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「職人気質で自分に厳しい人」鳥山明が「ドラゴンボール」連載中に愚痴っていたこと〈「Dr.スランプ」アニメ化担当・辻真先(92)インタビュー〉

文春オンライン / 2024年7月28日 6時0分

「職人気質で自分に厳しい人」鳥山明が「ドラゴンボール」連載中に愚痴っていたこと〈「Dr.スランプ」アニメ化担当・辻真先(92)インタビュー〉

鳥山明 ©文藝春秋

アニメ・特撮ドラマの脚本家として活躍してきた辻真先氏は、手塚治虫作品や鳥山明作品のアニメ化における脚本も担当してきた。その辻氏が、 鳥山明との仕事について振り返る 。

◆◆◆

鳥山さんは職人気質で自分に厳しい人

 今年3月に鳥山明さんが亡くなったと聞いた時は、あまりに突然のことで本当に驚きました。まさに青天の霹靂という感じです。

 私は集英社が主催するギャグ漫画の新人賞「赤塚賞」の審査員を10年ほど務めていたのですが、当時「ドラゴンボール」を連載中の鳥山さんも審査員だったので、半年に1回は顔を合わせる仲でした。多忙を極めていた鳥山さんが、「なかなか連載を終わらせてもらえなくて……」と毎回会うたびに愚痴っていたのをよく覚えています。

 鳥山さんは職人気質で自分に厳しい人でしたから、亡くなる直前まで仕事に打ち込まれていたのではないでしょうか。「SAND LAND」のアニメを世界中に配信するなど、現在進行中の企画もありましたから、訃報を聞いた時には正直「もったいない」とも思いました。

 〈辻真先氏は現在92歳。NHKのディレクターを務めた後、1962年に独立。長年にわたり、アニメ、特撮ドラマの脚本家として活躍してきた。「サザエさん」「デビルマン」「サイボーグ009」「アタック№1」「ゲゲゲの鬼太郎」など数々の名作のアニメ化第1回の脚本を執筆するなど、アニメ草創期を支えたレジェンドである。ミステリ作家としても多数の作品を執筆し、1982年に『アリスの国の殺人』で日本推理作家協会賞を受賞。2020年に発表した『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』はミステリランキング三冠に輝いた。〉

 私は、鳥山さんの作品では「Dr.スランプ アラレちゃん」のアニメ化第1回の脚本を執筆しました。

ヘビをウンチに変えた

 鳥山さんの「Dr.スランプ」は、何の制約もなく原作通りにアニメ化すれば良かったので、それはもう楽なものでした。ただ、せっかくやるなら原作を上回るものを作りたい。「Dr.スランプ」は、鳥山さんならではの抜群のギャグセンスが光る漫画です。私も刺激をうけて制作の人たちとの打ち合わせでは、積極的に「こんなギャグを追加してはどうか」とあれこれ提案しました。でも制作側は「そんな馬鹿な(笑)」と真面目に取り合ってくれなかった。当時はテレビ局にもアニメ界にも、ギャグを理解する人が少なくて苦労した記憶があります。

「Dr.スランプ」では、アラレちゃんが、道端に落ちているピンク色のとぐろを巻いたウンチを棒で「つんつん」とつっつく定番のギャグがありましたよね。でも、アニメの第1回でいきなりそれをやったら絶対に視聴者が「下品だ!」と騒ぎ出すだろうなと。そこで、最初はとぐろを巻いたヘビをつっつく設定にしました。放送回を重ねて視聴者を徐々に慣らしていったところで、ヘビをウンチに変えたんです(笑)。

 それでもテレビ局には100本近くもの抗議電話が来たそうです。しかも驚いたことに、そのほとんどが40代、50代の男性でした。普段から子供とアニメを見ている母親たちは慣れているけど、たまの休日に子供と一緒に観た父親たちが驚いたのでしょう。

 漫画のギャグには旬があるので、続けるのは大変です。それを絶好のタイミングでアニメ化するのも難しい。赤塚不二夫さんの「天才バカボン」ですら、漫画連載時は空前の人気を誇っていましたが、アニメ化の時点では、すでに古びていたので、今ひとつ視聴率が伸びませんでした。とにかく味噌汁が煮えたぎって、吹きこぼれそうなうちにお椀に注がないと冷めてしまうんです。

 その点、「Dr.スランプ」は、1980年に「少年ジャンプ」で連載を開始し、翌年にはアニメ化したので、ドンピシャのタイミングでした。最高視聴率36.9%を記録するなど一大ブームを巻き起こしました。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「 手塚治虫と鳥山明の仕事術 」)。

 

全文 (7000字)では、辻氏が、二人の人柄、作風、仕事ぶり、そして時代背景などを比較しながら、貴重なエピソードを紹介しています。「手塚氏は作家で、鳥山氏は画家」と評する真意とは? 

〈 「ドラゴンボール」の展開に行き詰った鳥山明さんに「どうしたらいい?」と相談されて…《“レジェンド”辻真先(92)が明かす秘話》 〉へ続く

(辻 真先/文藝春秋 2024年8月号)

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