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枝野幸男や蓮舫の舌鋒鋭い追及…民主党政権が肝いりで行った「事業仕分け」とはいったい何だったのか

文春オンライン / 2024年8月13日 6時10分

枝野幸男や蓮舫の舌鋒鋭い追及…民主党政権が肝いりで行った「事業仕分け」とはいったい何だったのか

枝野幸男 ©文藝春秋

〈 〈大幅なコストカットを実現〉地方自治体が国を変えた…? 三重県で行われた革新的な“政策評価の内実”とは 〉から続く

 原則非公開で行われてきた予算査定を公開し、甘くなりがちな内部評価に外部の目を取り込んだ「事業仕分け」は、民主党政権肝いりの事業として、多くの注目を集めた。スーパーコンピュータ事業を巡る議論の中で蓮舫氏が発した「2位じゃだめなんですか」という言葉が記憶に新しい人も多いだろう。

 そんな事業仕分けは、評価の質そのものが低くなりがちといった問題点もあり、自治体によっては休止・廃止に追い込まれながれもした。しかし、今でもかたちを変えて行政運営のなかで活かされているのだという。約15年前に行われた事業仕分けが、現在はどのように運用されているのか。公共政策学の専門家である杉谷和哉氏の著書 『日本の政策はなぜ機能しないのか』 (光文社新書)の一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/ 前編を読む )

◆◆◆

「事業仕分け」とは何だったのか

 事業仕分けとは、もともとは「構想日本」という政策シンクタンクのグループが始めたもので、2000年代に入ってから地方自治体で実施され始め、2009年に政権交代した民主党によって国レベルでも実施されました。簡単な流れを説明すると、ある事業に関して、その担当者が説明を行い、仕分け人が質問します。それに対して担当者が答え、仕分け人がまた質問して……という流れで事業を検討する一連のプロセスを対象事業に対して行います。当時の仕分け人であった枝野幸男氏や蓮舫氏の舌鋒鋭い追及は話題となり、テレビでもたくさん報道されました。覚えている方も多いことでしょう。

 事業仕分けが開始された当初、既に政策評価法はありましたから、これは屋上屋を架すことになるのでは、という指摘もありました。ですが、政権交代の勢いに乗る民主党は、その目玉として、かなり力を入れて推進を図りました。

口頭による問答で行われる事業仕分け

 事業仕分けは、厳密な手法を用いることなく事業を検討するものですが、その根底にあったのは次のような発想です。すなわち、しがらみのない人が担当者に質問を繰り返せば、比較的容易に事業の必要性や有効性、効率性を、低コストで明らかにすることができるというものです。こうした想定をもとにした事業仕分けを、政策評価の一環と捉えていいかどうかは議論が分かれています。政策評価は元来、定まった方法のもとで、ある基準にしたがって評価を下すものですが、これに対して事業仕分けは基本的には口頭による問答で行われます。したがって、その評価の質は必ずしも科学的なものではありません。たとえば事業担当者が弁の立つ人で、枝野氏や蓮舫氏とも侃々諤々とやり合えるならば、事業は存続という結果になるでしょう。逆に口下手な人ならば事業は縮小や廃止といった結果になる可能性が高いはずです。こうした点を踏まえると事業仕分けは、その客観性においては課題を残す取り組みだと言えます。

「行政事業レビュー」と名前を変えて

 一時は一世を風靡した事業仕分けでしたが、熱しやすく冷めやすい、とはよく言ったもので、すぐに世論は関心を失っていきました。ですが、関心が失われた後も事業仕分け自体は続いており、「行政事業レビュー」と名前を変え、仕分け人に有識者を入れるなどの変更が試みられます。そんな最中、2012年の衆院選で民主党は敗北し、自民党が政権に返り咲きます。自民党政権は、民主党政権のやったことを否定しがちと思われているかもしれませんが、実際には継続されている政策も少なくありません。行政事業レビューはその一つで、自民党政権下でも引き続き実施されることとなり、今日に至っています。

 自民党政権下での行政事業レビューは、民主党政権期のものから細かい変更がいくつかありますが、大枠は変わっていません。つまり、「仕分け人」が事業担当者と口頭の問答を繰り返して、事業の妥当性を吟味するわけです。ただし、最近の運用では「仕分け人」の多くは有識者(大学の研究者や経営者、コンサルタント等)で、政治家が行政事業レビューに関わることはあまり見られなくなりました。動画サイト上で映像が公開されている映像を見れば分かりますが、かつての事業仕分けの熱気あふれる様子とは違って、現行の行政事業レビューは淡々と進んでいるケースが多いようです。

 こうした性質の変化は善し悪し両方あるでしょうが、初期の事業仕分けのような熱量を維持するのは簡単ではなかったのでしょう。実際、事業仕分けのブームの時は、自治体でも取り組むところが相次ぎましたが、仕分け人と行政側とが過度に対立的になることや、行政側の負担感の大きさ等の課題が浮き彫りとなり、休止・廃止している例も多くあります。

評価の中でも簡略的な仕組み

 事業仕分け及び、今日でも続いている行政事業レビューですが、政策評価から見れば大体、次のように概括できます。第一に、評価の中でも簡略的な仕組みをとった取り組みだということです。既に見たように、口頭による問答を通じた評価の仕組みは、精緻な手法を用いません。これは導入と実施が比較的簡単にできる反面、やはり評価の質そのものは低くならざるを得ません。

 第二に、どちらかと言えば、「業績管理/業績測定」型に類することです。政策のインプットとアウトプットやアウトカムの比率を見て、無駄がないかどうかをチェックしますから、政策の効果を厳密に測定する評価の在り方とは一線を画しています。ただ、今日の行政事業レビューでは、先に挙げたロジックモデルの作成とそれに基づく検討がなされていることもあり、事業の構造であるセオリーを評価する「セオリー評価」にも当てはまる面もないわけではありません。

 このような特徴を有する行政事業レビューですが、今日ではEBPM(編集部注:エビデンスに基づく政策)を担う重要な位置づけを与えられています。

(杉谷 和哉/Webオリジナル(外部転載))

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