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「娘さんの気持ちを考えたことがあるんですか?」息子が性加害をしたと認めない母親が、逆に被害女性(18)を責めた“身勝手すぎる一言”とは

文春オンライン / 2024年7月20日 10時50分

「娘さんの気持ちを考えたことがあるんですか?」息子が性加害をしたと認めない母親が、逆に被害女性(18)を責めた“身勝手すぎる一言”とは

Aから性被害を受けた時のことを、資料を並べて説明するマサミさんと母親

〈 トイレの壁に手をつかせて後ろから襲い、床には血が…女子高生(18)に20回以上の性加害をした男性の“情けなすぎる自慢話”とは「俺の親は公務員で力がある」 〉から続く

 2022年8月から、三重県の私立高校3年生だったマサミさん(仮名、当時18歳)が、同級生の男子生徒A(当時18歳)から何度も同意のない性行為をされていたことがわかった。

 受験を直前に控えた時期だったが何も手につかなくなるなど、精神的に追い込まれていたが、事態は悪化の一途をたどっていった。

「うちの親はあんたみたいに暇じゃない」

 マサミさんとAが交際を始めて4カ月が経った11月、Aが自宅に乗り込んできた。原因は、前日にマサミが別れ話をしたことだった。

 「11月頃には、マサミの幼馴染にも『絶対おかしいから話を聞いてあげて』と言われるくらい、目に見えて元気がなくなっていました。でも、高校3年生の娘に根掘り葉掘り聞いていいものか迷ってなかなか聞くことができませんでした。そうこうしていたら、ある日Aが自宅に来たんです……」(母親)

 その日は大学入試の2日前で、どしゃぶりの雨が降っていた。夕方、Aはマサミさんの家まで来ると、「近くの公園で話そう」と言った。マサミさんは入試の準備で忙しかったが、Aの姿を見ると明確に断ることもできず「まったく頭が回らない」と怯えた様子だったという。

 それを見た母親はAに「娘のことを思うなら今日は帰ってほしい。自分が別れたくないからといって、押しかけるのは常識がない」「お父さんに言うので、連絡先を教えて」と伝えた。するとAは豹変し、「うちの親はあんたみたいに暇じゃない」と叫んだという。

 しばらく言い合いになったあと、Aは諦めて帰っていった。

「高校生が性行為をしたこと自体が悪いと考えていて言い出せなかった」

 この出来事でマサミさんの精神は限界を迎え、夕食後についに母親に公園での性被害について告白した。

「自分の中でもずっと、親に言うか言わないか葛藤がありました。親のことを一番信用しているので、話したら助かるんじゃないかとは思っていたんですが、高校生が受験前の時期に性行為をしたこと自体が悪いと考えていたので言い出せなかったんです。

 同意があったかどうかではなく、同意だとしても悪いことだと。それで、『自分が悪いことをした』と言いました」(マサミ)

 マサミさんの告白に母親はショックを受けたが、取り乱さないように話を聞いた。

 「『実はレイプされている』と聞いた時は驚きました。『どういうこと?』と聞くと、『そこの公園で』と。

『いつ?』と聞くと、『交際1カ月記念日に花火をしたとき、そういうことになった』と言います。花火をしたのは夜の公園なのでおかしいと思い、『トイレの個室に引きずり込まれたの?』と聞きました。すると、『違う。壁のところ』とマサミは言いました。深刻だと思いました。マサミは終始泣きながら話していて、パニック状態でした。『これは体の関係があるとかじゃない。完全にレイプだ』と確信しました」(母親)

Aの母親が言い放った「あなたは娘さんの気持ちを考えたことがあるんですか?」

 マサミさんから被害のあらましを聞くと、即座に母親はAと両親を自宅に呼び寄せた。しかし、Aと両親の対応は、とても真摯とはいいがたいものだった。

 マサミさんの母親が「娘から、Aにレイプされていると相談を受けた」と伝えると、Aの父は「知りませんでした。初めて聞きました」と回答。さらにAの母は「レイプなんてひどい。あなたは娘さんの気持ちを考えたことがあるんですか?」となぜかマサミさんを責めるような発言をした。

 Aの父親も「何を言いたいんだ? 18歳過ぎた大人で、付き合っている2人を引き裂くのはやりすぎ」とレイプであることを否定し、「謝ればいいんですか? すみませんでした」と畳みかけた。

 あげく、「何が望みかわからない。それがわかるまで居座る」と居座ってしまった。

 深夜3時を超え、マサミさんの母親がたまりかねて110番通報をすると、警察官5人がやってきた。Aと両親は庭先で事情聴取を受けると、警察官に「これからは連絡してから会うように。勝手に行ったらあかんよ」とたしなめられ、ようやく帰宅した。

 翌日、出張から帰宅したマサミさんの父親がA宅を訪問し、接見禁止を伝え、スマホのやりとりや写真データの削除をするように約束させた。

「Aの父は性行為があったことは認めましたが、最後まで同意があると主張していました。『娘は、助けて、と言っています。同意じゃないです。生徒指導でもそうですか?』と伝えると、Aの父は『いや……』と口を濁しましたが、今でも、謝罪の必要はないと言い張っています。ただ、後で学校に対して謝罪文を提出したという話は聞きました。しかし私たちはその謝罪文を見ていませんし、そもそも存在するかどうかもわかりません」(母親)

被害はレイプだけでも約10回、ほかにも…

 数日後、マサミさんと両親は警察署を訪れたが、被害届は受理されなかった。警察は「被害届を出して、逆恨みで危害を加えるかもしれない」などと言い、被害届を受け付けなかった。「一度学校に相談して、学校がきちんと指導しなかったら、警察が動くこともできる」とも言っていたという。

 警察署を訪れた後、母親があらためてマサミさんに状況を確認する中で、Aから受けた被害が公園での1度だけではなく、膨大な数にのぼることがわかってきた。レイプは約10回、陰部を触られたのが約10回、Aの射精の手伝いをさせられたのが約30回もあった。

・B公園…四方の住宅街から丸見えの状態で、Aはマサミさんのスカートの中に手を入れ、ショーツを下げ、陰部を触った。Aは自分で下半身を露出し、自慰行為をした。

 

・C公園…通学路上の公園。Aは、マサミさんの制服のズボンと下着を脱がせ、下半身を露出させてレイプした。

 

・D公園…通学路上の公園。防災備品倉庫付近でレイプした。

 

・E公園…「夕日を見に行こう」と誘われて公園内の椅子に座ると、Aは下半身を露出。「触れ」と発言し、マサミさんの手を掴んでAの局部を触らせ、射精した。

 

・駐車場…花火大会の日、Aはマサミさんを路地に連れ込み、駐車場のフェンスに押しつけた。Aはマサミさんの浴衣の中に手を入れて左胸を揉み、浴衣の裾を開いて陰部を触った。

 

・砂浜…放課後に自転車で砂浜に向かい座って海を見ていた。Aは「触れ」と言ってマサミさんの手を掴むと局部を触らせた。その後、「こっちに来い」と雑木林の中でレイプした。

 

・学校内…2人が通っている高校でも、Aが下半身を露出し、射精するまで手で触らせたり、制服を着たままのマサミさんをレイプした。

「マサミは記憶があいまいでしたが、ポツポツと被害の内容を話すようになりました。具体的な場所を言いながら、何をされたのかを話しましたが、全部を言ったとは思っていません。根掘り葉掘り聞かないようにしていますが、公園の防災備品倉庫やベンチなど具体的な場所の話をしていて、それが嘘だとはとても思えません」(母親)

「一番の理想としてはAが逮捕されれば安心できます」

 母親は学校に相談するが、「男子生徒も通学する権利がある」「学校でできることと、警察ができることは違う」などと言われ、迅速な対応はされなかった。のちに、Aは保護者の監督付き自宅謹慎やSNS禁止の処分を受けたが、それ以上の措置は取られなかった。

 高校が第三者委員会を設置したのは、マサミさんが卒業した後のことだった。被害を「いじめ」と捉え、いじめ防止対策推進法の枠組みで調査することになったのだ。警察が被害届を受理しなかったことで刑事事件として対応できず、苦肉の策だった。

「今は、A本人に謝ってほしい。一番の理想としてはAが逮捕されれば安心できます。逮捕された後、どこか遠くに行ってほしい。もう引っ越してほしい。近所にも寄って欲しくない。今も一人でこの近所を歩くことができないので」(マサミ)

 内閣府の調査(2020年)によると、交際相手からの身体的暴力や性的暴力を含む「デートDV」の被害を受けた女性はなんと16.7%にのぼる。交際というプライベートな関係に忍び込む暴力を、どう減らすことができるのだろうか。

(渋井 哲也)

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