

 私は、息子を育てるとき、この「その1」のルールを、けっこう守ってあげた。1991年生まれの彼が、AI時代を生きていく第一世代になることがわかっていたから。

「今日は学校に行きたくないなぁ」にも「わかるわぁ。雨だしね」みたいに。「いっそ、休んで遊んじゃおうかな」にも「いいね、ママも休んで、ホットケーキ焼いてあげたいなぁ」で受ける。「けど、そんなわけにはいかないこと、わかってるんでしょ?」と言うと、「まあね」と言ってランドセルを背負ったっけ。

 たまには、そのまま休む日もあったけど、人生、それくらいの息抜きがあったっていいんじゃないのかなぁ。まぁ、そのあたりの考え方(学校は休まずに行くべき)は、人それぞれの哲学なので、気持ちを受け止めた後、きっぱりと送り出すのもよし。要は、子どもの最初のつぶやきを受け止めるってことだ。

 息子が33歳になる今でも、私は、彼の気持ちの発露は「そうね」で受けている。週末、山で遊んできた月曜日の、「こんな日は会社に行くのがつらいよね」(私が社長の会社なんだけど)にも「そうよねぇ」と笑顔で。

 実際、腹も立たない。ヒトの脳には、情の回路と理の回路があって、その2つの回路の答えは大きく違う。情で揺れても、理性でなんとかするのが人間だもの。揺れた情の一言をいちいち正す必要もない。共感して慰撫してやれば、たいていは、理の回路に切り替わる。

 人間のコミュニケーションには、2本の通信線がある。「心の通信線」と「事実の通信線」だ。心は受け止めて、事実(ことの是非)はクールに進めるのが、対話の達人である。

「わかるよ、君の気持ち」と受け止めたあと、「でもね、相手にしてみたら受け入れがたいかも」とダメ出しをし「こうしたら、スムーズだったんじゃない?」とアドバイスをする。他人にそれができる人でも、家族には、いきなり「何やってんの。お前も〇〇すればよかったんだよ」とダメ出しする人が多い。

 前者は、心理的安全性が確保される対話、後者は心理的安全性が損なわれる対話ってことになる。

なぜなぜ期は「問いを立てる力」の芽が出るとき

 AI時代を生きる人類に最も必要なのは、「問いを立てる力」だと言われている。AIはなんにでも答えられるから、つまらない質問にはつまらない答えを返してくる。通りいっぺんの優等生の質問には、通りいっぺんの優等生の答えが返ってくる。そんな情報、もらってどうするの?って話。

 AIはたしかに、思いもよらないアイデアをくれるけど、その人にしかできない質問をしない限り、その人にしか見つけられない答えをくれないのである。

 というわけで、生成AIがビジネス利用されるようになった今、生成AIを使う人たちの「問いを立てる力」が問われている。これを受けて、日本の教育に「問いを立てる力」が足りないと指摘する人も増えてきた。

 私も、問いを立てる力は、AI時代を飛び越えていく翼だと思っている。好奇心+発想力+対話力=問いを立てる力。つまり、脳の感性の総合力だもの。ただし、問いを立てる力は、学校教育で手にするものじゃない。家族との会話で育むものだと、私は考えている。

 問いを立てる力の萌芽は、幼子の「なぜ?」にある。2歳のイヤイヤ期を過ぎてしばらくすると、子どもたちは「なぜ?」「なぜ?」と質問を繰り出すようになる。そのピークは4歳ごろ。「なぜ、空は青いの?」「なぜ、ポストは赤いの?」「なぜ嘘はついちゃいけないの?」「なぜ、ママのおなかは出てるの?」-見たもの思いついたこと、なんでも聞いてくる。

 質問の回答に、さらに質問を返してくるのも、なぜなぜ期のすごいところ。「なぜ、パパのハンバーグは2個なのに、ぼくのは1個なの?」「あなたが小さいからよ」「なぜ、小さいと1個なの?」「小さいと食べられないからよ」「なぜ小さいと食べられないの?」……これじゃ、親がイラつかないわけがない。

 でもね、ここで、しっかり対応することが大事なのである。頭にふと浮かんだ無邪気な質問を、嘲笑されたり叱られたりすると、子どもなりに口をつぐむようになる。やがて、あんなにほとばしっていた「なぜ?」が浮かばなくなる。親にしてみれば、聞き分けが良くなって楽になるかもしれないけれど、こんなに早く好奇心の芽を摘んでおいて、のちに「問いを立てる力」が足りないなんて言われても、そりゃ、かわいそうすぎるのでは?

 何度も言うけど、親は子にイラつくもの……だから、親はつい子どもの無邪気な質問を粗雑に扱ったりしがちだけど、祖父母はその傍らでおおらかに受け止めればいい。

 もしもその場で口を挟むと険悪になりそうだったら、優しくアイコンタクトだけしてあとで答えてあげよう。たまにしか会えなくても「おばあちゃん(おじいちゃん)なら必ず受け止めてくれる」と信じていれば親の対応がどうであれ孫の脳に「問いを立てる力」を残すことができる。

幼子の質問を祝福しよう

 幼子の質問は、どんなにくだらないことでも、まずは喜んであげよう。問いを立てたことを祝福するのである。「いいところに気がついたね」「うわ。それおばあちゃんも気になってたの」「そうきたか」

 そして、答えられないときは、「あなたはどう思う?」と聞いてみるのも手。これが、なかなか素敵なことばに出逢えたりするのだ。

 我が家の息子はあるとき、「虹はなぜ七色なの?」と聞いてきた。私は物理学科出身なので答えは知っているものの、光の屈折率を知らない相手にどう答えたらいいかわからない。そこで「あなたはどう思う?」と尋ねたのである。すると息子が「おいらはねぇ、神様に7つのものの見方があるからだと思う」と答えたのである。

 私は、あまりに美しいこの回答に、ことばを失った。実は、脳には、認識に使う超短期記憶領域があって、大多数の人が7つ持つとされている。このため人類は、世の中の事象をとっさに7つに分解するのが得意なのである。虹を作り出す光のプリズムは連続した値なので、7色に分けるのは脳の仕事。つまり、脳の中に、7つのものの見方があるから、虹は7色なのである。彼の言ったことは、ある意味真理を突いていて、脳の研究をしている母親をうならせた。

「どう思う?」と聞いて「わかんない」と言われたら、「おじいちゃんもわからないんだ。将来わかったら、教えてくれる?」と返しておけばいい。我が家の息子は、大学生になってから、「ハハがわかったら教えてねって言ってたあれだけど」と、幼いときのこの約束を果たしてくれたっけ。孫のこれを聞くには、長生きしなきゃね。

(黒川 伊保子/Webオリジナル(外部転載))

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