《博多刺殺事件》「同じグループの女性に手を出すのはご法度。それが中洲のルールです」元交際相手の女性(38)を刺した男(31)が裏切った”店長の信頼”《懲役20年》
文春オンライン / 2024年7月16日 14時30分
![《博多刺殺事件》「同じグループの女性に手を出すのはご法度。それが中洲のルールです」元交際相手の女性(38)を刺した男(31)が裏切った”店長の信頼”《懲役20年》](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72101_0-small.png)
亡くなった川野美樹さん
〈 《博多女性刺殺事件》「彼女は中洲の高級ラウンジの人気者、容疑者の男は…」被害女性(38)の遺体に残された“強烈な殺意”の痕跡と、容疑者(31)の女性への扱いが滲む写真《懲役20年》 〉から続く
2023年1月、JR博多駅付近の路上で、会社員の川野美樹さん(当時38)が元交際相手の寺内進被告(32)に包丁で複数回刺され、死亡した事件。7月16日、福岡地裁で言い渡された懲役20年の判決を検察・弁護側双方が控訴せず、寺内被告の刑が確定した。
川野さんとの破局後、職場で待ち伏せするなど“ストーカー状態”にあったという寺内被告。2人に一体何があったのか。凄惨な事件を詳報した記事を再公開する。(初出:文春オンライン 2023年1月20日掲載 年齢・肩書等は公開当時のまま)
◆◆◆
「中洲では、同じお店や同じグループ内で働く女性に手を出すのは御法度です。普通なら寺内容疑者は罰金を払ってすぐにクビになり、川野さんも罰金など何らかのペナルティを受けていたはずでした。それが中洲のルールです。しかし今回は、上層部は2人の交際に気づいていたものの、店長が自分の責任で面倒を見るということで預かった。それがこんな結果になってしまうなんて……。グループも店長も裏切った寺内容疑者は最悪です」(川野さんや寺内容疑者と同じ系列店で働く女性)
福岡最大の歓楽街・中洲を舞台にした禁断の恋。しかし寺内進容疑者(31)と川野美樹さん(38)の関係は、破局後に寺内容疑者がストーカー化したことで警察沙汰となってグループに露見した。そして1月16日、川野さんがJR博多駅前で刺されて死亡するという最悪の結末を迎えてしまった。
2人の出会いは2022年。川野さんは博多駅近くの会社で事務職として働くかたわら、中洲の高級ラウンジにも時折出勤していた。同じ系列のバーに寺内容疑者が転がりこんできたのは昨年1月ごろのことだった。中洲の事情に詳しい関係者の男性はこう語る。
「体験入店みたいな感じでエンターテイメント系のバーで働きはじめ、間もなく他のバーの人手が足りないということで移ったのですが、どこかのタイミングで川野さんと出会ったのだと思います。寺内容疑者は『ボクシングをしている』『喧嘩が強い』と腕っ節をよく自慢していて、かなり酒に飲まれるタイプ。普段は関西ノリで紳士的だけど、酔いがまわると粗暴な面が出てくる。川野さんと付き合い始めたのは春頃でしょう」
「会釈したら『なに見とんねん』と因縁をつけられた」
寺内容疑者は大阪府出身だが、東京、大阪、宮崎などの繁華街を拠点にした後に、福岡・中洲に移ってきたという。中洲から徒歩圏内に家賃4万2000円(住宅情報サイトより)のアパートを借りて生活していた。しかし近隣では不穏な様子が目撃されていた。
同じアパートに住む男性がこう証言する。
「私が出社する朝8時頃に帰ってくるので何度も見かけました。人相が悪く、愛想も悪い。すれ違うといつもお酒の臭いがして、これから出社する身としては朝から最悪の気分ですよね。
会釈をしたら『なに見とんねん』と因縁をつけてきたこともあります。殴られたりはしなかったんですが、『お前いつもうるさいんよ』と舌打ちをして去っていきました。あまりに突然だったのでポカーンとして、関わらないようにしようと思っていました」
寺内容疑者と川野さんの関係は昨年10月頃には悪化しており、川野さんが初めて警察に相談したのは10月21日のことだった。
「2人はまだ交際中でしたが、川野さんが『(寺内容疑者と)喧嘩になって携帯電話を奪われた、取り返したい』と博多警察署に相談しています。3日後に携帯電話は返還されたようですが、その後『別れた相手が納得しない』と再び相談に訪れています」(大手紙社会部記者)
しかし、川野さんが警察に相談した後も事態は改善せず、11月21日には寺内容疑者が川野さんが働く会社をアポ無しで訪れるなど行動がエスカレート。その後も川野さんの携帯に着信を3件残す、職場に電話をかけるなどの行為があり、福岡県警はストーカー規制法に基づいてつきまといなどの「禁止命令」を出している。
警察は引っ越しや転職を勧めていたが…
その後は小康状態を保っていたが、1月16日午後6時過ぎ、川野さんは頭や胸、腹など十数か所を鋭利な刃物で刺されて死亡。2日後に寺内容疑者が殺人容疑で逮捕された。現場から逃げ去った寺内容疑者だが、身柄を確保されると容疑を認め、「復縁を求めていたが、叶わず刺した」と供述している。
福岡県警は川野さんに、ボタンを押すと110番に繋がる装置を渡していたというが、身を守ることにはつながらなかった。
「事件の日、寺内容疑者は川野さんの職場の近くで待ち伏せし、少し横を歩いて話しかけ立ち止まったところからいきなり襲いかかったので、川野さんはボタンを押す余裕はありませんでした。県警は川野さんに1人での行動を控えて引っ越しや転職も検討してはどうかと勧めていたようですが、シングルマザーとして家計を支える川野さんが突然生活を変えることは難しい。そんな中で起きてしまった惨事でした」(前出記者)
川野さんは搬送された病院で死亡が確認され、寺内容疑者は伊達メガネをかけて中洲を歩いているところを発見された。逃走するわけでもなく、自首をするでもなかった2日間、容疑者は一体何を考えていたのだろうか。
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))
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