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「星野リゾート トマム」を中国企業から408億円で買った“ナゾの社長”は何者なのか

文春オンライン / 2024年7月23日 16時20分

「星野リゾート トマム」を中国企業から408億円で買った“ナゾの社長”は何者なのか

雲海が美しい「星野リゾート トマム」のHP

 冬はスキー、夏は「雲海テラス」の絶景で知られる北海道屈指の人気ホテル群「星野リゾート トマム」(占冠(しむかつぷ)村)。ところが……。

◆◆◆

不動産バブル崩壊による資産の売却

 昨年秋の“中国マネーが買い漁る”シリーズ( 電子版で配信中 )でも取り上げたが、星野トマムを2015年に約183億円で買収したのが、中国の大手財閥「復星(フオースン)集団」だ。以来、復星が所有し、星野が実際の運営を担ってきた。

「復星は上海市を拠点とし、基幹企業『復星国際』の売上高は4兆円に達する。欧州のホテルブランド『クラブメッド』を買収するなど世界中で事業を展開してきた。創業者の郭広昌会長は15年には突如失踪する騒動もありましたが、『中国のバフェット』と呼ばれる存在です」(北京特派員)

 ただ、最近は資産の売却を進めていた。

「中国では不動産バブルが崩壊。復星も22年には大幅減益に陥り、『非中核資産を整理する』と宣言していました」(同前)

 そして今回明らかになったのが、星野トマムの売却である。複雑なスキームだが、グループ企業「上海豫園旅游商城」の傘下で、都内の会社「新雪」を通じて星野トマムを所有。その新雪のほぼ全株式を「合同会社YCH16」に約408億円で売却することで、6月28日合意したという。

「インバウンドは絶好調ということもあり、売値は買値の2倍以上。単純に見ると、中国企業が日本で投資し、200億円以上の利益を得た形です」(同前)

YCH16とはどんな企業か

 では、星野トマムを買ったYCH16とは一体、どんな企業なのか。登記簿によれば、所在地は東京都港区。複合ビル8階の1室に、今年5月10日に設立されたばかりだ。目的欄には〈不動産の売買〉〈企業の合併・提携に関する指導・仲介及び斡旋〉などが記されている。

 しかも、同じ20平米にも満たないと見られる1室には「YCH1」から「YCH15」まで、数字を変えた15社が過去に所在していた。いずれも、企業との統合や解散、閉鎖を繰り返した形跡がある。例えば「YCH2」は18年にホテルチェーン関連の不動産会社などと合併し、翌19年に解散。「YCH6」は21年に老舗酒卸と合併し、同年に解散した。

 これらYCH1〜16の“社長”的な位置付けで登記されているのは、〈代表社員〉のA氏だ。謎めいた彼は何者なのだろうか?

「星野リゾートの件は話さないように言われている」

 まず、記者は件の複合ビルを訪れた。集合郵便受けには「YCH12」など複数の社名シールが無造作に貼付。8階では左右に整然と扉が並び、当該の部屋にはYCH〜ではなく、「大和キャピタル」との表札がある。ただ、インターフォンを押しても反応はない。

 ビル受付の女性に聞いた。

――あの部屋にあるはずのYCH16に連絡したい。

「大和キャピタルという名前で契約されています。その他の名前では取り継ぐことはできません」

 調べると、この大和キャピタルもA氏が代表取締役の会社だった。民間調査会社によれば、彼は現在、50歳前後。監査法人や外資系投資会社勤務を経て、別の男性と2人で16年に経営コンサルなどを手掛ける大和を創業したという。状況を総合すると、A氏は大和をメインに、YCH〜を作っては閉じ、星野トマムのような投資案件に多数携わってきたようだ。

 A氏の自宅を訪ねたところ、男性が「星野リゾートの件は話さないように言われている」。YCH16は事実確認に対し、主に以下のように回答した。

「売主様及び関係者様との守秘義務の見地からご回答致しかねます」

星野トマム所有権の新たな事実

 では、星野トマムの所有権は、完全に日本企業の手に渡ったのだろうか。さらに調査を進めると、新たな事実が浮かび上がった。

 星野トマムの施設・土地を所有するのは、新雪の傘下企業とされる「株式会社星野リゾート・トマム」だ。その代表取締役は、上海豫園旅游商城の共同会長が兼ねていたが、売却合意の6月28日付で辞任。代わりに就任したのが、B氏である。彼は復星傘下の日本企業「イデラキャピタルマネジメント」で、資産管理部門の責任者を務める人物。これは、どういうことなのか?

 イデラに尋ねると、

「購入者からの要請に基づき、当社が管理業務を継続するため部門責任者であるBが代表となります」

 つまり、復星がYCH16に売却したはずが、蓋を開ければ、現在も同グループで星野トマムを管理し、関与し続けるというのだ。

星野リゾート本社の運営方針

 一方、星野リゾート本社に見解を求めたところ、

「運営会社である星野リゾートは、引き続き、運営内容も変わらず継続的に運営してまいります」

 中国色は消えないが、宿泊客が快適に過ごせるリゾートであり続けてほしい。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年7月18日号)

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