1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「血まみれで隣人に助けを求めた」恋人にフォークで鼻を刺されて救急搬送→記憶障害に…“メンヘラ彼氏”に殺されかけた漫画家が語る、事件の後遺症

文春オンライン / 2024年7月15日 11時0分

「血まみれで隣人に助けを求めた」恋人にフォークで鼻を刺されて救急搬送→記憶障害に…“メンヘラ彼氏”に殺されかけた漫画家が語る、事件の後遺症

前田シェリーかりんこさん ©石川啓次/文藝春秋

〈 「別れるなら刺してやる」30代の“メンヘラ彼氏”に突然、フォークで鼻を突き刺され…20代前半で大怪我を負った漫画家の壮絶な恋愛経験 〉から続く

 2023年7月、初の著書『 メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話 』(KADOKAWA)を上梓した漫画家の前田シェリーかりんこさん。

 以前からInstagramに子育てや自身の体験を綴ったコミックエッセイを投稿していたところ、感情の浮き沈みが激しい、いわゆる“メンヘラ”の元恋人「彼ピッピ」にフォークで鼻を刺されて警察沙汰になった話がバズり、書籍化となった。

 フォークで鼻を刺された彼女は、事件後しばらく、記憶障害に悩まされたという。いったい、どんな症状があったのか。彼女の記憶障害が改善したきっかけとは――。(全3回の2回目/ 3回目 に続く)

◆◆◆

元カレは号泣しながら「お前のせいだ」と私を責めた

――かりんこさんは、元恋人に鼻をフォークで刺された、という衝撃的な経験をお持ちです。前編では、刺されるまでの経緯をお話しいただきましたが、刺された後のことも詳しくお話しいただけますか。

前田シェリーかりんこさん(以下、かりんこ)  前編 でもお話ししたように、元カレの“彼ピッピ”は、普段は自立した大人の男性でした。仕事ではどんなトラブルにも冷静に対応してきているのを見ていました。

 でも、頭から血を流して鼻にフォークが刺さっている、明らかに重傷な私を見たときの彼は、号泣しながら「お前のせいだ」と私を責めて、おどおどしているだけでした。「とりあえずソファに座って、落ち着いて話そう」とか言ってきたんですよ。もうその時点で全然冷静じゃないですよね。

――ちなみに、鼻にフォークを刺された痛みはどうだったのでしょうか。

かりんこ 違和感はあるんだけど、痛いとは思わなかったですね。たとえるなら、長めのトッポギを鼻に押し込まれたみたいな感じでした。怒りと驚きで、アドレナリンが大量に出ていたのかもしれません。あとは、(彼ピッピに突き飛ばされて)頭を強く打っていたので、感覚も麻痺していたのだと思います。

 ただ、鼻にフォークを刺された瞬間の光景は今でも覚えています。ドスッと勢いよくフォークが突き刺さったのと同時に、真っ赤な血がプチッと弾け飛ぶのが見えたんですよ。

――すぐにでも警察や救急車を呼ぶべき状況ですよね。

かりんこ 早く病院にいかなきゃいけないのは間違いない。でも目を血走らせながら、「別れるなら帰さない」とぶつぶつ言っている彼をこれ以上刺激するのが怖くて、警察も救急車も彼の目の前では呼べなくて……。

血まみれのまま必死で隣人宅に助けを求めた

――漫画では、彼の隙をついてお隣さんに助けを求めるシーンが描かれていましたね。

かりんこ はい。一度だけですが、お隣さんに挨拶したことがあって。そのときのことをお隣さんが覚えているかは分からなかったけど、それどころではなかったので。よく知らない人だから、恥ずかしいから、というのを考えて迷っていたら、その間に冷静さを失っている彼に殺されてしまうかもしれない、と思ったんです。

――どうやって家の外に出て助けを求めたのですか。

かりんこ 逃げ出す隙を作るために、彼の股間を蹴って、うずくまっている間に部屋の外に出て。玄関にあったゴルフバッグで外からドアを塞いで、お隣さんの玄関のチャイムをならしました。そしたら、すぐに隣人の「ぴょんす」さんと、その彼女の「ナツ」さんがドアを開けて中に入れてくれて。

 2人とも「隣の部屋で、喧嘩の声と人が倒れた音がする」と気になって、窓越しに様子を窺ってくれていたんです。すでに警察も呼んでいてくれて、本当に助けられましたね。

――しかしそのあと、彼が隣の部屋を訪ねてきますよね。なぜ、かりんこさんが隣の部屋に逃げ込んだと分かったのでしょうか。

かりんこ 漫画には描かなかったのですが、廊下にポタポタ落ちていた血の跡を辿って来たようです。

――ゾッとしました……。

かりんこ でしょう。なのに玄関越しに、何も知らないふりをして話しかけてくるんですよ。「近くでうるさい音がしていましたけど、何か知っていますか」って。

 できるだけ誰にも知られずに私を回収して、事を済ませようと考えたんでしょうね。やばいことが起きているのは彼も分かっているんだけど、自分の罪だとは認めたくなかったんだと思います。

――狂気を感じますね……。

かりんこ 怖いですよね。しばらくしたら「なんでドアを開けないんだ」と逆上して、ゴルフクラブでお隣さんのドアを殴りはじめて。それで、同じフロアの他の部屋の人や、到着した警察に取り押さえられたのですが、それでも「コンビニに行こうとしていただけだ」「なんで俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだ」と喚いていました。

 さらにその後、警察の隙をついて彼ピッピが私たちのいる部屋に入ってきてしまって。こんな状況になっても、「なんで俺たちの問題なのに、こんなにたくさんの人に迷惑をかけるんだ」「部屋に戻って話そう」と言ってきて、怖かったですね。でも、お隣さんが私を守ってくれて、警察もすぐに来てくれて。彼が連行されたのを見届けてからの記憶はなく、次に気付いたときは、病院のベッドの上にいました。

全治一か月、医師からは「刺す場所が少しでもずれていたら即死」

――鼻の怪我はどんな状態でしたか?

かりんこ 怪我の状態は、かなりひどかったです。刺されたのは鼻のはずなのに、顔全体が赤黒くパンパンに腫れていて、目もうまく開けられない。隣の病室に入院していた子どもから、「ブルーベリー妖怪女」なんてあだ名を付けられました。

 インフルエンザやコロナウイルスの検査で、綿棒を鼻の奥まで押し込んでグリグリするじゃないですか。あんな感じの痛みと違和感がずっとあって、本当に憂鬱でしたね。

 それでも医師からは、怪我については運が良かったと言われて。「刺す場所が少しでもずれていたら、即死だったかもしれない。そうでなくても、後遺症が残ったかもしれない」と言われて、ゾッとしました。

――病院には、どのくらい入院していたのですか。

かりんこ 1ヶ月は入院していたかな。最初は自分でも目を背けたくなるくらい痛々しかった顔も、退院するころには怪我をする前とほぼ変わらないくらいまで回復しました。ただ、入院していた頃の記憶が本当に曖昧で。覚えていないことも多いんです。

――それは、事件や怪我のショックによるものなのでしょうか。

かりんこ 担当医いわく、そうらしいです。「鼻が本当に治るのかな?」と心配だったけれど、怪我の痛みよりも、事件によるショックで記憶障害を起こしていたのかなと思います。

事件の後遺症で記憶障害に

――差し支えなければ、記憶障害についてもう少し詳しくお聞かせいただけますか。

かりんこ 事件のことは覚えているんですよ。“彼ピッピ”という彼氏がいることも分かるんです。でも、事件と彼のことが全く結びつかなくて。病院の先生や警察の人から事件について聞かれているときに彼ピッピの話が出ると、「なんでこの人たちは、事件に全然関係のない人の話をしているんだろう?」と思っていました。

 例えが難しいのですが、政治の話で盛り上がっていたのに、突然「遊園地で好きなアトラクションは何?」と、全く関係のない質問をぶち込まれるような感覚というか。

――彼が鼻にフォークを刺した犯人だとわからなかった、ということですね。

かりんこ そうです。他にも、一時的にですが、簡単なパズルが出来なかったり、物の名前が思い出せなかったり。「ぶどう」そのものの記憶がすっぽり抜けてしまっていたときは、ショックが大きかったですね。

――ぶどうの記憶が消える?

かりんこ はい。脳の状態を確認するテストで、りんごやいちご、ぶどうといった、スーパーでよく見かける果物の名前を答えるものがあったんですよ。そのテストを受けたときに、ぶどうを見て「初めて見る珍しい果物だな」と思ったんです。それを医師に伝えたら、一瞬だけど険しい顔をして。「あ、私の脳になんかまずいことが起きているな」と思いましたね。

――なぜ、ぶどうだけ記憶から抜け落ちてしまったのでしょう。

かりんこ 付き合っていた頃に、彼ピッピが「かりんこちゃん、これ好きでしょ」ってよくぶどうを買ってきてくれたんですよ。だから、彼のことを考えないように、彼と思い出深いものを脳が強制シャットダウンしているのかも、と先生は言っていました。

――でも、退院するまでに記憶障害は治ったのですよね。きっかけはなんだったのでしょうか。

かりんこ 事件のときにかけつけてくれた警察官の人と再会したのがきっかけです。事件直後から病院に来てくれていたそうなのですが、病院側の配慮で「急に顔を見ると記憶がより混乱するかもしれないから」と、しばらく面会を控えてくれていて。

 入院してしばらく経って、気持ちが少し落ち着いてきたところで会うことになったんです。そしたら、顔を見た瞬間に一気に記憶が戻ってきたんですよ。戻ってきたというより、鼻をフォークで刺された一連の事件が「ついさっき起こったばかりのこと」のような感覚になりました。驚きも、恐怖も、怒りも、つい数分前くらいに経験したような生々しさがあって、感情がぐちゃぐちゃになってしまって。あれは不思議な体験でしたね。

撮影=石川啓次/文藝春秋

〈 「男下げがひどい」「男を見る目がない」と批判も…“恋人にフォークで鼻を刺された”漫画家が、それでも壮絶な恋愛経験を発信する理由 〉へ続く

(仲 奈々)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください