「別れるなら刺してやる」30代の“メンヘラ彼氏”に突然、フォークで鼻を突き刺され…20代前半で大怪我を負った漫画家の壮絶な恋愛経験
文春オンライン / 2024年7月15日 11時0分
![「別れるなら刺してやる」30代の“メンヘラ彼氏”に突然、フォークで鼻を突き刺され…20代前半で大怪我を負った漫画家の壮絶な恋愛経験](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72006_0-small.jpg)
前田シェリーかりんこさん ©石川啓次/文藝春秋
2023年7月、初の著書『 メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話 』(KADOKAWA)を上梓した漫画家の前田シェリーかりんこさん。
以前からInstagramに子育てや自身の体験を綴ったコミックエッセイを投稿していたところ、感情の浮き沈みが激しい、いわゆる“メンヘラ”の元恋人「彼ピッピ」にフォークで鼻を刺されて警察沙汰になった話がバズり、書籍化となった。
「誰だって、メンヘラと付き合いたいとは思わない。でも、“人格者”と言われている人が、付き合い始めたらメンヘラに豹変することも多いんです」
そう話す彼女に、フォークで鼻を刺されるまでの経緯を詳しく聞いた。(全3回の1回目/ 2回目 に続く)
◆◆◆
「メンヘラ製造機」と呼ばれていた私
――書籍のタイトルにもなっていますが、かりんこさんは、交際相手が次第に精神的に不安定になってしまうことから「メンヘラ製造機」と呼ばれていたことがあるそうですね。
前田シェリーかりんこさん(以下、かりんこ) これまでお付き合いした方に、情緒不安定で感情の起伏が激しい「メンヘラ」が多かったんです。最初は「自立していて素敵な人だな」と思っても、付き合ってしばらく経つと束縛やDVをしてきて。
――付き合う前には、そういった“性格”は分からないのでしょうか?
かりんこ SNSには「人を見る目がない」「そんな相手を選んだお前が悪い」といったコメントがよく届くのですが、付き合う前に見分けるのはかなり難しいと思っています。私と付き合って“メンヘラ化”してきた方たちは、どちらかというと人当たりが良くて誰からも好かれるタイプの人が多かった。
書籍に出てくる“彼ピッピ”もそうです。職場の先輩だったのですが、仕事の評価は高く、上からも下からも慕われている人でした。そんな素敵な人が、付き合った途端に豹変するなんて想像できないじゃないですか。
ただ、今振り返ると、彼ピッピを含めてみんな「メンヘラの芽」を抱えていたんだろうなと思っています。それを私が発芽させちゃったんだろうなって。
――「メンヘラの芽」とは、どのようなものなのでしょうか。
かりんこ 仕事ができて周囲からの信頼が厚い方って、抱えているストレスも大きいと思うんですよ。それを私が増幅させて、攻撃的にさせてしまっていたのかな、と思います。
――なぜそう思うのですか?
かりんこ おそらくですが、私の態度がドライに見えて不安を抱かせていたのかな、と。私は誰かと付き合っていても、趣味や友人と遊ぶ時間も大切にしたくて。だから相手にも「自由にしていいよ」と言っていたのですが、彼らは人から頼られることに慣れているせいか、「放置されている」と捉えてしまったようで。
自立した大人の男性だと思って付き合い始めたら…
――“彼ピッピ”とは、どのような経緯で付き合い始めたのですか。
かりんこ 先ほどもお話ししたとおり、彼は会社の先輩で、職場の飲み会で意気投合して、付き合うことになりました。30代後半で、社内での評価も高くて人柄も良い。役職や性別問わず人気のある人で、当時20代前半だった私から見ると、まさに「自立した大人の男性」だったんですよね。
でも、付き合って1、2ヶ月も経ったら、だんだんと束縛するようになってきて。LINEの返信が少し遅れたり、同僚との飲み会で帰りが少し遅くなったりしただけで、「男と会っていたんじゃないか」と疑われるのは日常茶飯事でした。女友達と遊びに行くだけなのに、「男もいるんじゃないか」と疑って、付いてきたこともありました。
――そのとき、お友達の反応はどうだったのでしょう。
かりんこ 人当たりが良いから、友達との輪にすぐ馴染めちゃうんですよ。友達からは「すごく良い彼氏だね」「こんな素敵な人、手放しちゃだめだよ」と言われました。
彼がいないときに、束縛されて困っていることを友人に伝えても、「かりんこのことが好きでしょうがないんだよ」「その程度なら可愛い束縛じゃん」と言われてしまう。だんだんと「嫌だと思う私がおかしいのかな?」と思うようになってしまって。1人で悩んでいたら、“あの事件”が起こってしまったんです。
「別れるつもりだろ」「帰るなら刺してやる」とフォークを近づけて脅してきた
――フォークで鼻を刺されてしまった事件ですね。当時のことを詳しく教えていただけますか。
かりんこ 私は趣味で弓道をしていて、その日は練習で道場に出かけていたんですよ。そのことは、彼ピッピにも事前に伝えていました。でも、練習が終わって携帯電話を確認したら、約2時間見ない間に100件以上のLINEが来ていて……。「今どこにいるんだ」「趣味とか言って、本当は男と会っているんだろう」など、私を疑って責め立てる言葉が並んでいました。今でこそ笑い話にできていますが、そのときは背筋が凍りましたね。
「誤解だから、ちゃんと会って話そう」と連絡をして、彼の家(マンション)に向かったのですが、それが間違いでした。いざ会ったら、私の話に一切聞く耳を持ってくれなくて、それに私もイライラしてしまって。口論になった末、身長180cm以上ある体格の良い彼に、思い切り突き飛ばされてしまったんです。
――それは酷すぎますね。
かりんこ そしたら、運悪くTVデッキの角に頭をぶつけてしまって。突然“ぐるん”と視界が回って。一瞬何が起きたのか理解できなかったですね。脳震盪を起こしていたようで、10秒程度ですが、意識も失っていました。頭の後ろ側が切れて、血も出てしまいましたし。
でも、そんな私を見た彼は、心配をするどころか「そんな倒れ方をするお前が悪い」と言い放ったんです。その言葉を聞いて、私もついカッとなってタックルをしたのですが、160cmもない私の力じゃ、大柄な彼には全く刃が立たなくて。歯向かってきた私にさらに腹を立てた彼は、近くにあったフォークを握りしめて、私の顔の前に向けてきました。
――それを鼻に刺してきたのですか?
かりんこ 結果的には。でも、最初は刺すつもりじゃなかったと思うんですよ。お互いに冷静じゃなかったし、私は怪我もしていたから、「とりあえず今日は帰る」と彼に言ったんです。でも、「別れるつもりだろ」「帰るなら刺してやる」とフォークを近づけて脅してきて。そのときの血走った目をした彼の顔は、今でも覚えています。
で、脅しのつもりだったのが、勢い余って私の鼻に刺さってしまって。「俺は寸止めしようと思ったのに」「お前がそんな場所にいるから悪いんだ」と、そのときも彼は言い訳をしながら私を責め続けていましたね。
ヤバい相手だと思いつつ別れられなかった理由
――それまでにも、喧嘩になったときに危害を加えられることはあったのでしょうか。
かりんこ 直接手を出されたのは、そのときが初めてです。でも、カッとなって物を投げてくることはありましたね。私も「このまま付き合っていたらやばいな」とは気づいていたんです。でも、なかなか別れられなくて。
――なぜ、別れられなかったのでしょうか。
かりんこ 彼ピッピの前に付き合っていた人に別れ話を持ちかけたとき、大きくこじれた経験があるんですよ。その人もいわゆる「メンヘラ」で、束縛が激しくて。私が別れを切り出したら、「僕は別れたくないけど、かりんこちゃんがどうしても別れたいって言うなら死ぬしかない」と言って、リストカットをした写真や、練炭やロープを準備している画像が送られてきたんです。
私をつなぎとめるための脅しだということは、分かっているんですよ。でも、「万が一本当に命を断ったら、間接的だとしても、私が殺したことになるのかな」と思うと怖くて、それ以上「別れたい」なんて言えませんでした。
結局、しばらくして彼のほうから「別に好きな人が出来た」と言って別れを切り出してきました。今ならもっとうまいやり方があっただろうなと思えるのですが、当時の私はまだ若くて、「とにかく彼を刺激しないように」と耐えることしかできませんでした。だから、彼ピッピのことも「おかしいな」と思いつつ、なかなか別れを切り出せなかったんです。
撮影=石川啓次/文藝春秋
〈 「血まみれで隣人に助けを求めた」恋人にフォークで鼻を刺されて救急搬送→記憶障害に…“メンヘラ彼氏”に殺されかけた漫画家が語る、事件の後遺症 〉へ続く
(仲 奈々)
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