石丸伸二の前髪、蓮舫のユニセックス…“イメージ戦略”でも敗れた2人と、「脚組み」まで披露した巧妙すぎる小池百合子の差
文春オンライン / 2024年7月17日 11時0分
![石丸伸二の前髪、蓮舫のユニセックス…“イメージ戦略”でも敗れた2人と、「脚組み」まで披露した巧妙すぎる小池百合子の差](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/bunshun/bunshun_72105_0-small.jpg)
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〈 石丸伸二の紫は「不良」「性的な魅力」、蓮舫の黒とピンクは「やや閉塞感」、小池百合子の緑は…印象戦略コンサルタントが解説する、都知事選の印象を決めた“色選び” 〉から続く
「東京都知事選での小池百合子さんは、“イメージ戦略”でも圧勝していた」
そう分析するのは、印象戦略コンサルタント・神戸情報大学院大学客員准教授の乳原佳代氏。
“選挙に強い小池”はいかにして作られたのか。蓮舫氏、石丸伸二氏に欠けていたものは何だったのか。「着こなし」「ジェスチャー」「スピーチ」の観点から、小池氏の勝因を徹底解剖する。
小池氏は「女性性」、蓮舫氏は「ユニセックス」を強調
白のパンツスタイルが印象的だった蓮舫さんですが、選挙活動中、シャツがパンツからはみ出ていたり肩のラインがずれていたりと、少しサイズが大きいものをお召しだったようです。ユニセックスを強調されたのかもしれませんが、スタイルの良さを前面に押し出して颯爽と着こなしても良かったのではないでしょうか。
蓮舫さんが控えた「女性性」を、前面にアピールしたのが小池さんです。お二人はともにショートカットですが、蓮舫さんはより短くサバサバした印象。一方、小池さんは豊かな毛量、ウェーブがかった毛流れを活かしたエレガントなスタイルです。
初当選時から8年間変わらぬ、女性らしく年齢を感じさせないショートヘアからは、人前に出るための最低限の装いやヘアメイクを、同じスタイルで何年も継続する覚悟が見て取れます。
石丸さんの髪型についても一言。都知事選前半は前髪が長く「何か隠している」印象を受けましたが、終盤はひたいを出していて、爽やかで開けたイメージへと変わっていました。スーツの着こなしを含め、まだまだ伸びしろがありそうです。
演説中に手を激しく動かしても伝わるのは熱量だけだが…
ジェスチャーにおいても小池さんの戦略が光っていました。候補者の中には感情のたかぶりに伴い、手の位置が高くなったり動きが激しくなったりしていた人もいましたが、それはあくまでも思いの表れ。熱量が伝わるに留まります。
一方で小池さんのジェスチャーは、感情任せではなく「意図的」なもの。指先に至るまで手の動きと発言の内容、そのタイミングが正確にリンクしています。つまり小池さんは、「話の内容をわかりやすく指し示す」ため、「強調する」ために大きく力強く両手を使っているのです。
もうひとつ、脚の見せ方にも気配りが感じられます。椅子に座った際の脚の流し方、つま先の位置がきちんと計算されているのです。ところが相手によっては、脚を組んで見せることも。このドギマギさせるスタイルは、ウインストン・チャーチルが交渉の場で葉巻きを燻らし、その灰がいつポトリと落ちるかとハラハラさせて自分に優位に話を持っていった戦略に似ています。
安定した腹式呼吸、滑舌や強調する言葉も正確
最後は「スピーチ技術」です。蓮舫さんは、情熱が感じられる演説だったものの、落ち着いた語りというよりは「絶叫」に近い印象。
石丸さんは緩急があるこなれた演説ですが、夜間に自宅から配信されていたYouTubeでは、友達の家で一緒に話しているような親しみやすさがありました。この“同じ目線”での語りぶりは、Facebookライブを駆使して国民とコミュニケーションをとった、ニュージーランド元首相のジャシンダ・アーダーンを思わせます。
では小池さんはどうでしょうか。まず、腹式呼吸で発声が安定しており、滑舌や強調する言葉の立て方なども聞き取りやすく説得力があります。長時間聴いていても嫌な気分にならない、歯切れがよく小気味いい声と話し方です。
話し終えた後に、しっかりと口を結び、口角を上げる表情も、聴衆を安心させます。と同時に、口角を上げることで、エイジングによる劣化を感じさせない弛まぬ努力も見せています。人前に立つ自分の「見られ方」、与える印象を強く意識しているのです。
当日朝の人身事故を話題にするタイムリーさも
小池さんは演説の中で自虐的にへりくだることもままありますが、盤石のスピーチ技術のおかげで安心して見ていられます。また、横文字を多く使いながらも、例えば「SDGs」と発した後に「持続可能」と付け加えるなど、フォローを欠かしません。
大勢の聴衆がストレスなく聞き取れる「パブリックスピーチ」においては、やはり8年にわたって都知事を務め、実績を重ねてきた小池さんが有利だったといえるでしょう。
また、有権者から「共感」を引き出す手腕もみごとです。小池さんはニコニコの演説会にて、当日起きた三鷹駅の人身事故を即座に話題にし、「人の死を悼む」という聴衆の共感を得ながら都営地下鉄のホームドア設置完了の実績について語りました。
他にも、自身の母親の介護経験と公約を結び付ける。不登校のフリースクールを訪問し、賞賛を得ながら、子育て政策の実績を語る……等々、時にプライベートな情報も明かしながら具体的な内容に踏み込み、有権者との距離を縮め、ラポール(信頼関係)を作り上げているのです。
日本の政治家はせいぜいスーツやネクタイを新調するくらい
日本では能動的にイメージ戦略を立てている政治家はごくわずかで、せいぜいスーツやネクタイを新調するくらいです。とある重鎮の自民党衆議院議員の方は「人生の成功体験に基づいた自信があるので、大臣やそれ以上の役職になっても、装いや立ち居振る舞いはなかなか変えられない」とおっしゃっていました。
しかし、都知事選で小池さんが圧勝したように、相手に応じたイメージ戦略を立てることは、優位な交渉に不可欠です。リーダーには自身の印象を管理する能力が求められるのだと、今回の都知事選は雄弁に物語っているのです。
乳原佳代(印象戦略コンサルタント・神戸情報大学院大学客員准教授)
大阪府出身。航空会社退職後、英国ロンドンシティーリットでコミュニケーションを学ぶ。帰国後、印象戦略コンサルティング会社キャステージを起業。危機管理の観点から、行政や大手企業で演説トレーニングや服装戦略を手掛ける。麹町中学校「制服等検討委員会」アドバイザー、週刊文春「Catch Up」にて各国首脳を始め王室・皇室のファッションについてコメント。著書に『学校でも会社でも教えてくれない 「見た目」の教科書』(ダイヤモンド社)。9月24日(火)NHKカルチャー梅田教室にて「大統領選挙に見る印象の重要性」開催。
https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1300499.html
(乳原 佳代)
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